32話
マニラ奪還戦、中盤。
中国軍マニラ防衛部隊戦車隊第5両兼副隊長車
「金軍曹!センサーに反応はあるか!?」
俺、林援軍は99式戦車の車内で部下の1人で、装填手である金軍曹にサーマルセンサー反応を聞くと金軍曹はすぐに返事をする。
「はっ、全方位感知センサーに反応はありません、林大佐!」
「そうか・・・・・・おい、湘中尉!エンジンの調子はどうだ!?」
俺がそう聞くと運転手の湘中尉はすぐに”快調です!!”と答えた。
とその時だった戦車隊の隊長である胡大佐がの声が突如、無線から聞こえてきた。
『ここを何としても護り抜け!!わかったなお前ら!!』
「了解・・・・・・どんな事があっても護り抜く自信はありますよ・・・・・・」
俺はそう言って胡大佐を満足させるが、正直言って自信などない。
むしろ、敗北と言う未来しか見えていない、いや現実か・・・・・・
俺は様々な思考を巡らせつつ、車長席に座りモニターを睨む。
「11時の方角に敵戦車反応!!」
「(来たか・・・・・・)11時の方角!対戦車戦闘用意!」
俺がそう叫ぶと俺の乗る戦車の砲塔は11時の方角に向く。
「敵戦車発砲!!」
装填手でモニターを見ていた金軍曹がそう報告すると俺はすぐに次の命令を下す。
「鄭曹長、射撃用意急げ!湘中尉!後進一杯!!」
「「了解っ!!」」
俺の指示に2人ともそう言うと湘は車体を後退させ、鄭が砲塔を回し、射撃準備を始め、照準を敵戦車と思しき車両に対して合わせる。
「撃てぇええー!!」
俺がそう叫ぶと125㎜滑空砲が目標である豪州陸軍のM1A2エイブラムス戦車に向けて放たれ、対戦車徹甲弾がその車体に施してある装甲の表面に直撃し、爆風が表面を覆うとその重厚な装甲を貫いた・・・・・・と思われたが・・・・・・
「・・・・・・なっ、あの攻撃を食らってもまだ動けるだと!?」
俺がそう言うと敵戦車は後退を開始したのである。
すぐにあのバカ隊長は追撃命令を下し、3両を率いて追撃を開始した。
一応、俺はこれは敵の罠に違いないと言う事を察しており、自ら隊長の援護と称する後方待機3両の友軍戦車を率いて買って出る事にしたのである。
そしてすぐに俺の嫌な予感は的中したのである。
『こちら蒼虎01、て、敵の待ち伏せに!!敵には日本軍の新鋭戦車、ひ、10式がいます!!ぐわっ・・・・・・』
ピー・・・・・・と言う音がするとそこで無線が途絶えたのである。
「(10式がいるとなるとコイツでは手も足も出ない・・・・・・だとすれば我々に出来る最善の策は待ち伏せによる奇襲しかないか・・・・・・)各車両、取り敢えず我に続け!!救難すれば敵に誘い込まれるぞ!」
俺がそう部下たちに指示すると、俺らは遮蔽物の多そうな場所を探す。
いくら電子的観測光学機器が発達したとは言え、こう言うと時にMk-Iアイ・ボールが一番頼りになるはずだ。
そして俺が指示した通り、部下たちは遮蔽物を発見し、胡中尉は見事な操縦技術で遮蔽物へ車体を滑り込まし、他の車両も次々に隠れる。
俺はトラック諸島沖海戦で日本軍水雷艦隊がやった戦術と同じ戦術が戦車戦でも通じるのでは無いかと思っており、何度もそれを演習で実践してきた。
そして今日、演習でやって来た事が意味を成したのであると思うと感慨深い。
しかし今はその感慨などに浸っている場合では無い。ここは戦場である事を俺は敵戦車がモニターに映った事によって思い出したのである。
「74式か・・・・・・相手に不足はないな・・・・・・」
俺はそう言うと金と鄭に射撃用意を整える様に命じ、友軍にもそう伝える。
目標である74式戦車は旧式化しているとは言え、長きに渡り日本陸軍の主力として侮りがたい性能を持っており、今でも配備数は多く、俺は警戒していた。
暫くすると敵戦車がこちらに気付いたのか砲塔を向けてきた。
「でもな一瞬だけ遅かったな・・・・・・撃てぇええええー!!」
俺がそう叫ぶと125㎜滑空砲が目標である74式戦車に向けて飛翔し、74式の105㎜砲弾防御対応の砲砲塔部分を撃ち抜き、同車を鉄屑へと変えたのである。
大きく炎上した74式戦車から1名の敵戦車兵が出て来たところを2号車がその逃げている戦車兵に対して機銃による銃撃を加えていたので、俺は2号車に対して銃撃をやめるように命じた。はっきり言って政府の犬どもは何を考えているか、俺にはさっぱり理解できないと思いつつも、2号車の車長を叱りあげた。
叱りあげて銃撃をやめてから1分ほどたつと俺は車長席から顔を出して周囲の観測を行っていたが、次の瞬間、豪陸軍の攻撃ヘリが遂に俺たちを発見し、30㎜機銃による機銃掃射を掛けてきたのである。
「くそっ!!地対空攻撃班は95式自走対空機関砲と携帯式地対空誘導弾を寄越してすぐに上空のハエを落としてくれ!」
俺がそう怒鳴ると地対空攻撃部隊の部隊長から通信が入る。
『こちら対空車両班、日米豪軍の空挺部隊及び攻撃機と交戦、我戦闘能力低下中!繰り返す、我戦闘能力低下中!』
「あぁ、もうどいつもこいつも!!自分勝手な野郎どもばかりだな!!」
俺はそう無線機に対して吐き捨て、怒りにまかせて無線を切ったのである。
だが無線を切った次の瞬間、俺は物凄い衝撃に襲われ、意識が暗転したのである。
日本国防陸軍マニラ奪還部隊所属付戦車隊第1号車
「ジャック1よりアルファ・コマンド、敵99式戦車の沈黙を確認した!」
宮本大佐がそう報告するとアルファ・コマンドから通信が入る。
『よくやった!!地上はこれより歩兵隊が制圧する。戦車隊は支援に回れ!』
「ジャック1了解、これより兵員装甲車部隊と合流する!」
宮本はそう言うと愛車を海岸のほうへ向かわすのであった・・・・・・
マニラ湾入口沖扶桑艦橋天蓋
「いよいよ上陸作戦が始まったみたいね・・・・・・」
私がそう言うと隣にいた霧島さんもすぐに反応する。
「そうね・・・・・・まぁ、私たち水上戦闘艦に出番は無いでしょうけどね」
「それもそうね・・・・・・作戦は順調らしいしね・・・・・・」
私と霧島さんが会話を終えるとすぐに通信が入った。
『こちらシーウォッチャー、マニラ湾周辺に展開中の全日米豪水上艦に告ぐ、現在、マニラ湾強行突破を試みようとしている中国海軍の旧式駆逐艦が接近している!繰り返す中国軍旧式駆逐艦がマニラ湾強行突破を試みようとしている!』
『こちら扶桑、了解した!!これより同艦隊の迎撃に向かう!』
『秋月了解!』『足柄了解!』『時雨了解!』『アンザック了解!』『カーチス・ウィルバー了解!』『J・P・J了解!』『シドニー了解!』
各艦からの通信を聞いた私はすぐに各艦魂に命令を下した。
「来るなら来い!!各艦、対水上戦闘用意!!」
私がそう叫ぶと船首に装備された12㎝が空に向けられマニラ湾を睨む。
『目標、敵艦隊、主砲、誘導砲弾、撃ちー方ー始め!!』
砲雷長がそう叫ぶと複数の砲術員が復唱し、次の瞬間には12㎝砲が低い発射音と共に火を噴き砲弾が空へと舞いあがる。
そして私はその砲弾のコースをじっと眺めていた。
さて、今後はどうなるのかしらねぇ・・・・・・と思いつつ。




