考え事
あの噂を聞いてから、朱音はその噂の事ばかり考えていた。朱音は昔から考え出すと周りが見えなくなってしまうため、ほとんど授業は上の空。昼休みもぼーっとしていて、魂が入っているのか心配になるほど。真子がマニアック過ぎて誰が聞いてもわからないような黒魔術の単語を話していても、いつものツッコミは無い。さすがに絢也達も心配はする。この前なんか、野球部のボールが頭に直撃するベタな漫画みたいな事も起きた。だけど、朱音は気付かなかったみたいにそのまま歩いて行ってしまった。そろそろ真面目にヤバイ。今度は事故るんじゃないか。危機を感じた3人は朱音に探りを入れる事にした。
「おい、朱音」
「…………」
「おい、」
「…………」
「…………」
朱音は相変わらず無反応。これに短気な絢也が耐えられる筈がない。
ブチッ
絢也がキレた。
「話し聞きやがれぇ!!!!!!」
バシッッ!!!!!!!!!!
「いったぁぁぁぁぁ!!!!!!」
絢也の一撃、朱音の脳天にヒットュ!!
「いったぁぁぁぁ、…な、何すんだよ絢也ぁ!!!!!」
「テメェが話聞かねえからだろ!なんだ、テメェの耳には耳せんでも入ってんのか!!抜けたか!!」
「耳せんなんざ入れた覚え無いわ!!まず根本的に女子の頭殴るなんてどうゆう神経してんだ!アタシが何をした!!」
「ああ、じゃあハッキリ言ってやろう、…テメェ、最近何考えてんだよ」
「…それは…別に、何も…」
絢也の質問に朱音は答えられなかった。絢也はさっきとはうってかわって真剣な表情をしていた。これは嘘をつけるような状況ではない。
「……えーっと…」
言いにくそうにぶつぶつ呟いている朱音に対し、絢也は何かに気づいたらしく盛大に溜め息をつくと教室を出て行った。
「…え、」
問い詰められると思ったのに絢也はあっさり帰って行ってしまった。その日から絢也は朱音にあまり話し掛けなくなった。真子や飛李寺は2人をどうにかしようとしていたが、うまくいかず。だが、朱音はわかっていた。絢也が何故自分と距離を置いたのか。絢也なりの気遣いだ。あれこれ問い詰めるより朱音が自ら打ち明けてくれる時を待つことにしたのだろう。
それから何日かたった休日、その日は朝から雨が降り続き、時折窓に雨が当たる。だいぶ激しく降っているようだ。そんな中朱音は家におり、テレビも付けず、何をするわけでもなく、ただ天井を見上げて居た。部屋の中は雨の音と時計の時を刻む音が何だか不気味に響いている。
「……はぁ…」
溜め息を1つ付くと、目を閉じ今までの出来事を整理していく。真子から聞いたあの噂…。あれが本当なら…。
「あああああああ!!もうわかんない!!」
勢い良く正面を向くと少し目眩がした。いくら考えてもありえない。在るわけが無い。何度も自分に言い聞かせたが、心の何処かで信じている自分が居た。
その時だった、
ピーンポーン
突然、インターホンが部屋になり響いた。まるで見ていたかのようなタイミング。
「ん?誰だ?」
今日は誰かが訪ねる予定は無かったし、宅配便?いや、送ってくれる相手がそもそも居ない。ならば誰だ?こんな天気の悪い日に。
ピーンポーン
せかすようにまたインターホンが鳴った。
「はいはーい、今出まーす」
疑問を持ちつつ一応返事をし、早足で玄関に行く。ドアノブに手をかけ扉を開けた。その時の朱音はまだ知らなかった。この時、この扉を開けた事によって、朱音や絢也、真子に飛李寺の運命を大きく変えることになるとは。




