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本日は午前中からの活動である。柔らかな日の光がちりちりと露出している肌を刺激する。日の光が緑星人には刺激が強すぎるというのは、どうやら本当らしい。
フルがチュッとネズミの声を発する。どうやらこの先にお目当ての店があるようだ。コーラル地区は、昨日のカーマイン地区と比べて人通りが少なく、寂れた印象である。日の光は充分に届いているように思うのだが、何だか湿ったような臭いがして、お世辞にも綺麗な通りとは言えない。
「ねぇ、ここって、もしかしてちょっと物騒なところだったり……?」
コラダが声を潜めてフッカに問いかける。
「だろうな……。なんたって仕込み銃を扱ってる店がある地区だぞ? そんなところが物騒じゃないわけねぇだろ」
フッカは冷静にそう返したが、内心は穏やかではない。真正面から正々堂々と向かって来られる分には問題ないが、不意打ちに対応出来るのはダダコくらいだ。
チチッとコラダの肩にとまっているハナが鳴く。何事かと二人が自分の方を向いたのを確認してから、ささやくような声でハナがしゃべる。
『安心して。そのために私達がいるのよ。いまのところは大丈夫。危ない時は知らせるから』
優しいその声で安堵し、歩みを進める。前を行くダダコは二人の心情などお構いなしといった風情でずんずんと歩いている。
*
「いらっしゃい」
細い路地をまっすぐ進んだ突き当りの店の扉を空けると、小太りの店主がにこにこと笑みを浮かべている。
「何をお探しですか、ご婦人」
「傘を」
ダダコは低めの声でぽつりとそう言うと、羽織っている長い外套から右手をちらりと覗かせ、銃の引き金を引くジェスチャーをする。
それを見た店主は一度辺りを伺うような素振りを見せてから「かしこまりました」と言って、奥へ引っ込んだ。
程なくして両手に傘を抱えた店主が戻ってきた。一見普通の傘に見えるが、カウンターに置いた時の音が、どう考えても傘のそれではない。
「試しても?」
そのうちの一本を手に取り、様々な角度から観察した後に問いかける。
「あちらの小部屋が降雨・日光照射室となっております。中に担当者がおりますから……」
店主はニヤリと笑い、片目を瞑った。
一連のやり取りで、やはり仕込み銃の取り扱いは違法なのだろうと推測する。
『降雨・日光照射室』というプレートの下がった扉を開くと、すぐに地下へと続く階段がある。その階段を下りると同じプレートが下がっている扉がある。試す、というのはもちろん『試し撃ち』のことだ。本当に伝わったのだろうか、と思いながら扉を開くと、成る程、中は射撃場になっている。
「試し撃ちかい?」
どうやらここまで来れば隠す気はないようだ。ダダコはゆっくりと頷き、手に持っていた傘を顔の前に持ち上げた。
「お目が高いねマダム。これはウチの店でも一番人気なんだ。使い方はね、まず、この先端のカバーを外して……」
そう言って体格のいい店員はダダコの持つ傘の石突をくるくると回して外す。すると、銃口が顔を出した。
「それで、弾を詰めるのはここからだ」
彼は玉留めに手をかけると、わずかな隙間に爪を引っ掻け、上にスライドさせた。中は空洞になっている。
「弾はライフル用ならどんなものでも使える。試し撃ちだからな、とりあえず、これでいいだろう」
胸ポケットから適当な弾を一つ取り出し、ぽっかりと空いた穴の中に詰める。手元を肩に当て、傘が開かないように親骨をしっかりと握った状態でダダコを見た。
「こうやって構えるんだ。やってみな、マダム」
傘を手渡され、見たとおりに構えると、店員は下はじきを指差す。
「これが引き金だ。ただし……」
そう言って、肩に当てた手元の先端をもう片方の手で軽くつまむ。「ここの安全装置を解除しねぇと、傘が開くだけだ。まぁ、開いた状態でも撃てるけどな。いちいちそんな目立つことをする馬鹿もいねぇだろ」
ダダコはこくりと頷き、手元の安全装置に触れた。成る程、触れてみるとここだけ材質が違う。軽く折り曲げてみるとカチリと音がした。「そうだ。的はアレだ。撃ってみな」
ダダコは店員が示した的に向かって引き金を、いや、下はじきを押した。
パァン、という小気味よい音と共に弾が発射される。ダダコの打った弾丸は的に命中した。
それを見守っていた店員はヒュゥと口笛を吹く。
「やるねぇ、マダム。見かけによらずいい腕してるじゃねぇか」
「……いただくわ」
「あいよ。会計は上で頼むぜ」
階段を上り、先ほどの店主に目くばせすると、彼は両手をこすり合わせながら近寄ってきた。
「いかがでしたか? ちょっとやそっとの嵐なんてへっちゃらだったでしょう?」
「そうね。素晴らしい『傘』だわ。三本いただけるかしら。支払いは端末で」
店主は目を輝かせ、毎度! と叫び、店の奥へ向かう。一度くるりと向き直り、「お色はどうなさいます?」と尋ねてきた。




