噂
入学式からはや1週間がたとうとしていた。この1週間朱音達は朱音達なりの日常をおくっていた。絢也は相変わらずケンカばかりだし、真子は新しい魔方陣を思い付いたの!、とか騒いでたり、飛李寺はこの1週間で買ったゲーム2本クリアしたりとか皆相変わらずだ。朱音も学校にも馴れクラスにもそれなりに友達も出来た。でもほとんどは絢也達と過ごす毎日で、楽しい毎日で、でも最近は毎晩のようにあの夢を見る。むしろ前より夢はリアルになってゆく。…まるで、何かの前触れのように…。
学校終わりの放課後、朱音達は駅前をふらつき、本屋や飛李寺の要望でゲームを買いに行ったり。今は、近くのミスドでドーナッツを食べて居た。
「それにしても飛李寺、よくそんなにゲーム買うお金あるね」
朱音がコーヒーを飲みながら苦笑いし話しかけると飛李寺はチョコファッションを食べる手を止め呟く様に答えた。
「……俺ん家、金『だけ』はあるから…」
「あぁ…、そ、そうだったね…な、何かゴメン…」
「…いや、大丈夫…」
何やら気まずい雰囲気がただよい始める、わけがない
「あ、絢也それ一個ちょーだい!」
「あぁ!何かってに取ってんだ、返しやがれぇ!!」
「へへーん、パク!」
「ああああああ!」
気まずさの欠片もない。
「はぁ、絢也さ、君はもう少しまわりの空気を読もうよ」
「空気?そんな事より朱音!真子が、真子が俺の!」「…子供か…」
「んだと!」
「まぁ、飛李寺の言う通りだよ絢也。だってさ男子校生が、くくくッ、D・ポップ一個でそこまで怒る?」
そう、絢也が食べていたのは丸いドーナッツが6つ入ったD・ポップ。こう見えて意外や意外に絢也は甘い物が好きなのだ。
朱音の言葉に絢也はわなわなと拳を震わせて、ぽつぽつと喋りだした。
「怒る?だと、怒るに決まってんだろぉ!!しかもだしかも、真子の奴最後の一個取りやがったんだぜ!?それもチョコのやつ!!」
「もぐもぐ、まーまー絢也、食べちゃったもんわ仕方ない仕方ない」
「真子!!お前が食わなきゃ良かっただけの話だろうがぁ!!…俺の最後の一個がぁ」
絢也はあまりのショックにしょげていて、とうの犯人の真子はケラケラ笑っている。けして悪気はない。真子はこう、なんというか不思議と言うか天然というか、明るすぎる。良い意味で。絢也の隣に座る飛李寺は隣の漫才みたいな風景にクスリともせず、買ったゲームのパッケージを見ている。朱音はコーヒーを飲みつつ漫才師みたいな2人を何とかなだめようとしていた。
「ほらほら絢也、アタシのポンデリングあげるから元気だせ」
「元気だせだせ!!」
「…いや、なんか、もういいんだ」
絢也は暗くなる一方だ。いつもの覇気はどこえやら、ここらで有名な不良がドーナッツ一個でここまで落ち込むなんて誰も思わないだろう。
「あーあ、絢也のネガティブスイッチ入っちゃった」
「ねー朱音さん、突然話変えていい?」
「は、はい!?」
あまりにも突然話を変えられた。突然にも程がありすぎる。…だが、これ以上絢也に話かけても無駄そうだし、飛李寺はいつの間にかゲーム始めたし、真子の話を聞くことにした。
「で、話遮ってまでしたい話って何?」
「えへへ、驚かないで聞いてね!最近聞いた噂なんだ~!」
「噂ねぇ…」
初めは興味などなく、聞き流すようにしていたが、真子が目をキラキラさせながら語り出した噂に朱音は目を見開き、自分の耳を疑った。
「えっとね、この街の何処かに、どんなに不可能で叶う筈の無い事でも叶えてくれるお店があるんだって!!」
「え、」
「スゴいよね!!…………朱音、さん?どーしたの?」
朱音は言葉を失った、というか頭の中が、目の前が真っ白になった。
(もしかしたら…)
頭の中は真っ白で今聞いた真子の言葉が赤黒い字になって頭の中を染めて行く。
(もしかしたら、もしそんな店が実在したら…)
「…あ、…か…ね………」
(いや、でもそんな事あるのか…)
「あ…かね……さん!」
(でもでも、本当にあるならアタシの…)
「朱音!!!!!」
「……っ!」
絢也が自分の名を呼ぶ声で我に帰った。顏をあげると真剣な顏をした絢也がこちらを見ていた。
「どうした」
「え、あ、いや」
頭が回らなくてなかなか言葉が出てこない。いつの間にか握って居た手にはくっきりと爪の跡が付いていた。頬を冷や汗が流れるのを感じた。
「どうしたの朱音さん?顏真っ青だよ!具合悪いの?大丈夫?」
「……朱音?」
真子が心配そうに朱音の顏を覗き込んできた。飛李寺もゲームをする手を止め朱音を見ていた。
「あ、あぁごめんごめん、大丈夫だよ大丈夫」
「ホント?」
「本当本当!」
笑顔で答えると真子は、そっか!なら良かった!と笑顔を見せ紅茶を飲み始めた。飛李寺も何事もなかったようにゲームに集中していた。絢也は何か言いたそうにしていたが、諦めたらしく舌打ちを1つするとそっぽを向いてしまった。
(良かった、バレてないみたい)
夢の事や過去の事故の事は3人には話して居ない。いや、話せないのだ。これは朱音の闇、誰にも知られたくない過去なのだ。話せる筈がない。
それから4人は店を出た。
「それじゃ、朱音さん、また明日ねー!」
「…んじゃ」
真子と飛李寺は家が近いので一緒に帰って行った。朱音や絢也とは家が少し離れていて、2人とも1人暮らしではない。…というか、いつも2人の時何話してんだろ?、と朱音はいつも思っている。2人は性格も正反対だし、何か共通点でもあるのだろうか。うーん、と朱音が考えていると、おい、と絢也の声がした。
「何してんだ、俺らも帰るぞ」
「あぁ、うん」
絢也とは家が近くというか住んでるアパートが同じで、絢也がそのアパートの2階に、朱音は4階に住んでいる。絢也は実家が近いくせに、高校から1人暮らしを始めた。最初は親に止められたらしいが、朱音が同じアパートに住むのを知ったら、しぶしぶ認めてくれたらしい。理由は、「朱音ちゃんが一緒なら大丈夫だろう」だ。朱音は何度か絢也の親に会った事があり、わりと信頼されている。
アパートは駅前から近くさして時間はかからない。アパートに付いて、朱音が3階に上がろうとしたとき、絢也に呼び止められた。
「おい」
「んー、なんだい絢也くん」
「お前、何か隠してねぇか?」
「え、」
「いや、さっき真子の話聞いてから様子変だからよ」
「……」
「あれだ、その…、なんだ、何か悩んでんならさ、そ、相談くらいならのるぜ」
「…くく、絢也もたまには良いこと言うね」
「あ゛ぁ!?たまにはって何だよ、たまにはって!!人が折角心配してやってんのによ!!」
「うん、ありがと」
「お、おぉ」
「そんじゃまた明日!」
「あ、あぁ、じゃあな」
朱音はそう告げると階段を登って行った。絢也は何だかあまりに朱音が素直に礼を言うのに疑問を感じつつ、部屋に入って行った。
「…ったく、何でそういうところは堪が良いのかなぁ…」
自宅に入るなり朱音はドアを背に座りこんでしまった。口元は笑っているのに、瞳からは今にも涙がこぼれそうで。立ち上がり、袖口で涙を拭き取り部屋に入った。あぁ、またあの夢を見るのかと思うと何だかまた憂鬱になって来た。だが睡魔には勝てず朱音はそのまま眠りについてしまった。
だがその日は珍しく、事故の夢は見なかった。
絢也くんが甘党なのは、ハッキリ言いましょう、俺の趣味です(笑)
飛李寺がいつもやってるゲームは、えーといろんなのやってますが、初音ミクとかもやってるといいな(笑)
次回新キャラ登場するかも!?




