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常盤がコンビニへ寄ってくることも計算に入れて、神崎はそろそろかな、とカーテンを開けて外をうかがった。 すると、ジャージっぽい服の男が、駐車場の出入り口付近にいた。 ウォーキングの人だろう。 ただ神崎には、男が立ち止まっていて、急に歩き始めたように見えた。
それからすぐに、常盤が自転車に乗ってやって来た。 足元はサンダル履きだ。
「さぐっちゃん、弁当これでよかった? っていうか、これしか残ってなかった」
「おぉサンキュー。 あれ、ヒデの飯は?」
「七時ごろに食った」 自分は、ついでに買ってきたスナック菓子を開いた。
神崎は電気ポットから、お湯を注いでお茶を淹れた。 「んじゃ、いただきまーす」
一食くらいは抜いても大丈夫だ。 げんに常盤から電話がかかってこなければ、買い出しにいく面倒くささのほうが勝って、抜いていたところだ。 しかし、いざ食べ始めると、やはり腹は減っていた。 神崎はあっという間に完食してしまった。 早食いなので、やや物足りなさを感じている。
そんな神崎を、常盤はジロジロと見ていた。
「なに?」
「いや、ほんとうに無傷? 明日になったら痛くなってくるとか」
常盤は、電話できいた事故の内容に疑いを持ち始めている、と思った。 あの大破した自転車を見せることができれば、一発で納得するはずだが。
神崎はスッと立ち上がって、片足を少しだけあげた。 信号待ちの再現だ。
「……そのときに、薫子が叫んだんだよ」
「うん」
「んで、俺が見ると、もう車がすぐそこに迫っていてよ」
テレビを指さした。 それくらいまで来ていたという表現だ。 サッと反対の足をあげる。 フッ飛んでいった自転車を表現するのに、神崎は隣の寝室まで行った。
「いや、もっと飛んだな。 このベッドを越えて……」
相槌がないので、ちゃんと聞いているのか、とリビングをのぞいた。 常盤はスナック菓子を咀嚼しながら、細かくうなずいていた。
警察を呼んで、ナンバーの件になると、常盤の表情は変わった。 興味が出てきたという目だ。
「車で送ってもらったんだけど、薫子のやつ、車内でもうるせぇの。 俺が狙われてるとかって……。 一人暮らしの怖いとこでさ。 んなわけねぇだろって笑いつつも、だんだん気になってくるんだなこれが。 んで、冗談でもそういうことを言うなって言ってやったの」
「急にその店へ行くことになったんだろう。 狙うのは、ハハ、さすがに無理かな。 さぐっちゃんをずっと見張ってないとね」
見張ると言われてハッとした。
さっき外にいたジャージの男は、この部屋を見張っていたのではないか。 いやいや、と首を振る。 ほら、言わんこっちゃない。 怖くなってきた。
「……じつは、ヒデが来るちょっと前にさ、駐車場んとこで、ジャージの人が立ってたんだよな」
「どこ?」 と常盤はウェットティッシュで指をふいた。 ソファから立ち上がって、窓のほうへ行った。
この件にも乗ってくれるようだ。 神崎がカーテンを開こうとすると 「ちょっと待って」 と常盤は止めた。 リモコンで部屋の電気を保安球にして、ニヤッとする。 二人してカーテンを少しだけ開いた。
神崎は出入り口のほうを指さし 「あそこらへん」 と小声で言う。 怖いというより、ワクワク感が沸き上がってくるようだ。
それからしばらくのぞいていたが、常盤が 「う~ん」 と唸って終わった。
部屋を明るくした。 二人が見ていたのは、三分くらいだ。 その間にも数人が通っていった。 二十三時を過ぎていても、ここらは人通りがあった。
二人は顔を見合わせて、どちらからともなく笑いだした。 神崎はゴミの始末をして、コーヒーを淹れて戻ってきた。
「空き巣に入られてすぐだし、薫子さんも結びつけたくなった感じだろうね」
「アイツは、人をからかって楽しむタイプだよ。 性格の問題だろう」
神崎はテレビをつけた。 住民トラブルを避けるために、音量はできるだけ小さくした。




