190.現れた侵略艦隊
「ヤマト様、一大事です! 海から他国の侵略です!
海上の警戒が十分でなかったために、気付くのがだいぶ遅れました。申し訳ありません。
既に、港から見えるほど近づいています」
俺の下に走り寄ってきた『御庭番衆』のハトリーが、片膝をつき俺に報告をあげた。
他国の侵略!?
魔物の次は、人が攻めてきたってことか……。
「一体どこの国が?」
「おそらく『キュウシュ連合国』でしょう。旗が掲げられているのが確認できました」
『キュウシュ連合国』!?
確かに、このハコネゼル領から一番近い国と言えば、南西方向にある『南宮島』の『キュウシュ連合国』だ。
「規模は?」
「まだはっきりとは分かりませんが、大型船、中型船、小型船、全て合わせれば、二百隻規模ではないかと」
「二百隻規模か……。という事は、人員規模で言ったらかなりの数になると言うことだな。二、三千人規模は確実だな……。
侵略をするには十分な人員とは言えないが、艦隊の規模としては大規模と言っていいだろう。
……ん? そんな規模の艦隊が魔物にも襲われずに、ここまでたどり着いたと言うのか?」
「はい。海の魔物のほとんどは連鎖暴走により、こちら側に来ていたと思われます」
「……それはそうだな。
ん……待てよ……と言う事は、連鎖暴走と連動しているのか?
もしかして、この連鎖暴走の目的は……この国への侵略か!?」
「はい。その可能性が高いかと。
タイミングが絶妙すぎますから」
「そう考える方が自然だな……。
そして、連鎖暴走を引き起こしたのが『青の賢人会』なのだから、『キュウシュ連合国』は『青の賢人会』に取り込まれている、もしくは協力関係にあるということか……?」
「はい、まだ遠目にしか確認できていませんが、艦隊はほとんど無傷なように見受けられました。
いくら近いと言っても、魔物の被害を受けずにここまでたどり着くのは通常は不可能かと。
それが可能となっている時点で、連鎖暴走と連動しているのは間違いないと思われます」
「そうだな……連鎖暴走で大打撃を受けているところを、間髪入れずに侵略してしまう。そういう作戦なのだろう。
入念に準備した侵略ということだな。
……まぁ大体の状況はわかった。
うだうだ考えていてもしょうがない、迎撃にあたろう」
「はは。ただ……ハコネゼル領の海兵隊が所持していた船は、ほとんどが航行不能です。いかがいたしますか?」
そうだったな。俺の『献身』スキルでの修復もまだ実施していないし、沈んだ船の引き上げもやっていないからな。
まぁ初めから船で戦うつもりはないが。
「そうだな……港で迎え撃つというのが今できる対処にはなるが……俺に考えがある」
「考えとは?」
「上陸する前に、全ての船を沈めてしまう」
「は?」
冷静なハトリーが、一瞬惚けたような顔をした。
「奴らにまだ攻撃されたわけではないが、艦隊でここまで接近した時点で、確実に領海侵犯と判断していいだろう。侵略行為に対し、こちらから攻撃しても全く問題ないはずだ」
「それはその通りです。何か事情があって寄港する、もしくは援軍のようなかたちで来るならば、先触れを出すのが常識ですからね」
「だから、俺の仲間に攻撃してもらうことにするよ。
もっともその仲間は……人では無いから、奴らは迎撃されたというよりも、海で魔物に襲われたとしか認識しない可能性もあるが」
「と言う事は……」
ハトリーが少しニヤついた。
勘の良い彼女だけに、察しがついたようだ。
「ああそうだ。二体のクラーケンに大暴れしてもらうつもりだ」
俺も、ニヤッと笑った。
俺は、ハトリー、そしてエドガー将軍、『水竜騎士団』のアシノ団長に港付近に部隊を集結させ、迎撃の準備をするように指示をした。
実際には迎撃というよりは、敵兵を捕縛するための準備だ。
侵略行為を仕掛けてきた以上、情けをかけるつもりはないが、情報を得るために幹部クラスの兵士は、何人か生け捕りにするつもりだ。
そんな指示を出し終えた俺は、仲間たちとともに港へ向け走り出した。
◇
港につくと、確かにすでに船影が肉眼でも見える距離にいた。
『望遠』スキルを発動すると、明確に全貌が確認できた。
確かに大規模艦隊と言っていいだろう。
どう考えても侵略行為で、魔物の連鎖暴走被害の救援に来たようには見えない。
ただ後で救援に来たのに攻撃されたなどと難癖をつけられてもかなわないので、一応の意思確認はすることにした。
俺は、『オートホース』に騎乗し空へ舞い上がる。
しばらく行くと、船団に近づき、『拡声』スキルを使った。
「お前たちの目的は何だ!? 正当な目的があるなら先触れを出すのが通例だ。返答はいかに!?」
突然空飛ぶ馬に乗って現れた俺に、先頭の船団の者たちは驚いて慌てていたが、指揮官らしき者の指示で、俺に対して一斉に矢を放ってきた。
どうやら問答無用らしい。
これは明確な戦闘行為、侵略行為だな。
これで俺も心おきなく対処できる。
俺は一旦港まで戻り、二つの封印具を解放する。
『ハーミットクラーケン』と『スクイードクラーケン』の二体を開放顕現させたのだ。
前はこの二体で激しい戦いを繰り広げたが、今は味方だ。
こんなに心強い仲間はいない。
そして、二体に指示を出す。
敵艦隊の撃沈だ。
ただこの大艦隊……破壊するだけというのは、もったいない。
そっくり俺のものにしてしまおう。
粉々になっていなければ、『献身』スキルで修復できるから、最小限の破壊で沈没させるように指示を出した。
さぁ侵略艦隊は、どのぐらいもつかな……?
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