夜明け
円は寮室から朝日を見る。
昨日の事もあって何故だか早く目が覚めたようだ。
窓を開けて深呼吸した。
「あの日からとは違う未来だ」
そう言って笑う円はいつもより幼く見えた。
変えたかった日が変わればこれからの未来は格段と違うモノになる。
今まで接触を避けていた彼に会う日だ。
昨日は休日に力比べが行われていたので今日は振り替え休日なのだ。
円は過去で約束した場所に向かう。
だが実際に彼がいるかは不安だった。
彼は自身の力を「万能」と言っていたが「全能では無い」とも言っていた。
「全能なら、あの日に僕は意地でも学校に行っただろうね」と儚く笑って言ってた彼はまさしく朧月夜の君。
色々な事が出来る故に彼は病弱で本人は歯痒い思いをたくさんしたそうだ。
「円さん」
待ち合わせ場所で彼が手を振っている。
「芽吹くん…」
円も手を振り返すが芽吹がいる事で少し視界が霞んだ。
芽吹は以前よりは健康そうな感じで儚げより爽やかな印象になっていた。
でも笑顔は優しくて懐かしいモノだった。
「凄く久しぶりだね」
「本当に…15年以上ぶりだ」
にこにこと笑う芽吹につられて円も笑っていた。
これまであった事、これからの事を話してその場を楽しむ。
「僕の力…万能から下がって色々出来るやや便利能力になったみたい。だからか身体も過去よりずいぶん丈夫になったよ」
「下がった原因は私の力が特殊になったからじゃないのかい?」
「そんな事ないよ~」
芽吹の含みのある笑顔に円は察したが掘り下げるのはやめた。
きっと優しい彼の事だから円が困らないように力をつけてくれたのだろうと…。
「これからは僕達が体験した事のない未来になる。躓く事、悔しい事もいっぱいあるかもしれない…でも、あの時より後悔する事はきっとないと思う」
「そうだね」
「過去に囚われずに前を向いて歩くのがこれからの僕達だ」
芽吹の言葉の重みを感じて円は頷く。
怖いくらい真剣な表情をしていた芽吹の顔が綻んだ。
そして円に手を出して
「円さん、改めてお友達になって下さい」
「こちらこそお願いします」
円は芽吹の手を握り返した。
2人はとても楽しそうに笑った。
ずいぶん話したし2人は寮に戻る事にした。
別れ際に芽吹が「これからはトーマをよろしくね」と屈託のない笑顔をされて思わず円は赤面した。
2人がどうやって過去からの記憶があるかの確認中
「僕の過去の諢名は?」
「朧月夜の君」
「私の過去の委員会は?」
「図書委員。通称・本の鬼神」
「余計な事まで言わなくて…」
「円さん格好良かったよ!図書室で五月蝿い人や本を丁寧に扱えない人をばっさばっさと「もう確認する必要ないようだ」




