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「フル、いまはどこに向かっているの?」
メインルームで紅茶を飲みながら、コラダの焼いたクッキーをかじる。料理は当番制だ。手に持っていたクッキーを小さく砕いて渡すと、フルはそれを小さな前足でしっかりとつかみ、カリカリと音を立てて食べた。
『我々の情報によると、どうやらカーマイン地区ではなく、マゼンタ地区のようですので、そちらに。その前に先ほど話した傘を購入しに一度コーラル地区へ寄ります』
「そこへはすぐ着く?」
『まぁ……、緑星の十倍はある惑星ですからね。コーラルまで半日……。マゼンタまではさらに半日……』
フルはダダコにもらったクッキーを食べ終え、前足に付いたカスを舐めた。
「トータルで一日……」
ダダコががっくりと肩を落とすと、フルはバランスを崩し、前方に転げた。
「危なぁいっ!」
右腕をころころと転がるのを受け止めたのはコラダである。いや、正確には、コラダの放った空気のクッションだ。
『助かりました、コラダ。ダダコ、少し気を付けてくださいね』
フルはふわふわと宙に浮きながら、ダダコをたしなめる。
「ごめんなさい……」
「ダダコ、ちょっと元気ないんじゃない? ほら、見て。ケーキも焼いてみたんだ。ふっかふかだよ。皆で食べよう」
コラダはにっこりと笑って焼き立てのケーキをダダコの目の前に差し出す。
「すごい、美味しそう! コラダは何でも出来るよね。羨ましい、あたし」
ダダコは目の前のケーキを見て目を輝かせたが、それでもやっぱりまだ元気がないように見えるのだった。
「ねぇ、ダダコ。何か元気なくない?」
赤星時間での夜、コラダの部屋で通信ゲームをしていたフッカに話しかける。
「ん~? やっぱりコラダもそう思うか?」
「うん……。旅が始まってからずっとなんかおかしいよね」
特に女子禁制というわけではないのだが、ダダコは男子の部屋には入ってこない。逆もまた然りである。六歳からずっと三人一緒だったが、不思議と恋愛感情が芽生えることはなかった。
「何かさぁ……。イライラしてるっつーか、焦ってる感じっつーかさ。どっちにしてもダダコらしくねぇよなぁ」
「そうなんだよ。いつもだったらあんなすぐにキレたりしないでしょ」
「まぁ……、そこは紙一重だと思うけどな……」
それよりも、俺はお前がキレかかってた方が恐ろしかった、と言いかけて止めた。
何しろ、この温厚を絵に描いたような少年は一度キレると力を使い切って自動停止するまで誰にも止められないのだ。万が一、ここを破壊されでもしたら事だ。存分に暴れされられない環境で刺激するのはまずい。
「まぁ、メンバーは緑星の時と変わんねぇけどさ、慣れない環境だからじゃねぇの? ホームシックっつうかさ」
「それは、ある……のかな……? フッカはどうなの?」
「俺? 俺は……まぁ、食堂の飯が恋しいくらいかな。コラダの飯も美味いんだけどさ。やっぱ、慣れ親しんだ味っつーの?」
「ああ、それはあるかも、僕も」
「まぁ、いろいろ回っているうちに治るんじゃねぇ?」
「だといいんだけどなぁ……」




