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GREEN MOLES  作者: 沖見 るもい
第6章 崇高なる大統領
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1

「ダダコ、どうするの?」


 辺りはもう真っ暗だった。ぽつんぽつんと申し訳程度に立っている外灯の下、早足で歩くダダコにフッカは小声で話しかける。


「ダダコ、夜も門番がいる。そう簡単には入れねぇぞ。早速手荒なことする気かよ」

「誰も傷つけない。でも、欲しいものはきっちりいただく。抜け道があるって聞いたの」


 ダダコは二人に一瞥をくれることもなく、まっすぐ鉱山を目指している。


「抜け道……? 誰から聞いたんだ」

「キファっていう女の子。パパを魔物に食べられた子よ」


 そこまでしゃべるとダダコはぴたりと立ち止まった。


「コラダ、フッカ、ここでありったけの空気を背負っていくわよ。出来るでしょ」

「お、おぅ」「わかった」

「それから、フッカ。鉱山に火薬はある?」

「たしかCブロックの隣に火薬保管庫があったはずだ」

「鉱山に入ったらフッカは火薬庫からありったけの火薬をPブロックに運んで」

「……わかった」「爆破するの?」

「当たり前よ。目当ての物が手に入ったら、後は知らない。落盤事故だって多いみたいだし」

「そりゃ……多いけど……」

「人間が巻き込まれなければ大丈夫よ。鉱山の中にはPブロックの人しかいないんでしょ」


 鉱員の作業時間はきっちり決められ、残業もない。この鉱山は住み込みで働くような場所ではないのだ。死んでも出られないPブロックの鉱員達以外は。

 空気を背負い、ダダコは駆けだした。鉱山まではもう目と鼻の先である。

 やがて重厚な鉄の門と、その脇を固める門番が見えてくる。ダダコは昼間訪れた土産物店の裏に回った。



『お土産屋さんの裏の鳥小屋から少し歩くと、廃棄物置き場があるの。そこにある廃棄物はね、いつまでもなくならないの。おかしいなって思っていたら、それは壊れた柵を隠すための物だったの』



 キファはそう言っていた。

 廃棄物置き場、廃棄物置き場……。

 ぶつぶつとつぶやきながら鉄の柵に沿って歩いて行くと、お目当ての物が見えてくる。何に使うのかわからない塊達をよく観察してみると、たしかにその裏の柵は一部壊れている。しかしここをすり抜けられるのはキファのような身体の小さい子供だけだろう。ダダコは苦笑した。しかし、それくらいは何てことないのだ。


「コラダ、火を起こせる?」


 ダダコは廃棄物の一つに手をかけ、振り向いた。


「まさかここに火をつけたりしないよね?」


 コラダはそう言いながら地面の石を一つ拾った。それから辺りをキョロキョロと見回すと、小さく「あった」と言って小さな鋼鉄片を拾い上げる。


「ここには火をつけない。お土産屋さんのお婆ちゃんが腰をぬかしちゃうでしょ。小さな火花でもいいから、早く」


 そう言って空いている手をコラダに差し出す。コラダは石を鋼鉄片に何度か打ち付け小さな火花を散らせると、消える前に素早く手のひらで捕まえた。


「僕だって火を大きくすることぐらい出来るんだから」


 捕まえた火花を手の中で増幅させる。手のひらいっぱいになった炎を、差し出されたダダコの手の上に乗せた。


「ありがとう」


 ダダコは手の上の炎を体内に取り込むと、一度固く目を瞑った。炎はダダコの体内の中でさらに大きくなり、廃棄物に触れている方の手へ移動する。やがて、触れていた廃棄物はその熱によってぐにゃりと曲がり、抜け道が露わとなった。壊れた柵もまた熱でその範囲をわずかに広げる。


「帰り、余力があったら適当に直しておいて」


 そうフッカに告げて抜け道に身体をすべり込ませた。


「ちょ、おいおい、待てよ。くっそ、狭いな」

「ダダコったら、自分の身体の分しか開けないんだもんなぁ」


 ダダコより身体の大きな二人は衣服を数ヶ所ひっかけながら、なんとか中に入ることに成功した。そこからさらに梯子を上って、非常口から内部に侵入する。



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