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「フル達、情報ってどれくらい集まったんだろう」
GREEN MOLE号へと戻る道すがら、ダダコがぽつりと漏らす。
「ある程度って言ってたからね。まだ足りない部分もあるんじゃない?」
「それか、ある程度でも何とかなるとか……。どうしたんだ?」
何となく元気がないような気がして、フッカは少し身を低くしてダダコの顔を覗き込む。
「いや、もうちょっと地上を歩きたかったなぁって」
ダダコはぷいと顔を背ける。「せっかく電気の灯りじゃない光を浴びれたのに……」
「政府も嫌味な名前付けてくれたよね。『GREEN MOLE』だなんてさ」
「お前らだけ日光浴びていい思いすんなってことなんじゃね? 所詮は地下生活者なんだってことを忘れないようにってさ」
フッカは何てことないように言ったが、それは他の二人も考えていたことだった。
サン・チルドレンだろうが何だろうが、この旅が終われば、自分達はいずれまた元の地下生活に戻らなければならない。
チルドレンは生まれながらにして将来が決まっている。ゆくゆくは政府の役人となり、緑星のために働かなくてはならないのだ。彼らに職業選択の自由など存在しない。先代のチルドレンの中には惑星外逃亡したものもいるようだ。もちろん、彼らの力があれば、それは決して難しいことでない。それを望むチルドレンが大半だが、実行に移すものはごくわずかだった。他でもない『家族』のためである。
チルドレンは幼少時より政府から多大な援助を受けることが出来る。教育費、医療費は無料で、寄宿学校に入学すると、子供でありながら、大人並、いや、それ以上の給与も支払われる。もちろん、未成年のうちはその給与は親に振り込まれるのだが、我が子が稼いだ金だからときちんと貯金する親などは稀で、大半の親がそれを使いこんでいるようだ。給与に関してはチルドレンには知らされていないが、学校内では金を持たなくても不自由なく生活出来る。どうしても小遣いが必要な場合は自分の端末に必要な分を送金してもらえば良いのだ。
この旅についても資金は政府が出しており、帰還後も一般人とは比べ物にならないほどの待遇で政府に迎えられる予定である。そうなれば親兄弟どころか親戚郎党に至るまで、汗水たらして働かなくても裕福な暮らしをすることが出来るのだ。そんな優遇を受けてきたチルドレンが惑星外へ逃亡となると、残された家族がどのような扱いを受けるかは想像に難くないだろう。
しかし、チルドレンの方はというと、親元で生活をすることが出来るのは五歳までである。
六歳で入学してからは、年に二回の長期休みにしか帰省を許されず、また、差し入れ等も厳しく制限されている。長期休暇中も帰省せずに自主訓練を行うと、その分の給与も支払われるため、金に目がくらみ、帰省をさせない親もいる。コラダの親がそうだった。ダダコやフッカと違って、コラダは入学してから一度も実家に帰っていない。次の休みこそは、と何度も手紙を出した。しかしその度に何かしらの理由を付けて断られる。それでも最後の親心なのか、稀に家族写真を送ってくることがあった。写真の中には、派手な恰好をしている父と母、年の離れた妹達が満面の笑みで立っている。写真の裏には『私達の自慢の息子、コラダへ』というメッセージが書かれている。
僕は、パパとママの自慢の息子なんだ。皆のためにも頑張らないと。
そう思って頑張れたのは十歳までだった。




