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132.スライム聖女の使命

 私は、スライム聖女。

 偶然通り掛かったこの場所で、『ハーピー』の少女を助けるために戦うことになった中級悪魔は、なんとか倒した。


 結構大変だった。

 中級悪魔は、最後の力を振り絞って何か術のような、念のようなものを飛ばしていたけど、大丈夫だろうか?

 まぁその後、すぐに倒したから多分大丈夫だろう。


 私は、『スライム聖女』と呼ばれているにもかかわらず、今はスライムを一体も連れていない。

 もし私の仲間のスライムたちがいたら、たとえ中級悪魔でも、楽勝だったのに。


 それほどまでに私のスライムたちは強いのだが、みんなスライムの凄さをわかっていない。


 ゴミなどを綺麗にしてくれる有益な生物というくらいの印象で、強いなんて思ってる人はほとんどいない。


 トレントなどと共に『始源の中庸生物』と言われる特別な生物という認識はあるけど、成長すると魔物よりはるかに強いということを知っている人はほとんどいない。

 スライムは成長すると、凄いのだ。


 でもまぁ今はいないし、嘆いてもしょうがない。

 一人で強敵と戦うのが久しぶりで、結構きつかったから、つい愚痴りたくなってしまった。


 私が、スライムたちを連れず一人ぼっちでこの島国まで来ているのには、理由がある。


 それは、『月霊神(げつれいしん) アルテミス』様と『月曜神(つきようしん) ツクス』様から啓示を受けてしまったから。


 二柱の神様からの啓示は、驚くべき内容だった。


 私には、役目があるのだという。


 将来、この世界の存亡をかけた戦いがあり、その為に、今を守ってほしいというのだ。

 今を守る力になってほしいと言われた。


 神様の考えを推し量ることはできないが、今を守らないと将来がないなら、今の戦いがまさにこの世界の存亡を賭けた戦いなのではないだろうか?

 神様が言っている意味が、いまいちよくわからない。

 まぁ深く考えてもしょうがないんだけど。


 私のそんな内なる疑問も神様にはお見通しだったらしく、少し回答めいたものも言ってくれた。


 未来への大きな分岐点の一つが今であり、かつこの『ジパン群島』が、この星全体の縮図であって、『ジパン群島』のあり方が、この星全体のあり方や将来に影響を及ぼすのだそうだ。


 はっきり言って、この説明もよくわからなかったけど。


 とにかく、これから『ジパン群島』で起きることへの対処を、私なりにすればいいみたい。

 それが今の人々を守ることであり、ひいては将来の人々を守ることに繋がると言うのだから。

 うだうだ考えずに、やることにした。


 今まで『アルテミナ公国』でやってきた事と一緒だ。

 世界どころか、一国の体制すら変えることはできないが、少なくとも目の前の不幸な人々を救うことはできる。

 その程度の力は持っている。

 だから、思いのままに目の前の人を助ける。それだけだった。


 ここでも、そう思って行動すればいい。

 だから、神様に快諾した。

 快諾したと言っても、そもそも神様の頼みなんて断れるわけがないんだけど。


 ただ、承諾した後によくよく聞くと、神様から指示された内容は、私にとってはかなり酷いものだった。


 なぜなら、私の可愛い大事なスライムたちを連れて行くなというのだ。


 しかも、『ジパン群島』には、今はスライムがいないのだと言う。


 今いるスライムたちと別れることも耐えられなければ、スライムがいない場所で活動するなんて、何の縛りプレイよ!

 スライムのいない生活なんて、私には考えられない。


 スライムを引き連れず、スライムのいない場所で活動する『スライム聖女』なんて、何の冗談なの!


 思わず啓示を受けている最中なのに、泣いてしまった。


 ただ話には、続きがあった。


 スライムの亜種のような生物がいて、その生物を仲間にして、力をつけさせてほしいと言うのだ。


 しかも、その生物については、心当たりがあった。


 私の師匠であるスライム博士が、何かの資料で見たというスライムの亜種のような生物の話をしてくれたことがあったのだ。


 スライムと魚の中間のような生物で、通常の円形・楕円形のスライムとは違って、雫のような形になっていて、しかもちっちゃな魚のしっぽのようなものと前足がついてる生物である。


 想像しただけで可愛くて、強く印象に残っていたのだ。

 なんとその幻の生物が、この『ジパン群島』にいるというのだ。


 落ち込んで泣いていた私だが、一気に興味をそそられ、やる気になってしまった。


 それ以外にも、いくつか私にやってほしいことを指示されたけど、それも含めて承諾した。


 引き受ける以外の選択肢なんて、無いしね。


 『アルテミナ公国』は、多分私がいなくても、もう大丈夫だろう。


 悪い貴族もやっつけちゃったし、魔物の領域でもかなり魔物を狩って間引きした状態になっているから、そうそう魔物に襲われることもないだろう。


 何よりもあの国には迷宮があって、冒険者たちがいる。

 私の知り合いたちもいるし、大きな問題が起きる事はもうないと思う。


 そして、聖女なんて持ち上げられて有名になっちゃったから、目立ちすぎて生活しづらいというのもあったので、そういう意味では、ちょうど良かったかもしれない。


 そんなわけで、この『ジパン群島』に来たわけだが、まず最初の目標は、スライムの亜種とも言える生物を見つけることだ。


 神様たちに指示された内容には、『聖者』の『称号』を持つ者と会って、力を貸すこともあるが、それは順番としては後ろの方だ。


 それゆえに、この広大な魔物の領域に、どうも『聖者』の『称号』を持つ者がいるようだが、今日のところは立ち去ろう。


 挨拶することも考えたが、今はまだ時期ではないだろう。

 いずれ会う日を楽しみに、立ち去ることにした。


 ただ悪魔の出現については、おそらく気づいているだろうから、倒したという事だけは伝えてあげようと思う。


 私は、木の立て札を作り、簡単なメッセージを残した。




 

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[一言] 聖女って普通の人は居ないんだろうか?。
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