197.黒きクジラの如き箱船、その名は『ブラックノア』
港に戻ってきた俺は、早速最初のビルドブロック『箱船ブロック』を召喚することにした。
海のほうに視線を向け召喚する場所を決めて、召喚キーを天にかざす。
「箱船ブロック召喚!」
俺が発動真言を唱えると、召喚キーが少し光って召喚先としてイメージした場所の空間がパリッと割れた。
その後、黒い巨大な物体が海上に現れた。
空間が割れたのは錯覚だったかのように、今は普通に戻っている。
それは良いのだが、港が大変なことになっている。
巨大な物体が海面に落ちたので、大波が押し寄せているのだ。
俺と仲間たちは、波に流されることはなかったがかなり濡れた。
そして、海上に浮かんでいる黒い巨大な物体は、一瞬クジラかと思う感じの縦長のものだった。
箱船というだけあって、ほぼ長方形だが角は丸みを帯びていて、後ろのほうは少し細くなっている。
一瞬クジラかと思ったが、やはりクジラをモデルにしているというか、クジラっぽいデザインの箱型の船という感じだ。
よくよく見ると前の部分には、目のようなパーツがあるからどう考えてもクジラっぽくしている。
『オートホース』に乗って、上空から全体を確認すると、後方の少し細めになっている先端には、尾びれのようなものがあるからやはりクジラをデザインしているのだろう。
海の中に沈んでいるが、胸びれもあるみたいだ。
それにしても、でかいな。
全長で500メートルくらいはあるんじゃないだろうか。
どうやって乗り込めばいいんだ……?
そう心の中で思った途端、箱船の側面の一部が開いて、橋のようなものが向かってきた。
これを渡っていけばいいようだ。
俺は、仲間たちとともに、その橋を渡って内部に入った。
箱船側面の扉を潜ると、広いスペースとなっており、その奥の扉を開けると広幅の通路があった。
通路の端側には、椅子が付いた小型の馬車のようなものがいくつか置いてある。
これに乗るのかと思って近づこうとした時、船内に突然音声が響いた。
「『召喚キー』保持者を確認し、マスター登録を完了いたしました。
私は、この箱船の運航を補助するサポートAIです。
まずはこの船の全貌をご確認ください」
鳴り響いたアナウンスが終わると、目の前の空間に映像が現れた。
そこには、この箱船の主な施設が表示されていた。
今の音声は、おそらくこの船に搭載されている超魔法AIなのだろう。
『大剣者』やメイド型ゴーレムのメイと違って、固い感じの口調に違和感はあるが、ほとんど人と変わらない『大剣者』とメイの方が例外と考えた方がいいんだと思う。
主な施設の概要が写し出されているが、一度では把握しきれない。
説明にも書かれていたが、内部は空間拡張術式で十倍に広がっているので、凄い広さなのだ。
移動するのも大変なことから、館内移動用の乗り物があって、それが目の前にある椅子の並んだ馬車のような乗り物らしい。
行き先を指定すると、そこまで運んでくれるようだ。
また、これとは別に主要な施設に転移で移動できる『ドアベーター』という装置もあるようだ。
転移門の箱船内限定版みたいなものだろう。
『ドアベーター』は船内にいくつか配置されていて、個室のようなブースに入って行き先を指定すると、その場所の『ドアベーター』転移できるらしい。
凄い機能だな。
この箱船のみならず、その内部に装備されている装置は、どれも凄いものばかりだ。
最初に内部に入った時にも思ったが、中の空間は非常に明るく、壁や天井に使われている素材も、普通に見かける事はない特別な素材のようだ。
光沢があって綺麗であるとともに、とても頑丈そうだ。
これらの素材自体、特殊で希少なものなのは間違いないだろう。
それから、巨大な船を操船するには、普通は何百人という人手が必要になるが、そこは魔法道具だけあって、このサポートAIが管理して運用できるので、人手は必要ないらしい。
操船や攻撃行動などもサポートAIに指示するだけで実行してくれるそうだ。
また、ある程度の方針を決めて、AIの判断で独自行動させることもできるようなので、かなり使い勝手が良い。
このように独立運用できる機能は本当にありがたいし、ある意味この機能が一番助かるかもしれない。
巨大で強力な船を手に入れたとしても、動かす人員が手配できなければ何の意味もないからな。
それを心配しなくていいというのは、本当に大きい。
ただ確認してみると、人がいたら個別に動かすことができる武装などもあるようで、ある程度の人員はいたほうがいいらしい。
より性能を引き出せるようだ。
まぁ最低限の運用はサポートAIだけでできるが、能力を最大限引き出すには、要所に人員がいた方がいいということなのだろう。
それから、箱船と呼んだりサポートAIと呼んだりするのは、少し面白みに欠けるので、この船に名前をつけることにした。
そして、それがすなわちサポートAIの名前ということにもなる。
名前は、『ブラックノア』にした。
この名前は、メイの提案によるところが大きい。
メイのメモリに……『箱船と言えばノア』……ノアという名前が縁起が良いというのがあったらしい。
いろんな種族が生き残れるという縁起物の名前だという情報が記録されていたのだそうだ。
なんか良さそうなので、それを採用することにした。
あと、ラッシュが黒くてクジラっぽいから黒クジラという名前がいいのではないかと提案してくれたので、そこから黒を採用して、『ブラックノア』という名前になったのだ。
今後俺たちの活動拠点となるであろう箱船の内部を、じっくりと確認したいところだが、まずはガチャで引き当てたものの確認を済ませることにした。
一旦、箱船『ブラックノア』を出て、一通りざっくりと確認してしまうことにする。
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