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お尋ねの一品、という欄をプリントアウトしてポーチにしまい、神崎は自転車にまたがった。
午前のうちに、すっかり馴染みとなったリサイクルショップを回り、昨日と今日だけ開催されている学校の校庭フリーマーケットを、のぞいてみるつもりでいる。 今月は実入りが乏しいのだ。
幼いころより鑑定眼を養い、古美術を求めて世界を飛び回っている人の本を読んだ。 ごく最近のことだ。 無論、神崎にはそんな能力は備わっておらず、手っ取り早く店長に聞くと方法を取っている。 これは掘り出し物だ、という出会いからは縁遠いところで佇んでいた。
小学校の校門を入ったところで、記帳を求められ、いつからそんな面倒くさいシステムになったのか、と苦笑しながらも素直に従う。 身分証の提示は求められなかったので、余計、記帳することに、どんな意味があるのか、と余計に首をひねった。
腕章をつけているのは、PTA関係の人か。 制服警官の姿も見える。 巡回経路なのだろうか。 常駐しているふうではなかった。
しばらく祭りの雰囲気を味わいながら、ゆっくりと巡っていると、未開封のプラモデルを並べている年配の女性二人組がいた。
さも興味なさそうに、一瞥にとどめて通りすぎてから、スマホで検索した。 神崎がまだ産まれる前に、かなり流行ったアニメのものだった。 経験上、こういうのがいいのだ、と知っていた。
「ほぉほぉ、なるほど、フフッ、買いじゃないか」
旦那の趣味を理解できない奥さんが、ゴミだと決めつけて出品しているケースか、と想像を膨らませる。
買い手がつく前の購入は、在庫倒れの危険性をはらんでいるが、現在の取引相場に照らし合わせると、目の前の一品があまりにも安価だったので買った。
自転車で来ていることを考え、他へは回らず帰路につく。 むちゃをして自分の手でキズモノにしてしまっては、それこそ台無しだ。
帰宅するなり、ノートPCを起ち上げて、入荷報告を載せた。
帰りに気になっていた自転車のタイヤに、母屋から空気入れを取ってきて入れた。
部屋に戻ると、さっそく商品について質問が届いていた。
大外のビニールも未開封なので、中は確認できない旨を伝え、画像を添付したところ、先方はかなり乗り気になっている。 仕入れた六箱全部を紹介して、全部まとめてお買い上げ。 ――ありがとうございます。
送付先の確認やら、入金方法やらで少し時間を割き、先ほどの書き込みにソールドアウト表示をつける。 待てば、もっと高値を付ける人がいるかもしれないが、トントン拍子の即決は、気持ちがいい。
送付状を書こうと思ったときに、ふと、神崎は思った。 梱包せずに自配しようか、と。 時刻はまだ十五時。 たかだか隣の県だ。 キャンプの計画が立ち消えになって心消沈したばかり。 車中泊でもいいじゃないか。
神崎の車は軽バンだ。 後部座席をたたむと、真っ平な空間ができる。 カーテンはメーカーオプションで装着済み。 エアマットでもホームセンターで仕入れていけば、カプセルホテルほどにはなるような気がした。
思いたったが吉日だ。 神崎はニ十分で準備をして出発した。




