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GREEN MOLES  作者: 沖見 るもい
第13章 楽しい食事会
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1

 コラダはじっとギニコを見つめている。一方のギニコの方はというと、依然、左右にゆらゆらと揺れながら時折何やらぶつぶつとつぶやいている。手にはまだ凶器を握ったままだ。

 コラダはゆっくりとギニコに手を伸ばす。

 近づいてくる白い手に、さすがのギニコも警戒し始めたようだ。凶器を握る手に力が入る。

 コラダの手がギニコの細い首を捕えると、彼女はやっと我に返ったのか、その手を引き剥がそうとボロボロの爪で引っ掻き、また、手に持った鍾乳石を白い肌に突き立てた。しかし、コラダの手は離れるどころか、一層握る力を増していく。


「ぐっ……、ぐぅっ……」

「コラダ、もういい! もういいから!」


 ハナの悲鳴のような叫びが洞内に響き渡る。止めは……私が……。

 コラダの白い腕は彼自身の血で真っ赤に染まっている。それでも眉一つ動かさず、口から泡を吹き始めた哀れな老婆を冷たく見下ろしている。



「コラダ――――――っ‼」



 その叫び声と共にコラダの身体に体当たりしたのはダダコとフッカである。この状態のコラダを真正面から止めようとしたって無理だと判断し、コラダが破壊したと思われる壁の隙間から風に乗ってその勢いのままぶつかった。

 さすがのコラダもこれには対応出来なかったようで、受け身を取ることも出来ずに吹っ飛んだ。向こう側の壁に激突するか、と思われたが、ダダコは一瞬のうちに激突地点に圧縮した空気をクッションのようにして待機させてある。

 フッカはコラダと共にダダコが用意したクッションへ突っ込んだが、ダダコはぶつかった瞬間にブレーキをかけ、咄嗟に老婆をつかんで引きはがした。


「おっと……」


 よろけた老婆を受け止め、ゆっくりと地面に寝かせる。浅く呼吸をしており、とりあえず生きていることに安堵する。それから、脇腹を押さえて放心状態のハナを目に留めた。


「ハナ、大丈夫? とりあえず止血しないと……」


 そう言って、優しくハナの脇腹を撫でると、切り裂かれた皮膚を結合させ、止血した。


「とりあえず応急処置だけだけど……。ねぇ、ハナ、何があったの? この人は一体何なの……?」

「この人は……」



「いってぇ……。おい、大丈夫か、コラダ?」

「だい……じょうぶ……。フッカ……どうして……?」


 クッションはあったものの、衝撃を吸収しきれず、弾き飛ばされた二人は地面に身体を打ち付けられた。


「お前の声が聞こえたんだ。何事かと思って、文字通り『飛んで』来たんだよ」


 フッカはコラダに手を差し伸べる。その手を取ろうとして手を伸ばした時、コラダは自分の手が血まみれなのに気付いた。


「うわっ、何これ! 僕の血……?」

「どうしたんだよ、コラダ。大丈夫か?」

「大丈夫……じゃないや。痛い……」


 とりあえず、フッカの手を取って立ち上がり、痛みに顔をゆがませながらゆっくりと血まみれの腕に触れる。何とか止血はしたものの、ずきずきという鈍い痛みは治まらない。


「何があったんだよ、コラダ。あの婆さん何者なんだ?」

「あの人は……」



「その方は、惑星外逃亡した、先代のチルドレンです」



 その問いに答えたのはフルだった。


「惑星外逃亡は第一級銀河指名手配に該当し、射殺が認められています」

「その女はブルーウッド一族。つまり、ハナの親戚よ」


 グニウの言葉でハナは俯く。


「ハナ、あなたがしたいのなら、彼女を射殺すればいい。ですが、銀河警察に引き渡す、という選択肢もあります。また、彼女はこのまま放っておいても長くはありません」

「ハナ、アタシだって、自分の一族を汚した先代達は許せない。だから、アンタの気が済むならそうしたらいい。でも、アンタ一人の手をこの女の血で汚すのは勿体ない」

「ですから、やるのなら、我々も同時に撃ちます」

「アタシ達、仲間じゃない」


 グニウは片目を瞑って親指を立てた。


「ちょっと待って!」


 口を挟んだのはダダコである。「それならあたしだってハナの仲間だよ! あたしも一緒に撃つ!」

「おいおい、待てよダダコ。『あたし』じゃなくて『あたし達』の間違いだろうがよ」

「そうだよ。僕達のことも、忘れないで」

「皆……」


 いつの間にかメンバーは自分を中心に集まってきている。ハナは込み上げてくる涙をぐっとこらえて笑った。


「ありがとう、皆」


 そう言って、手に持っていた小型銃を懐にしまう。


「……撃たないわ」

「えっ……」


 そう漏らしたのはコラダだった。「いいの……? ハナ……」


「だって、この後は、皆で楽しくお食事会なのよ? 人を殺した手で食べたいの? あなた達は」


 ハナは目を細め首を傾げて、艶めかしく笑った。


「……出来れば遠慮したいですね」

「さすがにそんな趣味はないわ、アタシ」

「せっかくの料理が台無しだよ!」

「そう考えると、たしかに、なぁ……」

「僕、またあの屋台のドーナツ食べたい!」


 コラダののん気な声に五人は吹き出した。「食べましょうね、コラダ」


「さて、そうと決まれば長居は無用です。帰りは来た道を通るだけですから、急ぎましょう」

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