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 署の中で詳しい話をきくという段になったとき、救急車が入ってきた。

 これでもう、あちらのことは任せておけばいい。 だが、あの裸女が病院へ行ったあと、誰が自分の車の施錠をしてくれるのか。

 神崎がポケットから車のキーを取り出して刑事に見せると、彼も、ああ、とうなずいて神崎の意図を理解した。

 救急隊員の動きは迅速で、早くも裸女は担架へ乗せられようとしている。 これなら、あと数秒この場にとどまって、神崎自らで施錠すればいい。


 担架が離れて、女刑事が神崎の車のスライドドアを、雑に閉じた。 それじゃ、ドアをロックさせていただこうと思ったときに、裸女はとんでもない仕草をした。

 神崎の車から救急車までの三メートル間で、裸女は半身を起こして指さし、ウーともワーとも表現できない声を張り上げたのだ。 その指は、誰が見ても神崎を差している。

 あの人と離れたくない? 違う。 アイツが犯人だ、という差しかただった。

 救急隊員三名、刑事四名の視線が、神崎に注がれたのは必然だ。 神崎自身は胸を射抜かれたように、一歩も動けず突っ立った。 疑問符を頭に浮かべ、間延びした顔で。


 横にいた刑事にヒジをつかまれて、ハッとした。 裸女の仕草を見て、神崎と同じように受け取ったに違いない。

 神崎の口をついて出たのは 「おい!」 触んな、と思わず腕を振り払った。

「いやぁすみません」 と刑事は胸の前で、両の手のひらを振った。

 女性刑事は裸女を(なだ)めている。 そうしながら、こちらへうなずいて見せる。 神崎の隣の刑事が、うなずき返した。 女性刑事は、あのまま付き添っていくようだ。

「とにかく、署の中へどうぞ」 とあらためて隣の刑事は言った。 今度は手を触れないようにしていた。

 悪いことは何もしていない。 それが真相だ。 すべて話して、さっさと帰る。 これに尽きる。 署の建物へ向かう途中、神崎は思い出して、キーリモコンで車のドアをロックした。


 神崎の前後に、刑事が一人ずつついた。 連行されているようで、とても心穏やかにはいられなかった。

「殺風景な部屋で、すみませんね」 と通されたところは、言われたとおりの部屋だった。

 三人で入室した。 一人が聞き役で、もう一人は記録する役なのだろう。

「それでは、まず所持品の検査をします」

 神崎が、は? という表情をすると 「決まりなもので、すみませんね」 と、刑事はさらりと嘘をついた。

 だが、ここはとぼけて従っておく。 何も後ろめたい物など、所持していないのだから。


 住所、氏名、年齢と、いっぺん通りの自己紹介をした。

 名前の、さぐる、という字を尋ねられることは、ままあることだが、今回は財布の中身とともに運転免許証を見せたので、それがなかった。

 神崎の正面に座った刑事は、急に態度を和らげたような感じがした。 署内に引き込んでしまえば、こっちのもんだ、とでも思っているのだろうか。


 用意された地図をのぞき込みながら、だいたいで裸女の発見場所を差した。 そのときの女の姿、状況、車に乗せるところなど、事細かに伝えた。

 すると、居住地から離れたこの地で、この時間で、あの峠を通った理由。 そんなことを尋ねられた。

「お届け物があって……」 いや、時系列に自分の仕事内容から始めるのが、わかってもらいやすいか。

 話し始めたとき、ノックがあって、話の腰を折られた。

 応対して戻ってきた刑事は、神崎の横に立って 「車の中を見せてもらっても、よろしいですか?」 という。

 神崎が横に立つ刑事と、ドアの前に立つ刑事を交互に見ると 「いえね、あの女性の残留物がないか調べて、病院へ持っていってあげたほうがいいので」 と言い訳した。

 裸女は文字通り裸で、何も持っていなかったことは、最初に伝えたはずだ。

「はん……」 にん扱いですね、と出かかったのを抑えた。 半ばあきらめ気味に、神崎は一緒に行こうと立ち上がった。

「車のキーだけ預けてもらえば、こちらでパッと見てきますよ」

 なかなか親切じゃないか……もう、ため息しか出ない。 彼らは、車からが何が出てきたら喜ぶのだろうか、と考えを巡らせながらキーを渡した。

「ご協力ありがとうございます」 の言葉がじつに白々しい。


 どっかりと尻を落とした神崎は、もう一度、商品の届け先から、起こったことすべてを辛抱強く話した。

 また途中でノック。

「神崎さんの車には、ドライブレコーダーが付いてますね」

 エッと顔を上げた。 それだ!

「メモリーの中身、見せてもらっていいですか?」




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