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189.一息つけると思ったところで……

 ハコネゼル領は、総督府直轄領の臨界領となり、『水竜騎士団』は名前もそのままに存続させることにした。


 正確には、『水竜騎士団』を含めたハコネゼル領軍の全部隊は、臨界領の領軍としてそのまま存続させたのだ。


 領軍を構成するのは、領内の各市町の治安維持に当たる衛兵隊、有事の際の武力部隊としての領軍正規隊、船を有し海賊や海の魔物の討伐にあたる海兵隊である。

 この頂点であり、特別部隊とも言えるのが『水竜騎士団』ということになる。


 ちなみにハコネゼル領の海兵隊は、百五十人規模で、中型船を三隻、小型船を九隻所有していた。


 普段は領都と二カ所の海に面した都市の合計三カ所に分散して駐留しているのだが、今回はオダワールの指示で領都に集まっていたそうだ。

 そのために、大半の船が連鎖暴走(スタンピード)によって破壊されてしまっていた。


 海兵隊の者たちも、衛兵と同様に前線で魔物の討伐にあたり、奮戦してくれていた。

 その為に、かなりの人的損害も出ている。


 船については沈没してしまっているものも多いが、後でクラーケンたちに指示して引き上げようと思っている。


 そして、俺の『献身』スキルを使って修復するつもりだ。


 この海兵隊員は皆操船技術を取得しているが、海兵隊から『水竜騎士団』に選抜される者もいるので、『水竜騎士団』としても船を運用することができるそうだ。

 まぁ船を使っての海上戦闘もできなければ水竜の名が泣くから、当然と言えば当然だが。


 そういえば『水竜騎士団』を存続させることになったので、王国軍としては騎士団を二つ抱えることになった。


 もともと王国軍にはは、『王国聖騎士団』があるのである。


 だが『王国聖騎士団』は生きて残っている者が少ないので、現時点では騎士団としてまだ機能できていない。

 魔王ジャスティスの襲撃により王城にいた多くの兵士を失ったので、まずは王国軍全体の再編が先なのだ。

 それゆえに、『王国聖騎士団』の立て直しがまだできていない状態なのである。


 これから兵士の中から優秀な者を選出して再建する予定だ。


 そこで、これを機に名前を『聖竜騎士団』に改名することにした。

 『水竜騎士団』とともに『カントール王国』を支える二体の大きな竜になってもらいたい。

 この改名は、単に俺の閃きだが、なかなかいいんじゃないだろうか。


 ちなみに、新たな『聖竜騎士団』の団長には、前に北端魔境にジャスティスとともにやって来た特務中隊のランドル隊長に就任してもらうことになっている。


 彼は、今まで特務中隊として特殊な任務をこなしてきて経験も豊富なので、良い騎士団長になってくれるはずだ。


 俺の本国である『ヤマダイ国』には、騎士団どころか軍と呼べるものもない。

 まぁ守備隊は作ってあるから、最低限の防衛戦略があるんだが。


 改めて考えると、なかなかアンバランスである。

 属国である『カントール王国』に比べて、『ヤマダイ国』は未だまともな国の形すらできていないからな。


 まぁ人員規模も少ないし、一から国を作る楽しみをしっかり味わいたいから焦る気持ちは全くないが。


 『ヤマダイ国』で国を一から作る楽しみを、『カントール王国』で疲弊した国を再建する楽しみを味わうというのもいいかもしれない。

 問題は楽しめるかどうかだが……。

 実際はかなり大変で、普通に考えたら楽しむ余裕なんてない状況だからな。


 それでも俺には優秀な仲間たちもいるし、サポートしてくれる人たちもいる。


 みんなで当たれば、なんとかなるだろう。


 やはり、人材をうまく活用することがポイントだ。


 俺一人でできることなんてたかが知れているし、優秀な仲間たちだって万能ではない。

 いろんな人の力を結集することが大事なのだと改めて思う。


 トップに立つ俺がするべき仕事は、適材適所、それが一番かもしれないな。



 大量の海の魔物の死体については、『大剣者』の『亜空間収納』で回収してしまった。

 容量が事実上無限なので全く問題ない。ほんとに便利だ。

 大小の魔物を合わせて約二千体もいた。


 改めて考えると、よくこれだけの被害で抑えられたと思う。


 この魔物たちはすべて食料にできるので、当面食べる物に困らないというのがせめてもの救いだ。


 建物被害がかなり出ているので、完全復興には時間がかかるだろう。


 食事の問題は魔物を使えば解決するが、住むところについては早急に対策を打たなければならない。


 とりあえずは、仮設の住宅を建てて住む場所を提供することにした。


 そして、もし移住を希望する者は『ヤマダイ国』への移住を認めることにし、その案内をすることにした。


 みんな今まで住んでいた土地に愛着があるだろうし、あまり希望者はいないのではないかとも思ったが、仲間たちからはちょっと違った意見が出た。


 むしろ希望者が多くて、スムーズな移住をさせるのが大変になるかもしれないという意見まで出た。


 いずれにしろ、かなりの移住者が見込めるというのは俺以外の皆の共通見解となった。

 クラウディアさん曰く、「あんな奇跡を目の当たりにしたら、みんなヤマト君の本拠地である『ヤマダイ国』に移住したいと思っちゃうわよ」とのことだ。


 俺が起こした奇跡と言われても、最初は何のことかわからなかった。


 それは……救護所で行った超広範囲の回復の事だった。


 確かに冷静になって考えてみると、あれは英雄譚などに出てくる聖女が起こす奇跡そのものだったからな。

 自分でびっくりしたくらいだし。


 それを考えると、確かに移住したいという気持ちになるかもしれない。


 俺たちが王都から駆けつけて、あれだけの数を魔物を瞬く間に倒したことも領民は知っているから、尚更かもしれない。


 俺としては、属国として庇護下に置いた以上守るのは当然のことなのだが、深く感謝してくれているようだ。



 ハコネゼル領の状況確認と今後の方針も決まり、本当に一息つけるなと思ったところで……『御庭番衆』のハトリーが走り寄って来た。


 ……もはや嫌な予感しかしない。

 一息つけると油断したのがまずかったのか……いや、とにかく聞こう。


 今度はなんだ……?

 もはや驚かないぞ……。



読んでいただき、誠にありがとうございます。


ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、ありがとうございます。

誤字報告も助かっています。ありがとうございます。


次話の投稿は、明後日の予定です。

少し遅れる可能性もありますが、その時はごめんなさい。


よろしくお願いします。


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