30話
新年一番とり!
Side1 旧マニラ空港滑走路
「敵襲だ!!航空隊と防空機銃班はすぐに対処しろ!」
司令部幕僚の一人である俺がそう言うと、離陸間近だった対艦ミサイルを搭載したH-6戦略爆撃機に誘導砲弾が着弾し、巨大な火球へと変わる。
H-6爆撃機はソ連製爆撃機を中国が独自に発展させたもので、南京市の上空から周辺国へ対して核による恫喝が可能なミサイルが搭載可能な構成の爆撃機である。
「くそっ!!海南島の空軍基地でも海軍基地からでもいいから増援を呼べ!!」
俺がそういうと通信員が即答で”了解しました!”と叫んできた。
マニラ空港に配備していた作戦機が多くがこの暁前の攻撃によって失われており、もし敵がマニラ市に上陸してくれば、制空権も制海権も喪失した我が軍は確実に撃滅され、敗北する。もし降伏調印をしたとしても一族の晒し者や家族が殺されるだろうと思い、その為にも俺は軍人の名誉たる戦死をしたいと思った。
そして俺はすぐに耐G服へ着替え、J-11戦闘機の後部座席へ乗り込んだ。
一応、これでも昔は空軍の戦闘機乗りとして色んな国が主張する領空へ侵入し、その国の迎撃機を挑発して逃げてきたもんだ。今回も逃げ勝てると俺は思っていた。
「昌大佐!!まもなく発進します!」
前席で本来ならJ-10の操縦士である鄭大尉がそう言うと俺は座席帯を締め、強烈な加速Gに耐える為に歯を食いしばる。
「行きますよ・・・・・・大佐!!」
彼がそう言うと俺は強烈なGを感じつつも機体が浮き上がるのを感じる。
今回、俺は日米豪艦隊に対して一矢報いるべく1機のJ-11含む6機混成中隊にASMを搭載し、護衛として3機のJ-11を付けて出撃したのである。
Side2 日米豪艦隊
巡洋艦扶桑を中心にマニラに対する早朝攻撃を実施した日米豪比国奪還艦隊は輪形陣を組んで依然として対空警戒を厳として航行していた。
扶桑CIC
「北北西の方角より敵航空機群の反応あり!」
電測員がそう報告すると猪口砲雷長がすぐに目標数を聞く。
「目標!!Su-27級戦闘機4、J-10級3、JF-17級2の混成!」
電測員の報告を聞いた猪口砲雷長は即座にSu-27級とJ-10級の戦闘機に対して照準を合わせる様に命じる。
「SM-6の照準が完了次第、逐一発射せよ!」
猪口がそう言うと多目的ディスプレーに表示された敵航空機群のSu-27クラスと思しき航空機を示す輝点の台形の中央を抜いた様な輝点が覆う。
「目標捕捉!!・・・・・・前甲板VLS6セルよりSM-6発射用意・・・・・・斉射!!」
砲術員の1人がそう叫ぶと6セルのMk-57VLSから一斉にSM-6が放たれ、目標である中国軍航空機へと飛翔する。
因みにこのSM-6は誘導方式として慣性誘導と発射母艦のレーダー照射に従うセミアクティブホーミングと自身が搭載するレーダーによるアクティブの3つのタイプの誘導が可能であり、飛翔中に誘導方法を切り替える事が可能である。
そのSM-6を放ったのは日本国防海軍の扶桑、足柄、秋月と米海軍のカーチス・ウィルバーとJ・P・J、ルーズベルトと豪州海軍のメルボルンであった。
6隻から放たれたSM-6は中国軍の3機の護衛のJ-11を一瞬で撃墜するが、対艦ミサイルを搭載したJ-11の撃墜は失敗し、接近を許してしまった。
(しまった・・・・・・1機落とし損ねたか!!)
猪口がそう思った次の瞬間、そのJ-11から4発のASMが切り離され、こちらへ向かってくるのがディスプレーに表示されたのである。
そして次の瞬間だった、YJ-82と思しきASMが次々と他の中国軍機から発射され、こちらへと向かってくるのがわかった。
つまり、あのSu-27は囮であり、後方の機体が本隊だったのである。
(戦術的勝利を収めたとはいえ、戦略的には俺らの完全敗北だ・・・・・・)
西田がそう心中で呟いた次の瞬間、敵機は次々に反転していく。
次の瞬間、秋月を始めとした各艦からASMを迎え撃つべくSM-6やESSMが次々と放たれ、目標へと向けて飛翔する。
それから1分もしない内に目標24発の内の半数以上である15発が撃墜され、海面へと落下し、ディスプレーから表示が消える。
だが、9発は高度を低下させ、レーダーをやり過ごそうとする。
それに対して日米豪の対空レーダーは水上捜索能力も長けていたとは言え、一部の艦艇には長期間の作戦で少し不調が発生しており万全とは言えなかった。
艦隊外縁に位置するDDG-80ルーズベルトがそうであり、同艦のSPY-1はさっそく敵ASMを失探、低空警戒・対水上レーダーがこれを何とか捉え直した。
そして同艦CIC
「目標、超低空から接近中!!」「CIWS射撃オート!」
「目標まで距離約5千(m)!!」「CIWS射撃開始!撃ち方始めぇー!」
次の瞬間、同艦が装備する20㎜CIWSが火を噴き、ASMを迎え撃つが・・・・・・
ピー・・・・・・・
迎撃成功と出たものの、警報音が同艦の戦闘指揮所や船内に鳴り響き、全ての乗員が床に伏せ、衝撃に備える。
数秒後だった、ルーズベルトの後部煙突にYJ-82対艦誘導弾の破片が同艦に降り注ぎSPY-1レーダーや後部CIWSや2基の誘導用アンテナを破壊し、同艦を浮かぶただのミサイル倉庫へと変えたのである。
扶桑艦橋天蓋
『ルーズベルト被弾か・・・・・・・各艦!!救助および同艦の援護を急げ!』
司令部が艦隊内通信でそう言っているを聞いて私は”やはり敵も一筋縄ではいかない連中だな”と感じつつも空を睨み続けた。理由は簡単だ、この混乱の最中と言う最悪のタイミングで敵が来るかわからない、だから対空能力に優れた私がつねに艦隊の目として動いていないといけないと言う事だからだ。
勿論、イージス艦の足柄さんに霧島さんに、FCS-3と言う私のシステムの元祖となったシステムを装備する秋月さんも空を睨み、ソナー性能が国防海軍の中で最も優れた初霜型巡洋艦である暁ちゃんや時雨ちゃんは海の底も睨む。
無論、私も海底を睨み続け中国軍の潜水艦にも備えている。
暫くすると艦隊通信がまた聞こえてきたのである。
内容は凶報である。そうルーズベルトの機関室に大量の水が入り込み、同艦の機関員は壊滅、航行は完全に不能。発電装置も全て水に浸かったとの報告が入った。
沈没は確定だな・・・・・・いくら米海軍の応急能力をもってしてもこのレベルの損傷を被れば、持つまい・・・・・・
私は各艦に対してすぐにある命令を下した。
「各艦!!彼女の乗員収容のみに専念し曳航は断念せよ!」
司令部も曳航は断念していたし、何より同艦のブリッジスタッフはほとんど壊滅していたし、彼女の意識自体、すでに朦朧状態にあった。
「み・・・・・・みんな・・・・・はやく逃げて・・・・・・」
彼女がそう言った次の瞬間、海水が雪崩れ込んだ水圧で彼女の船体の水密区画を破られ、浸水は彼女を少しずつ傾斜させ、刻一刻と海中へと誘おうとしていた。
2021年5月24日9時25分、DDG-80ルーズベルトは中国軍の攻撃により撃沈され、この戦いで沈んだ最後の日米豪軍艦となったのである。
私と彼女は馬が合わず、非常に仲が悪かったが、戦士の誇りと共に沈んだ彼女に対して敬礼して見送ったのである・・・・・・
まぁ、それはおいといて、対艦攻撃部隊はその後、基地へ帰還したものの次回の空襲で殆どの航空機を喪失し、中国軍はマニラ上空の制空権を喪失した。
2021年5月19日、遂に日米豪軍はマニラ市へ上陸を開始したのである。
輸送艦大隅艦橋天蓋
「私がⅤ-22とCH-47で空挺隊や歩兵連隊を運ぶから、大隅さんは陸軍の物資を地上に揚陸させといてね!」
そう言うのは瑞鳳さんだ、彼女は私と違いLPH扱いでドックは無い。
「OK、わかったわ・・・・・・それにしても陸軍のみなさんは本当に張り切ってるわね・・・・・・」
私がそう言うと瑞鳳さんもそれに頷き、陸軍の部隊が乗ったⅤ-22やCH-47が彼女から飛び立ち、私の上空を通過し、その次の瞬間には船尾から戦車を搭載した揚陸艇が発進し、浜辺へと向かう。
フィリピン奪還作戦もいよいよ大詰目に差し掛かった事は間違いない。
でも中国人民解放陸軍は人海戦術が得意な上、数も多く、油断ならない相手である事は間違いない。さてこの作戦、上手くいくかしら・・・・・・
私がそう思っているうちにもマニラ市では中国軍が最後の抵抗を開始する。
どうなるのかしらね・・・・・・




