2
フルは淡々と十一歳のコラダに起こったことを話した。実の親に多額の金で政府に売られたことを。久し振りに会った母親に『悪魔の子』と吐き捨てられたことを。
フッカは目を見開いて、口をパクパクとさせている。何かしゃべろうと思っても、言葉が出てこなかった。
「そんな……。だって、自分の子供だぞ……?」
やっとそれだけ言ったが、フルは目を瞑り、首を振った。
『残念ですが、事実です。それに、これまでも何件かはあった事例のようです』
「何でだよ! 何で……!」
声を荒げ、乱暴に髪を掻き上げる。
『声が大きいですよ、フッカ。後日、ホワイトレイク夫妻が提出した契約書を拝見いたしましたが、そこにはきちんとその理由が記載されていました』
「……何だよ、我が子を売るような理由って……」
ぎろりとフルを睨む。この怒りをフルに向けるのはお門違いだと自分でもわかっているのに、それでも治まらなかった。
『ホワイトレイク夫妻には、コラダの下に妹が二人、さらにその時、産まれたばかりの弟がいたそうです。その子供達は、皆、難病に侵されています』
「は? 難病って……?」
『その治療法は存在していますが、緑星で受けられる治療など、たかが知れています。ですから、ホワイトレイク家は医学の進んだ白星へ移住することにしたそうです』
「それで、我が子を売ったのかよ……」
そりゃ、下の子供だって大事だろう。でも、コラダだって、我が子だろ!
『それから、コラダはホワイトレイク夫妻の実子ではありません』
「は?」
『コラダの本当のご両親は、コラダが産まれて間もなく、事故で亡くなっています。それを引き取ったのが、ホワイトレイク夫妻です。コラダは白星人と青星人のハーフでしたので、それなら自分達が、と志願したのですよ』
チルドレンを養子にしたい親はごまんといますから、と付け加えた。
「何だよ。最初っから金目当てかよ」
フッカは忌々しそうに吐き捨てた。
自分達がこの年でそんじょそこらの大人よりも稼いでいるというのは、この旅に出る前に聞いた。それから、家族が受ける事の出来る恩恵についても聞かされた。
それはまるで足枷のようにずしりと重い。家族のためにも、逃げることは許されない、そう言われているようだった。
『そうかもしれません。ただ、彼らの真意だけは他人に知ることは出来ないのです。どうですか、フッカ。これがコラダの秘密です。もっとも、コラダは自分が売られた理由を知らないはずですが』
「何だよ……それ……」
『コラダを頼みます、フッカ』
「頼むって……」
『我々は、所詮政府側です。いつまでも、あなた達の味方でいられる保証はないのです』
「どういうことだよ」
『我々は、政府を優先します』
「フル……?」
『もし、あなた達が政府を裏切るようなことを画策したり、実行に移すようなことがあれば、その時は我々が責任を持って始末しなくてはならない』
「な……に言ってんだよ。始末って……。ただのしゃべるネズミじゃねぇのか?」
『おや、一度でもそう言いましたか? ただのしゃべるネズミだと』
フルはいつものように淡々と何てことないように話す。
「言ってない……けど……。じゃあ何者なんだよ、お前達」
『聞かれたからには、お答えしましょう。我々も、あなた達と同じですよ』
「お……なじ……?」
「ええ。同じです」
そう言うとフルはさかさかとテーブルの上を移動し、フッカの目の前に立った。
「我々は、緑星政府が特別に作りだしたサン・チルドレンです」




