36話 前篇
ハノイ戦線
ロシアサイドの主人公が登場します
私の好きなロシアの巡洋艦ワリヤーグが登場します。
2021年5月22日早朝
ハノイ南西上空100㎞地点、高度7500m
ロシア空軍所属とベトナム空軍所属の各6機のSu-30戦闘機の2個飛行中隊が12機で一糸乱れぬ編隊を組んで飛行していた。
そしてその飛行隊の指揮を託された俺、ロシア空軍のセルゲイ・イワノフスキー中佐は愛機、Su-30のコックピットの中で操縦桿を握りつつ、俺と同様にロシアから派遣されたAWACSA-50メインステイの指示を待っていた。
「美しい空だな・・・・・・ここが戦闘空域でなければ写真を撮りたいものだ」
俺がそう言うと副隊長のミハエル・グレンスキー少佐から通信が入る。
『その通りですが中佐、今は目の前にある事に集中しましょう』
「そうだな・・・・・・お前の言う通りだ、副隊長・・・・・・」
俺がそう言うと官給品の日本製のデジカメを耐Gスーツのポケットへとしまう。
て言うか、俺は何でデジカメなんて持って来ているんだ・・・・・・
俺はそう思いつつも味方からのデータリンクから入ってくる情報やIRSTや前方及び後方のレーダーから入ってくる情報が表示された戦術情報表示装置を注視する。
まぁ、最も後方警戒装置と言っても短距離しか効果がないとか言う噂らしいが。
様々な事を考えている内にA-50AWACSから通信が入る。
『こちらロシア空軍AWACSボルガ1、アルタイ飛行隊聞こえるか?』
「こちらアルタイ1、音声クリア、聞こえます!」
俺がそう答えるとボルガ1もすぐに往信する。
『聞こえるか、良かった・・・・・・ボルガ1よりアルタイ1、本機が特定した敵情だと、敵は君たちと同じ機体であるSu-27と国産のJ-10が各6機らしいが、それに加えて占領中のハノイ国際空港には40機以上ものSu-27とJ-10やJF-17がいるらしいから油断するな』
「アルタイ1了解・・・・・・油断はしないさ・・・・・・」
俺はそう言うと再びレーダースコープを注視し、目標を探す。
と、その時だった。コックピット内にミサイルに捕捉された事を知らせる警報音が鳴り響いた為、俺は操縦桿を倒して機体を急旋回させる。
「クソっ!敵さんのほうが俺らより情報収集がはやかったか!!」
俺はそう言うとチャフを放ちPL-12空対空ミサイルを何とかかわした。
「やってくれたじゃねーか!!・・・・・・アルタイ1!ミサイル発射!!」
俺はそう言うとタッチスクリーンのミサイル発射の場所をタッチする。
するとR-73空対空ミサイルは愛機の胴体下から切り離され、少しばかり落下したところでエンジンに点火し、目標に向けて飛翔する。
そして俺はミサイルの発射後、すぐに機体を旋回させ、敵ミサイル攻撃へ備える。
俺の予想通り中国軍機はロシアのR-77や米国のAIM-120に匹敵する性能を有する中国製の空対空ミサイルPL-12を放ってきた。
だが所詮、PL-12の性能はこっちのR-73に比べれば性能は低いだろうと俺は踏んでいたが、それが裏目に出たのである。
『アルタイ4より各機、7号機が撃墜され・・・・・・うわぁああー!』
『こちら8号機、4号機が撃墜されました!ん!?敵だと私がいきます!』
「アルタイ1より各機、落ち着いて反撃に転じろ!あと小隊を崩すな!連中は小隊を崩したのを狙って格闘戦に持ち込んでくる!小隊で格闘戦に持ち込んで腕に自信のある1機が囮となり2機が集中的に攻撃すれば勝てる!」
『アルタイ5了解!』『アルタイ10了解!』『アルタイ12了解!』
残存機9機の隊員たちがそう言うとアルタイ2と3に付け加える。
「あと俺とアルタイ2、3は8号機の援護に回る!」
『アルタイ2了解!』『アルタイ3了解・・・・・・任せてください!』
グレンスキー少佐とぺテルスキー大尉がそう言うと俺は静かに頷く。
そしてアルタイ8から再び通信が入ると俺はアルタイ8を追い回している中国軍のSu-27を捕捉し、急降下しながら格闘戦用である赤外線追尾方式の空対空ミサイルであるR-73を放ち、急旋回して回避機動に移る。
だがしかし中国軍のSu-27は寸前で俺の機が放ったR-77を回避する事に成功し、その直後に俺の愛機のコックピット内に警報音が鳴り響く。
当然、俺はプガチョフ・コブラと呼ばれる機動で回避を試みると言うよりは敵のミサイルをオーバーシュートさせようとする。
俺の目論見は見事に当たり、ミサイルは俺の機から数百m離れた場所で爆発し、俺や僚機であるグレンスキー少佐やペテルスキー大尉の機体にも命中しなかった。
「面白れー事になって来たぜ!」
俺はそう言うと俺を撃った機体の後ろに付くと胴体に装備されている30㎜ガトリング砲用の発射ボタンの上に指を置き、照準線を合わせる。
30㎜口径の機銃とは言え侮るなかれ、重量のある銃弾で破壊力は日米が使用しており、西側最強の戦闘機と名高いF-15CやこっちのMig-29のカウンターパートであるF-16C/Dの装備する20㎜6連装機関砲の威力の数倍にもなり、前々世代の主力機と言えるMig-21やそのライバルであるF-5級の機体なら数発いや一撃で撃墜可能といわれている。
まぁ、最も俺は最初から機銃を頼りにするつもりは無かったが、R-73を自衛用に2発ストックしておきたいと言う俺自身の心境もあるしな・・・・・・
俺は照準装置の照準線の中心に前を飛んでいる敵機の胴体の一部が合うと30㎜機銃用の発射ボタンを押す。
すると俺の親指に押されたボタンは”カチっ!”と言う音を立て、やがて耳を裂くような音と共に30㎜機銃は目標であるSu-27に向けて放物線状の火箭を描き、飛翔する。
数秒後、目標であるSu-27の左エンジンから煙が出ているのを俺は確認すると、敵機の機動力が低下した事に気付く。と言うよりその為に撃ったのだが。
俺は機動力が低下した敵機に対して悠々とした加速と旋回を見せつけ、後方数百m上方に再度回り込むと最後のとどめを刺すべく再び照準を合わせる。
「・・・・・・楽しい勝負だったが、ここで勝負あったな!!」
俺がそう言うと親指でボタンを押すと今度はR-73に電気信号が伝わる。
直後にR-73は翼端から外れて目標であるSu-27へと飛翔する。
数秒後、中国軍のSu-27にR-73が命中し、同機は砕け散ったのである。
「アルタイ1敵機撃墜!!」
俺がそう報告すると2つの小隊からも敵機を撃墜したと言う情報が入ったが、敵戦闘機の数も増えつつあり、こちらも増援を基地へ要請した。
「どうやら中国軍も簡単にハノイへの道を開けてくれる訳じゃなさそうだ」
俺はそう言うと再び敵機と渡り合うべく、R-77の照準を合わせるのである。
照準が合って暫くすると俺は発射用パネルに触れ、愛機から切り離されたR-77が目標へと向けて飛翔し、俺はレーダーを注視する。
戦果を確認し、再び照準を合わせる。空戦とはそう言うものである。
俺はこの日の空戦で3機の敵を中距離で撃墜し、格闘戦で2機を撃墜したので、昔の基準で言えば充分にエース・パイロットと言える。
まぁ、昔の撃墜王は突拍子の無いエピソードがあるらしいけど、俺には無い。
2021年5月22日ベトナム中部沖
ロシア海軍太平洋艦隊旗艦・巡洋艦ワリヤーグ
私の名はワリヤーグ、ロシア海軍太平洋艦隊の旗艦で、ソ連時代の1980年代に就役したスラヴァ級ミサイル巡洋艦の3番艦で、ソ連時代には赤きウクライナを意味するチェルヴォナ・ウクライナと名乗っていたわ。
因みにワリヤーグとはロシア語で北欧系の海賊を意味する如何にも巡洋艦らしい勇壮な名前だと自分でも気にっているわ。
それはそうと私の隣に座っているのはマーシャル・シャポシニコフ。彼女も私同様に旧ソ連時代に建造されたが彼女はウダロイ級大型対潜艦であり、主に対潜作戦の指揮を行う駆逐艦であり、艦隊防空の担い手である私とは任務が違う。
とは言っても私とは艦種を超えた友達なんだけどね・・・・・・
「空軍の戦いが始まったらしいわね・・・・・・ワリヤーグ姉さん」
シャポシニコフさんがそう言うと隣で立っていた私が頷く。
「そうね・・・・・・もうすぐ海の戦いも始まるわ・・・・・・日米豪がフィリピンを奪還したと言う話だし、対馬海峡を通過する際に日本海軍の巡洋艦の愛宕さんに通峡監視された際には”がんばれ”って送られてきたから負ける訳にはいかないわね・・・・・・・わかってるよね?あなたも?」
「わかってますよ、姉さん、負けたらただでさえ足りない海軍の予算が無くなってしまうしね・・・・・・」
「それに”祖国のために尽くすのが軍艦だ”と私が仙台に親善訪問した際に扶桑さんが言っていたわ・・・・・・・」
「そうね、祖国の為に出来る事を尽くすのがロシア海軍艦艇たる私たちの役目よね・・・・・・姉さん・・・・・・」
彼女がそう言うと私もそれに続く。
「そうよ・・・・・・この作戦で海軍が如何に重要か、それを陸軍に見せなきゃいけないのよ・・・・・・何せアメリカ海軍と対峙した経験のあるソ連海軍の末裔なんだからね、わかるわよね、みなさん?」
私はそう呟くと明日の明朝にはハイフォン上陸作戦が開始されるだろうと思いつつフランス製の近未来的な揚陸艦ウラジオストクを見ていたのである。
セルゲイ・イワノフスキー中佐(37歳、既婚)
サンクトペテルブルグ出身のモスクワ防空部隊隊長で、モスクワ在住。
2015年にモスクワ防空部隊所属になった際に搭乗機を従来のMig-29からSu-30に機種転換をしている。操縦テクは天才的なものである。
1男2女の父で、駐在武官として東京やワシントン、パリに駐在経験あり。
駐在武官経験故に母国語であるロシア語以外に日英独仏語の4か国語が喋れ、更には今回の出撃に際して越語も習得しようとしていたが、断念している。
イメージモデル まぁ、予想はつくと思いますがハルトマンです。
アルタイ飛行隊
露越両国の空軍の優秀な操縦士を集結させた最精鋭飛行部隊。
使用機は改良済みのSu-27に統一されているが、1号機のみSu-30。
なお、フエ方面の基地にはロシアがSu-27を12機とA-50早期警戒機を派遣しており、Su-27隊はバイカル、早期警戒部隊はボルガと言う。




