出会いと救済
前開のあらすじ
退学を教師である来栖に推奨され自暴自棄になった森守は幼馴染で首席の彩花と喧嘩別れし、自己嫌悪に陥っていた。
そこにとある女の子が現れ……
出会いは、なんてことない出会いだ。
彼女が両親と共に行商に来ていて、僕と彩花は彼女と遊んでいた。
「初めまして!! 私、恵令奈っていうの!!」
元気一杯に挨拶するので、村の皆は直ぐに彼女と親しくなった。
当然というかなんというか、同じ波長なのか彩花ともすぐに仲良くなり、二人はまるで姉妹のように仲良くなっていった。
毎日遊び、時に一緒に冒険に出かけたりして、あっという間に過ぎていった。
「私、皆と離れなくちゃいけなくなった」
ある日、泣きそうな表情でそう言った。
折角仲良くなれたが、彼女の両親の都合上仕方のない事だった。
そうして彼女は村から去って行った。
その子が今、僕の目の前にいた。
彼女の姿はあの頃と変わっていなかった。
「お兄ちゃん、大きくなったね」
そう言って彼女は無邪気な笑みを見せる。
「あ、あぁ……君は、変わってないね」
「そう? これでも、背は伸びたんだけどなぁ~」
そう言って彼女は不満げに頬を膨らませいった。
「……背が伸びたって、君、あの時とまったく同じ服じゃないか」
彼女は首を傾げた。その瞳は、あの日森で見た湧き水のように澄み渡っていて、数年の月日が流れた重みを一切感じさせない。
「あぁ、あの時は言ってなかったっけ?」
彼女はそういうと、不思議な雰囲気が辺りを包み込む。
「私、精霊なの」
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精霊、それは伝承に残る希少な種族だ。
その中でも、精霊剣と呼ばれる剣は強力で、精霊と契約することで精霊が剣に変化する力を得ることができる。
能力は精霊にもよるが、それぞれが特有の強力な剣であるのは間違いない。
精霊は基本的には契約に応じない。
契約すれば、契約者と同じ寿命となる。
千年以上生きる精霊達にとって、メリットはないのだ。
加えて、精霊達の力は強い。
大昔にとある大国が精霊狩りというのを行い、立った数十人に一万以上の選りすぐりの固有持ちの軍隊が壊滅させられたという事があった。
今では精霊の村は確認されておらず、絶滅したと噂されるほど確認が少なくなっているのだ。
「ねぇ、お兄ちゃん」
精霊と名乗ったエレナはゆっくりと近づき、覗き込むように僕の目を見つめてくる。
「私と契約してくれない?」
「契約?」
「うん、契約……お兄ちゃんと契約したいの」
彼女の決意に満ちた声は、研ぎ澄まされた鋭さを持っていた。
「あの時の約束、覚えてる?」
「約束?」
僕の言葉に不満そうな表情を浮かべる。
そしてすぐに深く溜息を吐き、呆れたような表情を浮かべる。
「お兄ちゃん、忘れたの?」
「ご、ごめん……」
「お兄ちゃんや彩花ちゃんと一緒に冒険しようねって話」
そんな話したな。
まだ幼かったころ、三人で話した。
「大きくなったら、皆で冒険しよう」
その言葉で僕と彩花は学園に入ったんだっけ?
__あれ?
視界がぐにゃりと歪む。
あの頃は何でもできると、そんな風に考えていた。
能力が防御型と知り、鍛錬を積んだ。
最初は三秒だったのが、今では五秒まで伸びた。
たった五秒。学園の連中には笑う者が多かった。
「無駄なのに」と言われ続けた
それでも僕にとっては、血の滲むような鍛錬で手に入れた二秒だった。
「そう、だった、な……」
思い出して後悔した。
いつからか、思い出さなくなっていた。
否、思い出すと辛いから、記憶から消していた。
彼女に会うまで、その約束を忘れようとしていた。
彩花との差で無意識に逃げようとしていた。
「お兄ちゃん、辛かったね」
そう言って彼女は優しく微笑む。
きっと、記事を読んだのだろう。
「酷いよね、君が努力家なの知らないのに、勝手に面白おかしく書いてさ……でも、私は知ってるよ。 君は努力家で誰よりも頑張ってるって、彩花だってそうだよ。 君の事は誰よりも私達が知ってるんだから」
その言葉が嬉しくって、僕は嬉しさと彩花に言った言葉への後悔が両方押し寄せてくる。
肯定された喜びと同時に、自分の醜さに胸が引き裂かれそうになる。
「お兄ちゃん、もう一度言うよ……私と契約して? 私と契約して、この記事を見返そうよ」
見返す……か……。
彼女の言う通り、精霊の力があればこの腐った状況を覆せるだろう。
「ありがとう恵令奈……だけど、契約しない」
僕は彼女にそう言い放ったのだった。
今回のお話はいかがでしたでしょうか?
頑張っていきますので、応援の程、よろしくお願いします




