第27話
side:ユイ
「ユイ、遊びに来たよ。」
「ん。フェルカナ、いらっしゃい。」
ここ数日、私はフェルカナと会っている。一緒に狩りに行ったり、勉強したり、遊んだり。おかげで私もこの世界に馴染めてきた。本当、フェルカナと両親、村長さん達には感謝しなきゃね。
「でも、家の手伝いとかはしなくて大丈夫なの?」
この世界では、貴族などの一部の子供以外は学校に行っていないので、フェルカナももう働いていたはずだ。
「いままでも、家で勉強したり狩りの練習してた時間が多かったからユイとしても同じだよ。それに、ユイがたまに作ってくれるご飯のおかげもあって、うちの両親どっちもユイのことになると甘くなるから。」
日頃の感謝のつもりでご飯作ってたんだけど…まぁ喜んでくれてるならよかったわ。
「それで、今日は何するの。昨日勉強したから森行く?」
「いや、今日は一緒に考えてほしいことがあるんだよね。」
「なに?」
「私の商品を新しく売り場を作りたい。あと、せっかくだし新しい商品を売りたい。」
「あー。でも、ユイお金ならたくさん持ってるでしょ?もう増やす必要ないんじゃない?」
「私もよくわかってないんだけど、たくさんお金稼ぐと私が扱える商品が増えるんだよね。武器も、いままでは出せなかったけどお金稼いで出せるようになったし。」
正確にはマルカリで買い物して、だけど。
「なるほどね。たしかに、今ユイが売ってる商品はもうみんなに行き渡ったよね。買い替えでの需要はあるだろうど、それ以上売れるってことはなさそう。」
「そうなんよね。」
今私が売ってる商品は、シャンプーとか、ライターとかの日用品。だから、安定しているけど爆発的に売れるってことはない。まぁ、利益率激高だから一般的に見るとかなり多くのお金が入ってきているが。
あ、日用品のなかでも傘は「アヤ」では売り出してないよ。
これはガラントさんが私との取引で傘を選んだ理由にもつながるんだけど、この世界の雨具ガラントさんの商会が最初に作り出したらしい。だから、傘なら商会で売れやすいしブランドも守れるってこと。
で、ガラントさんは今この世界で地球の傘を再現しようとしている。これは私が手伝えることでもないし、陰ながら応援するのみだ。
ってことで売ってない。
「なんかさ、こんなのあったら便利だな、みたいなのない?私じゃ考えてもわからん。」
「うーん。ユイのご飯が自動ででてきたら便利かなぁ。」
「いや、無理よ。頑張ればできそうなやつで。」
「えー。…うーん。夜作業できるような光があったら便利かなぁ。冬とかすぐ暗くなるから早く寝るしかないんだよね。」
フェルカナはじっと私のことを見る。
「そういや、家の内装、僕が夜帰ってから朝早く来るまでに進んでたよね。なんか明かりをつける手段持ってるんじゃないの?」
「あー、たしかに持ってるけど、照らすだけなら火とか使えばよくない?」
「どうしてもって時はつかうけど、普段はあんま使いたくない。」
「なんで?」
「消し忘れたら危ないじゃん。」
「そりゃそうだ。あ、私が使ってるのはこれね。」
私は窓のカーテンを閉め電池式のライトを取り出す。
「カチッ」
太陽の光が遮られ、薄暗くなった室内に光が灯る。
「すご…。」
「どお?売れると思う。」
「もちろん。こんなん売れない訳ない。」
「いくら位が相場かな?」
「ちょうどいい値段は分かんないけど、金貨1枚ならみんな買う。」
金貨1枚ってことは、100万か。原価6000円、乾電池1セットと予備1セットいれるとして200円だから、単純計算1つあたり993800円の利益。
ひどいぼったくりを見た。まぁいいか、これで行こう。
「じゃあ、1つ金貨1枚で売ろう。」
「そんな簡単に決めていいの?もっと高くても売れると思うけど。」
「今までなかったものの価格なんて考えても分からないしね。それに、黒字ギリギリとかならともかくうちには余裕があるから。」
というか余裕しかない。
「…これ、原価いくらなの?」
「ちょっと言えないわね。」
「…」
「それは置いといて、これどこで売ればいいかな。」
「いつもと同じ場所じゃだめなの?」
「いくら便利とはいえ、庶民にとって明かりに金貨をかけるっていうのはさすがに厳しいから、ターゲットは金持ちとか貴族になると思うんだよね。だから、今の庶民向けの店とは分けたいなって。」
「たしかに。どこかあてはあるの?」
「ないから困ってるのよね。」
またガラントさんに頼ってもいいんだけど、それだけっていうのもなんかなぁ。
「話は聞かせてもらった!」
「きゃっ!」
「!」
私はハンドガン、フェルカナは短剣を出し後ろへ構える。
「なんだ、リュミエラね。」
私はリュミエラの姿を認めハンドガンをしまうが、フェルカナはリュミエラに向けたままだ。…ちょっと怒ってる?
「…私が悪かったから、ナイフこっち向けないでくれませんか。」
そう言われ、フェルカナも短剣をしまう。
「それで、話は聞かせてもらったってどういうこと?てかいつからいたの?」
「まあまあ、いつでもいいじゃない。それよりその商品、うちの商店に置かせてもらえないかしら。」
そういやリュミエラ、商会主だったな。それも結構大きめの。リュミエラの店で売ってもらえれば私の負担0だし大有りだなそれ。
「それで行こう。」
「はやっ。よく考えなくていいの?」
「考えるまでもなくそれが最良だと思うよ。」
「そう。そう言ってもらえるとありがたいわ。」
そこから、詳しい内容を決めていった。リュミエラの商会が1つ金貨1枚でライトを私から買い、それを商店で売る。価格設定はリュミエラの自由。
金貨1枚で私から買って利益が出るのか心配になったが、フェルカナが言ってた金貨1枚というのは絶対安全な価格であり、実際の価値はもっとあるだろうとのことだ。まぁ、2人がそう言うなら大丈夫なのだろう。
あと、私としては当然「アヤ」として売って欲しいが、リュミエラから反対された。曰く、リュミエラの商会はヴァンパイアが経営しているとの噂(事実だが)があり、そのため「アヤ」として商品を売り出すと私とヴァンパイアとのつながりが疑われるとのことだ。
確かに、それはリスクではある。だが、ここでユイの商品だと明かさなければお金は手に入っても想定顧客である貴族や大商人からの信用は得れない。
しばらく話し合ったが最終的にリュミエラが折れ、「アヤ」として売り出すことになった。リュミエラの商会はいくつかの商店で構成されていて、その中には富裕層向けの商店もあり今回はそこで売るらしい。
それにしても、リュミエラから商店の名前を教えてもらったときは驚いた。今まで行った全てに複数店づつあった商店だったからだ。…やっぱリュミエラって、意外とすごい人…じゃなくてヴァンパイアだよなぁ。




