苦難の道だとしても
前回のあらすじ
懐かしい恵令奈という少女と再会を果たした守
彼女が精霊と名乗り、契約を結んでほしいと守に言ったが、彼はそれを断ってしまう。
「え……」
恵令奈は大きく目を見開く。
それは彼女にとって想定外なのだろう。
それはそうだ、世間一般的に精霊と契約できるなんて人類で限られている。
こんな僕だって簡単に英雄になれるだろう。
だけど__
「君のいう事を受け入れれば、僕は最強に並べるかもしれない。 いや、彼女をも超えるかもしれない。 だけど、それは僕の力じゃない__」
彼女と契約して強くなっただけだ、それじゃ彼女と正当に並べたとは言えない。
僕の力だけで彼女の横に並べなければ、いつか僕は僕でなくなってしまうような気がする。
「だからさ、君の力は借りない。 僕は僕の力で彼女に追いついて見せるさ」
何年経とうと、例え無駄でも彼女の横に立つ。
彼女と出会い、もう一度それを思い出した。
「……変わらないな、お兄ちゃんは」
彼女はそう言ってにっこりと笑うと、全身が火照ったように熱くなる。
「お兄ちゃん、合格……」
彼女の言葉と同時にまばゆい光が放たれ、思わず視界を閉じる。
再び目をあけると、何事もなかったように視界が戻る。
「恵令奈、何を……」
僕から離れ、背を向ける。
「ごめんね、お兄ちゃん、騙すような真似して」
「騙す?」
「うん、契約の契を結んじゃった」
「……え?」
彼女は申し訳なさそうにしながらペロッと舌を出す。
契約は伝承では儀式、精霊独自の魔法陣で契約すると書かれていた。
そして、お互いに契約の言葉を示し、それで契約する。
どの伝承でも、これは行われている。
「精霊と契約は精霊の村でするんじゃないのか?」
「……伝承では、そうなってるね。 だけど、精霊にはやり方がもう一つあるんだよ」
「もう一つやり方?」
「うん、それはね? 契約した精霊が心から一緒に居たいと思った人だよ」
そう言って彼女は頬を赤らめ、恥ずかしそうに言った。
「よかったのか?」
「寿命の事? 構わないよ、お父さんとお母さんにも話は通してる」
「だって、それは……」
寿命を捨てる、それは生半可な覚悟ではできないだろう。
契約すれば、両親より早くに死ぬ。
これほど親不孝な事はないだろう。
「大丈夫だよ、むしろ応援してくれたよ。 好きな人の為に動いて誇らしいってさ。 むしろ誇らしいって送り出してくれたよ」
「えぇ……」
__誇らしいか。
文化の違いだろうか?
「お兄ちゃん、嫌だった?」
「うんうん、そんなことはない、けど……君はいいの? 何千年生きれるのに」
何千年、それは僕等に理解できない途方もない時間。
それを彼女は放棄した。
それがどれだけ大切なのか、短い人生の僕達にはわからない。
しかし、人類にとっては途方もない悲願であり、欲しがる人間は多くいることは間違いない。
「私にとっては長い時より、君や彩花と過ごす方がよほど大事だよ。 私にとって大切で、失う時は私の人生が終わってもいい。 そう思えるほどに」
彼女を両手を胸に添え、想いに耽るように目を瞑りながら言った。
そして目をあけると、優しく微笑みこういった。
「私は幸せだよ……これでやっと、君達の隣に並べる。 君達と同じ領域で、同じ時をやっと……過ごせる……」
嬉しそうに言う彼女にもう何も言えなかった。
それ以上は無粋、否定したら彼女の決意に失礼だと感じた。
「これからよろしくね、お兄ちゃん」
屈託のない無邪気な笑顔でそう答えるのだった。
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