134.名付けと新たなハイクラス
俺は、名前をつけてほしいという『ハーピー』の族長の頼みに応えてしまった。
だが、よく考えたら名前をつけるっていうのは、意外と難しい。
今のマザという名でいいような気がするが……マザという名前を俺が新たに付けて、上書きしてたらダメなんだろうか?
……まぁダメか。
そもそも、上書きできてるかどうかわからないし。
うーん、真面目に考えないと……
『ハーピー』の族長……リーダー……女王のような存在……クイーン……クインなんか、どうだろう?
「例えば……クインなんてどうかな?」
「クイン……素晴らしい響き。ありがとうございます」
族長はそう言うと、改めて跪いた。
気に入ってくれたようで良かった。
そこで俺は、頼まれた通り『光魔法——光の洗礼』をかけた。
実際にどの程度意味があるかわからないが、そう望まれたし、浄化することによって、何らかの良い効果もあるかもしれないと考えたのだ。
すると族長は、「はぁん」という色っぽい声を漏らし、体を震わせた。
「ヤマト様、これはやはり凄いです!
通常時でも使っていただくと、何か身も心も洗われるようです。
そして頭が、思考が、すっきりします。
今にして思えば、以前は意識に少し靄がかかっていたようにさえ感じます」
族長はそう言うと、恍惚の表情になった。
色っぽすぎて、俺的にはちょっと微妙だ。
まぁ喜んでくれているから、いいけど。
そのまま名前をつけてしまうことにした。
人に名前をつけるなんて、とても神聖なことだ。
急にそんな気持ちが、芽生えてきた。
深呼吸をして精神を統一すると、自然に右手が前に出た。
跪いている族長の頭に、手を翳す。
「命名、クイン」
『命名』スキルを持っているわけではないが、いかにも持っている風にやってしまった。
なぜか自然に、言葉が出てしまったのだ。
すると、ほんの一瞬、族長が光ったような気がした。
「あぁ、これは……。
ヤマト様、自分のステータスを確認しました。
名前が上書きされています。ありがたき幸せです」
おお、上書きできたのか!
「それは良かった」
「はい。そして、体に力が漲っています。
やはり力のあるお方に名前をつけていただけると、良い効果があるのは間違いないようです。
まだ自分の変化を完全に把握したわけではありませんが、少なくとも今レベルが1つ上がりました!
レベル60に到達いたしました!」
クインは喜びに打ち震えている。
名前をつけたことによる効果は、いろいろなものがあるようだが、クインの場合は、レベルが1つ上がったようだ。
まぁ元々上がる寸前だっただけかもしれないが。
さっき『アナライズ』したときに見たが、彼女は、レベル59だったのだ。
それでも名前をつけただけで、いくばくかの経験値が入り、レベルアップの後押しにはなったわけだ。
「これは……」
クインが驚きの声を上げ、固まっている。
「どうかした?」
「は、はい……レベル60になったことにより、クラスチェンジが発生しました」
「クラスチェンジというと、ハイクラスにクラスアップできるってこと?」
「そうです。ただ驚いたのは……言い伝えにない新たなクラスが表示されているからです……」
驚きを引きずりつつ、少し呆然としながらそんなことを言ったので、詳しく尋ねてみた。
それによると、『オリジン』と呼ばれる特殊な魔物は、そのほとんどがレベル60を超えると、ハイクラスにチェンジできるらしい。
ただ『オリジン』の中でも、もっと低いレベルでハイクラスにチェンジする種族もあれば、クラスチェンジが発生しない種族もあるらしい。
そして『ハーピー族』に伝わっているハイクラスは、四つあり、特殊な事情がない限りは、その四つの中のどれかを任意に選べるのだそうだ。
これは、『ハーピー族』特有とまではいかないが、かなり珍しいことらしい。
通常は、クラスチェンジの先は一つの場合が多く、複数あるとしても、二つくらいで、四つというのは他には無いのではないかとの事だ。
そして、伝えられている『ハーピー族』のハイクラスは、『アエローハーピー』『オキュペテーハーピー』『ケライノーハーピー』『ポダルゲーハーピー』の四つなのだと言う。
『アエローハーピー』は、風魔法特化型ハーピー、『オキュペテーハーピー』は、高速飛行特化型ハーピー、『ケライノーハーピー』は、雷魔法特化型ハーピー、『ポダルゲーハーピー』は、地上高速移動特化型ハーピーという感じで、大体の特性が決まっているらしい。
そこまでは良いのだが、今クインが確認したところによると、この四つに加えて五つ目のクラスが表示されていると言うのだ。
それが言い伝えにもない、見たこともないクラスで、驚いたようだ。
五つ目のハイクラスは、『ハッピーハーピー』というらしい。
なんとも幸せな気分になるクラスだが……なぜそんなクラスが突然現れたのか?
クラスチェンジ先の簡単な特徴が表示されるらしく、それによると『ハッピーハーピー』は、手が生えて、より人型に近い構造に変化するのだそうだ。
武器等が使えるオールラウンダー型ハーピーと表示されているらしい。
俺にそんな説明をしたことで、落ち着きを取り戻したクインは、この新たなハイクラスにチェンジしても良いかと、許可を求めてきた。
だが、俺に許可なんて求める必要は無い。
自分の好きなクラスにチェンジして構わないと伝えた。
すると、早速クラスチェンジすると言う。
種族のクラスチェンジに立ち会えるなんて事は、滅多にないことだ。
俺としても、嬉しいし、少し興奮している。
さて、どうなるのか……
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