表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

126/228

126.回復だけじゃなく、攻撃もしたいナナリー

 この戦場には、もう一人、槍の使い手がいた。


 『十神教会』神殿騎士サザリーである。


 彼女は、『神託の巫女』ナナリーと共に、ヤマトたちに同行していたのだ。


 護衛対象で妹でもあるナナリーが、『ヤマダイ国』の危機に少しでも力になりたいと同行を希望したために、共に来ているのである。


 サザリーは、もともと槍の使い手である。


 それを知ったヤマトから、『魔槍 トンボギリー』を託されていた。


「たぁぁぁぁ!」


 魔力の赤い残光を引きながら放たれた魔槍の一撃は、熊魔物の首を宙に飛ばした。


 『魔槍 トンボギリー』……ヤマトが『加護ガチャ』によって手に入れた『究極級(アルティメット)』階級の『魔法の武器(マジックウェポン)』である。


 サザリーは、長銃を構えるかのように槍を持ち直すと、その穂先にイメージを集中する。


「トンボ斬り!」


 高まった集中とともに発せられた発動真言(コマンドワード)』により、穂先と柄の接続部分が少し膨らむ。

 そして、塗装がはがれるように、八枚の薄い物体が落ち、宙に浮く。


 それは一瞬にして、羽根を広げたトンボの形に変化する。


 次の瞬間には、標的に向かい、一気に射出された。


 トンボ型の手裏剣は、乱舞するように小刻みに動きながら、もう一体の熊魔物に襲いかかる。


 ——ザン、ザン、ザン、ザン

 ——ザン、ザン、ザン、ザン


 分厚い熊魔物の体をあっさり貫通し、八つの穴を開け、瞬殺した。


 遠距離攻撃においても、『究極級(アルティメット)』階級らしい見事な威力である。



 広範囲に広がった戦場を駆け巡る一陣の風……それは、クマ型ゴーレム『クマゴロウ』に騎乗した『神託の巫女』ナナリーだ。


 『クマゴロウ』四体のうち、一体をナナリーが操作していた。

 残りの三体は、『大剣者』の操作で迎撃に当たっているが、一体はナナリーが使い、戦場での回復に当たっていたのだ。


 ヤマトは当初、四体とも迎撃に当てるつもりで『大剣者』に託したのだが、負傷者が予想よりも多いという報告を受け、修正したのだった。


 ただナナリーは、『クマゴロウ』を使うのは初めてなので、『大剣者』もサポートしている。

 実際は、サポートしているというよりは、そのまま『大剣者』が操作している。

 『クマゴロウ』に指示を出すナナリーの声を聞いて、『大剣者』が動かしているのである。


 そんな状態なので、『ウルフユニットモード』を起動し、開いた背のコックピットに騎乗しているナナリーは、スムーズに、ハイスピードに動けている。


 広範囲を移動して、守備隊の兵士たち、『ノッカー族』の戦士たち、『河童族』の戦士たちを瞬く間に回復していったのだ。


 内蔵されていた五体のウルフユニットは、『クマゴロウ』を守るように並走し、時折襲ってくる魔物を排除していた。


 負傷戦士たちの回復により、更に形勢は好転していった。


 そしてナナリーは、他の女子メンバー同様、内蔵されている『ベルセルクコスチューム』を気に入り、装着もしていた。


 『ベルセルクコスチューム』は、フード付きローブで、軽くて動きやすいにもかかわらず、高い防御力を持っている優れた装備である。


 ただ、ローブには、全体にクマの毛のようなものが付いていて、クマの毛皮の外見である。

 フードに至っては、クマの頭のデザインになっているのだ。

 クマの口から下がなく、そこから自分の顔が出るようになっている。


 ヤマトが英雄譚などに登場する伝説の『着ぐるみアーマー』かと少し感動したものの、その見た目から、戦いで使う気にはなれないと、ゲンナリしていた装備でもあった。


 ただ、女子メンバーは可愛いと言って喜んでいて、みんな一度は装着する。

 それでも、魔境探索の時などに実際に装着した者は、一人もいなかった。


 実戦で装備したのは、ナナリーが初めてである。

 ナナリーは、それほどに気に入っていたのである。


 まぁ実際には、初めて騎乗した『クマゴロウ』で、装着システムが発動して、それに従っただけなのだが。

 だが、本当に気に入っていて、喜び勇んで装着中なのである。


 サイズ調整機能があり、小さなナナリーでも、違和感なくフィットしている。

 可憐な少女が、クマの着ぐるみを着て、クマ型ゴーレムに騎乗して、戦場を駆け回る姿は、普通なら違和感しかない。

 だが、なぜかナナリーは、戦っている戦士たちに可愛いと思わせるような、抜群の着こなしを見せていたのだ。


 彼女は戦闘要員ではないので、普通ならここで活躍も終わりなのだが、一通り回復を終えたことを確認すると、巨大熊魔物がいる前線に向けて加速した。


「もう熊魔物が、ほとんど残っていない。急がなきゃ! せっかく借りた魔法道具が試せなくなっちゃう!」


 『クマゴロウ』の加速で、前線に到着したナナリーは、サザリーに声をかける。


「それを私にやらせて! 王都での戦いは、回復に専念してたから試せなかった。今試したいの!」


 驚き、振り返ったサザリーだったが、何かを諦めたように、一瞬上を見て、動きを止めた。


「気をつけるのだぞ」


「わかった。ありがとう」


 地面に降り立ったナナリーが手にしたのは、先程までの回復魔法を補助するための杖ではなく、少し変わった形状の杖だった。


 ナナリーの身長ほどもある長い杖の頭頂部には、人の顔を模した人形が付いている。


「行くわよ、こけし落とし!」


 ナナリーの発動真言(コマンドワード)とともに、杖の頭頂部にセットされた顔と胴体だけの人形が、長く伸びながら巨大化する。


 そして、歪に変形した杖を、ナナリーは事もなげに振り下ろす——


 ——バゴーンッ


 標的にされた熊魔物は、突然現れた巨大な人形に押しつぶされた。


「わー、すごい! 全然重くならない。あんなに大きくなったのに、軽く振り降ろせた! 

 そしてやっぱり、呪いも発動していないみたい。

 私なら、使いこなせそう。

 伯爵の期待に、応えられそうだわ」


 ナナリーは、魔物を倒した喜びとともに、その身に何も起きてないことを確認し、喜びの声を上げた。





読んでいただき、誠にありがとうございます。


ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、ありがとうございます。


次話の投稿は、明日の予定です。


もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。

励みになります。


ブックマークも、よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ