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鉱山内は昼間とは違ってひっそりと静まり返っている。それでももしかしたら警備の見回りがあるかもしれない。コラダとフッカはそう思って、辺りを見回しながらそろりそろりと歩いたが、ダダコはそんなこと気にもせず、いつも通りである。
「フッカ、とりあえずPブロックへ連れて行って」
「わかってる。ここをまっすぐ行けばCブロックに着く。さらに奥がPブロックだ。さっきも言ったけど、Cブロックは遠隔操作の重機を置きっぱなしにしてるから、もしかしたら監視カメラなんかは作動してるかもしれない」
「……どこにあんのよ」
「……そんなん知るかよ」
「何で調べておかないのよ!」
「予定より早く飛び込んだのは誰だよ! 本当は明日もっと詳しく調べるつもりだったんだからな!」
「二人とも、喧嘩してる場合じゃないよ。僕が先に行って偵察してくるから」
ね? と柔和な笑みで二人の肩を叩く。
トンネルを歩いて行くと鉄の扉があり、わずかに開いたその隙間から光が零れている。そぅっと開いてみると、灯りは点いているものの、重機は稼働していない。それでも先のフッカの話の通り、監視カメラが作動しているかもしれない。
コラダがごつごつとした岩の壁に身体をぴたりとくっつけると
彼の身体は少しずつ岩の色と同化していく。真っ赤だった髪の色が一度元の白髪に戻り、やがてそれも岩のような質感に変わる。衣服も含め全身が壁と同化したところで、もはやどこが顔かわからないコラダが「ちょっと行ってくる。見つけたらどうすればいい? 壊す?」と言った。
「とりあえず、不自然じゃない程度に壊してきて」
どこに向かって答えたら良いのかもわからなかったが、とりあえず、そう返した。
「任せて」
そう言って、岩男となったコラダがそろりそろりとCブロックの内部へ侵入する。
「フッカ、この後の流れは覚えてるわね?」
「火薬庫に行って、ありったけの火薬だろ?」
「あたし達はまっすぐPブロックに向かう。火薬を運び終えたら、次は鉱員達を運んでもらうから」
「鉱員達を?」
「一緒に爆破しろって言うの?」
「いや……そんなんじゃねぇけど……」
フッカが俯いて次の言葉を探していると「お待たせ」という声がどこかから聞こえてくる。
「え? コラダ? どこにいるんだ?」
辺りを見回すが、どこにもそれらしい者はいない。
「ここだよ。こーこっ」
そう言うと壁の中から徐々にコラダの顔が浮き上がってくる。
「うわっ、心臓に悪いな、お前……」
フッカは驚いて数歩後退りした。
「あはは、ごめんごめん。驚いてくれるってことは、僕もなかなかやるってことだよね?」
コラダはにこにこと笑っている。ごつごつとした肌はあっという間にいつもの陶器のような白肌に変わっていた。
「でも、岩になっちゃったから、ベリーの効果なくなっちゃった」
透き通るような白髪をつかんで残念そうな声を上げる。
「大丈夫。ちゃっちゃと終わらせたら、人目に着く前に船に戻るから」
ダダコは扉を開き、Cブロックの中へ入った。
「なぁ、コラダ、カメラはどうやって壊したんだ? 不自然じゃなくってさ」
「え? 上から大きめの岩を落としたんだよ。落盤事故ってことで。多いんだよね?」
平然とした顔でカメラのある位置を指差す。その言葉の通り、上に大きな岩が乗せられ、見るも無残な姿になっている。
そうだ、コイツ、こんなんだけど02なんだよな。フッカはため息をついた。
「ダダコ、俺はこっちの火薬庫に行く。念のため、そのトンネルから空気を吸った方がいいぞ」
「わかった」
ダダコとコラダは背中に手を回し、そこから空気を掬うようにして口元に充てた。充分な量を持って来たはずだが、油断は出来ない。そう思いながら、長いトンネルを駆ける。
「ダダコ、Pブロックにもカメラはあると思う。また僕が壊す?」
「いや、また岩になってたら時間がもったいない。コラダ、見つけるのは得意?」
「たぶん、似たようなところにあると思うけど……」
「じゃ、出来るだけ早く見つけて。あたしが壊す」
長いトンネルを抜けると、重厚な鉄の扉があり、『関係者以外立ち入り禁止』と書かれたプレートが取り付けられている。
慎重にそぅっと開けてみると、中には中年男性が三人、黙々と採掘作業をしている。監視などはいないらしい。それならなおさらカメラが取り付けられているだろう。
「どう、コラダ? カメラの位置、わかる?」
「たぶん……、皆同じ所を掘っているから、それを監視するなら……あった。ダダコ、あそこ!」
コラダが指差す方を見ると、鉱員達の後方に二ヶ所設置されている。ダダコはベルトに引っかけている傘に手を伸ばした。
「撃つの? 撃つならフッカを待った方が……」
ダダコはその言葉で手を離した。
「傘は使わない。直接叩く」
「直接? 直接って……」
「直接、『力』で叩くってことよ。さっきの炎がまだ残ってるから」
そう言うと、扉の隙間から手を出し、カメラに焦点を合わせた。程なくして、ぷすぷすと煙が上がり、レンズが溶け始めた。二台ともレンズを溶かしたところで、扉を全開にする。後ろから、荒い息遣いが聞こえ、振り向くと、両手いっぱいの火薬を抱えているフッカがいた。
「はぁ、火薬、持って来たぞ……」
「こっちもカメラ壊したところ。早く済ませましょ。悠長にしてたら警備員がすっ飛んで来ちゃう」
Pブロックに足を踏み入れてみるが、採掘中の鉱員達は三人に目もくれず、ただ黙々と作業をしている。その目は虚ろで、ぽっかりと開いた口からは涎が垂れていた。
後ろに置かれた籠の中には真っ赤な石がうず高く積み上げられている。おそらくこれらが【大統領の心臓】なのだろう。念のため、端末でフルと繋ぎ、確認する。鉱員達は自分達の後ろでそんなことが行われているのにも関わらず、振り返るものは誰一人としていない。彼らにとって重要なのは『真っ赤な石を採掘すること』であって、採掘した石自体に興味はないようだった。




