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『赤星での目的を発表します』
昼食後のミーティングで、メインテーブルの上に立ったフルが三人の顔を見回しながら話し始める。
待ってました。
三人はやや前傾姿勢になりながら、次の言葉を待った。
フルは三人に背中を向けてモニターに触れると、その小さな前足を器用に使って操作する。ドーム状の画面に表示されているのは、どうやらマゼンタ地区の地図らしい。
『本日はこのテラコッタ鉱山へ向かいます。ここで採れる鉱物こそが、赤星での目的です』
そう言いながら、画面に触れ、画像を拡大する。そこにはごつごつとした真っ赤な石が映し出されていた。
『鉱物……』
『こんなんで終わりなの?』
『何だ。この調子だったら、この旅も案外早く終わっちまうな』
三人は拍子抜けしたのか、やや不満げな声を漏らす。
『そうですね。もし、この鉱物が安易に手に入るものだとしたら、この旅はすべての惑星を回りきったとしても、一年かからずに終わるでしょう』
そう言うと、フルは三人に向き直った。
「その言い方って……」
「そんなに簡単には手に入らないってことか……」
『我々が求めているこの鉱物【大統領の心臓】はその名の通り、赤星の心臓とも言える稀少鉱物です。赤星の発展に多大なる貢献をした物で、現在はこれに変わる安価な人口鉱物が作られたため、現在は各惑星の要人への貢物としてのみ採掘されています』
「各惑星の要人って……。だったら、緑星の政府の人達も持ってるんじゃないの? わざわざあたしたちが持って帰らなくてもさ」
ダダコは腕を組み、口を尖らせた。
「何言ってんだよ。疑似太陽の使用料も払えないような貧乏惑星だぜ? 赤星のお偉いさんが貢いでくれるわけないだろ」
呆れ声でフッカが指摘すると、フルはその通りです、と言った。
「でもさ、フル。そんな貴重な石をさ、僕らがコツコツ掘るってこと? そこで働いている人達の邪魔にならないかなぁ」
コラダは首を傾げる。その様子を見てテーブルの上のバディ達は一度顔を見合わせ、やれやれといった表情で首を振った。
『邪魔になるもならないも、関係者以外が足を踏み入れて良い場所ではありません』
『もちろん一つ分けてくださいって言って貰えるものでもないわね』
『フッカ、撃ってもいいけど、実弾は禁止よ』
「ちょっと待ってよ……。それって……」
「盗めって……こと……?」
「グニウ、いま撃ってもいいって……?」
三人は一様に目を見開いてバディ達を凝視している。
『あなた達は緑星政府公認のトレジャーハンターなのです』
「ハンター?」
「ハンターなんて言っても、盗むんなら犯罪者になっちゃうじゃん! あたし達!」
フッカとダダコは同時に立ち上がり、さらに身を屈めて小さなバディ達に声を上げた。
『だーいじょうぶよ、アナタ達なら捕まりっこないもの』
グニウは真っ赤な身体をテラテラと光らせてけらけら笑う。
「そっ、そうかもしれないけど……」
その言葉でダダコは少しひるんだ。
「治外法権……」
一人冷静に座っていたコラダは、拳を顎に当てて顔をしかめ、ぽつりとつぶやいた。
「何? コラダ」
「治外法権だよ。政府公認ということなら、もし僕らが捕まったとして、緑星に強制送還されたとしても……」
『ご名答よ、コラダ。罪にはならないわ。もっとも、対外的には極刑に処したことにするんでしょうけど』
ハナの言葉でコラダは納得したように頷いた。
「でもさ、何でそんなことしなくちゃならないんだ? いくら緑星では罪にならないっつっても、盗んだ星では俺ら犯罪者じゃねぇか! そんなもの持ってこさせて何するってんだよ!」
まだ納得しきれていないフッカがフルに食って掛かる。
『それはまだ言えないのよ、フッカ』
ハナが優しい声でなだめようとするが、フッカは引き下がらない。
「何でだよ。何で教えてくれねぇんだよ。なぁ、フル! 言えねぇようなやましいことに使うんじゃねぇだろうな!」
『フッカ!』
グニウは助走をつけ、ぴょんとフッカの頭に乗った。その上でもさらにぴょんぴょんと跳ねている。
『アンタ、少し頭を冷やしなさいよ!』
『……いいでしょう。それで納得して【仕事】をしてくれるのであれば』
『フル……』『アンタ……』
フルはまっすぐフッカを見つめている。通常のフルは真っ白な身体に真っ赤な目をしているが、赤星に着いてからというもの、その毛皮は燃えるような真紅に染まっている。それが何だかいまはとても恐ろしく感じた。
『それは疑似太陽の材料です』
フルは瞬きもせず、さらりと言った。
「疑似太陽の……?」
「疑似太陽って黒星の科学者が作ったんだろ? そんなの……」
『疑似太陽を構成している物質を突き止めたのです。それさえわかれば緑星の技術力でも可能です。まぁ、規模は黒星の物よりも小型になるでしょうが』
「本当に作れるの……?」
コラダが疑いの眼差しを向ける。それにフルは無言で頷いた。
『緑星以外にも、疑似太陽の使用料で苦しんでいる後進星はあります。黒星よりも使用料を安くすれば飛びつく惑星はあるでしょう。そうなれば、その使用料が莫大な収入源となるでしょうし、何より、我々も地上で生活することが出来るようになるのです』
『もちろん、肌の弱さは一朝一夕ではどうにもならないけれど、いずれ耐性のある子が産まれるようになるわ』
「そしたら、産まれてくる子は皆チルドレンになるってこと?」
そうハナに問いかけるコラダの声は何だか寂しげだ。
『残念だけれど、皆が皆というわけにはならないでしょうね。サン・チルドレンは日の光をまったく浴びていない地下生活者の子孫からしか産まれないみたい』
「そうなんだ……」
少しホッとしたような声を出して、コラダは胸を押さえた。フッカはその様子を複雑な思いで見つめている。
「……やるわ、あたし」
「ダダコ?」
「やろう、フッカ、コラダ。あたし達の星に太陽を作ろう!」
「お? おお、そうだな」
目を輝かせて俄然やる気になったダダコにフッカはやや圧倒されている。
「そうだね、頑張ろう、フッカ」
コラダもダダコにつられてやる気になったようだ。
『やる気になったみたいで何よりです。それでは流れについて確認しましょうか』




