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GREEN MOLES  作者: 沖見 るもい
第3章 特別な子供達
10/46

3

「ただいまー……」


 ダダコがおずおずと入り口の扉を開ける。

 真っ赤な三匹は、メインテーブルのモニターの前に集まっていた。


『お疲れ様。どうだった? 十六年振りの日光は』


 ハナはそう言いながらパタパタと飛び立ち、コラダの右肩にとまる。


「僕は何かちょっと変な感じがしたよ。雲が出るとちょこちょこ暗くなるからかな」

『日の光は一定ではありませんから、慣れないうちは戸惑うことが多いでしょうね。それから、やはりあなた達の能力にも影響します』


 フルの冷静な声が聞こえて三人は視線をハナからメインテーブルに移す。


「影響って?」


 ダダコはフルに近づき右手を差し伸べる。フルはあっという間に腕の坂を駆け上がり、定位置であるダダコの右肩に乗った。


『ダダコ、力を使った時に気が付きませんでしたか? それとも、室内でしたか?』

「えっと、室内……だったけど……」


 この流れで叱られるのかと肩をすくめたが、どうやらそのつもりはないらしい。


『あなた達は日の光を浴びてその力を得たのです。一度その身体になれば、一生日の光の影響を受けます。簡単に言うと、力の増幅ですね』

「すごいじゃん。じゃあさ、もし俺がずーっとこういう星で暮らしてたらダダコくらいの力が出せるようになるってことか?」


 フッカが身を乗り出す。


『フッカ、残念だけど、いいことばかりじゃないのよ』


 テーブルの上でグニウがぴょんぴょんと飛び跳ねている。これはおそらく、アタシも早く肩に乗せなさいよ、という催促だろう。フッカは慌てて身を屈め、右肩を差し出した。待ってましたと言わんばかりに、グニウはフッカの肩に飛び乗った。


「いいことばかりじゃないって?」

『まぁ、要は、刺激が強すぎるのです』

「刺激?」

『たしかにサン・チルドレンは普通の人間とは構造が異なります。しかし、悲しいかな。所詮は地下生活者の子孫なのです。我々も含め、緑星で産まれたものは他惑星人と比べて肌が弱い』

『だから、長時間日の光にさらされると、あなた達の美しい白肌がこんがり焼けて大火傷しちゃうの』

「別に、火傷くらいなら治せるし!」

『フッカ、どうしたのよ、そんなにムキになって。それにね、肌くらいはまぁ、あなた達なら治せるでしょうけど……』

「他には何があるんだよ……」

『……フッカ、ここに風船があるとしますね。空気を入れ続けたらどうなりますか?』


 そんなこと考えるまでもない。


「破裂……するのか……?」

『……まぁ、そう簡単にはなりませんが。ですから、この星で活動するのは、一日五時間が限度です。それも、星によって異なります。たとえば、疑似太陽からの距離が一番近い黒星ですと、二時間といったところでしょうか』

「二時間……」


 自分の先祖の星なのに、二時間しか活動できない……。俺は、やっぱり黒星人ではないんだな……。


 明らかにショックを受けているフッカにグニウがフォローを入れる。


『だーいじょうぶよ! アタシ達だってちゃんと考えてあるんだから!』

「グニウ、考えって?」


 コラダが目を輝かせる。その問いに答えたのはハナだ。ハナはコラダの肩から飛び立ち、メインテーブルに下りると、くちばしでモニターを突き、起動させる。


『これよ』


 その言葉で三人は身を乗り出して画面を凝視する。

 画面に映し出されているのは、何てことはない、ただの傘である。三人はほぼ同時に「なぁんだ」と落胆の声を上げた。


『何だとは失礼ね。これはただの傘じゃないのよ!』


 グニウはフッカの肩の上でぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「ごめん、ごめんってば。でも、ただの傘じゃないってどういうことだ?」


 フッカはグニウの頭に優しく振れ、興奮を鎮めるように軽く撫でた。


『これは一見、普通の傘です。いまはファッションで日傘を差す者が増えてきましたし、持っていても不自然ではないでしょう』


 たしかに、カーマインでも日傘を差して歩いている者はちらほらいた。


『それから、もちろん、雨を防ぐことも出来ますし……。何よりも、この傘は……。ハナ、次のページをお願いします』


 フルの声でハナが画面をカツカツと二度突くと、次のページが表示される。少し角度を変えた画像が表示されている。傘の先端に銃口が見えた。しかし、引き金が見当たらない。


『ライフルになります』

「すっげぇ! 仕込み銃かよ!」


 目を輝かせたのはフッカである。コラダも興味深げに画面を見つめる。この中で一番乗り気じゃないのはダダコだろう。何せ、こういった銃器の取り扱いはいつも赤点だったのだ。


「弾については、まぁ、銃口を通過するものであればどんなものでも大丈夫ですが……。いいですか、これは【人を殺せる道具】です。ですので、取扱いには充分注意すること」


 人を殺せる、というフレーズに三人の表情が固くなる。たしかに自分達は政府の命を受けて旅をしている。かといって、人を殺していいということにはならない。


『まぁ、一番安全なのは、空気の弾かしらね。どこにでもあるし、衝撃を与えて驚かせるくらいは出来るでしょ』


 フッカの肩の上でグニウがけらけらと笑う。


『馬鹿言うなよ。ダダコの空気砲だったら驚くどころか、吹っ飛ぶぞ』


 茶化すように笑うと、グニウは『あら、そしたら重力でも詰めればいいんじゃないかしら』と笑った。



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