123.ノッカーのハードノック
「来たぞ! 矢を放て!」
『ノッカー族』のガガン族長の指示で、一斉に矢が放たれた。
ネズミ魔物やウサギ魔物は何とか倒すことができても、イノシシの魔物など大型の魔物は、一発では倒せなかった。
多少勢いを殺すことはできても、そのまま突っ込んで来たので、族長の予想通り、乱戦状態に突入した。
盾を構えて、防衛線を維持していた者たちも、止めきることができず、何人も弾き飛ばされてしまっていた。
『ノッカー』族の戦士たちは、勇ましく果敢に戦っている。
だが、普段なら楽勝なレベルの低い魔物も、暴走状態で暴れ狂っているために、瞬殺するのは難しかった。
ラッカラン隊長率いる人族の戦士たちも、苦戦し、怪我人が続出していた。
そして、後から次々に押し寄せて来る魔物たちは、まさに数の暴力そのもので、厳しい状況に追い込まれていった。
だがそんな絶望的になりつつあった戦場に、別方向から地響きを上げて迫る一団があった。
その地響きに気づいたラッカランは、新たな魔物の集団かと絶望しかけたが、やって来たのは魔物ではなかった。
地響きを上げていたのは、騎乗生物『カッパル』だった。
そう、現れたのは『河童族』の戦士たちだ。
異変を察知し、応援に駆けつけたのだ。
精鋭五十人は、ヤマトとともに旅立っているが、残りの戦士のほとんどを動員して駆けつけたのだった。
先頭を駆ける族長のドキアが、指示を出し、戦士たちが二手に分かれる。
一つは『ノッカー族』と人族の救援のために。
もう一つは、後方から次々と現れている魔物の集団の足止めの為に向かったのだ。
戦闘態勢を立て直すためである。
戦場に突入した『河童族』の戦士たちは、ばったばったと魔物を倒していく。
『カッパル』に騎乗しながら、槍を使ったり、矢を放ったり、抜群の機動力なのである。
そして、『カッパル』も爆走しつつ、放水で魔物を吹き飛ばしている。
『カッパル』と一体となって戦う『河童族』の戦士たち約百名は、苦境に立たされていた戦場を、一気に好転させた。
「ワシは、ヤマト様に従う『河童族』の族長ドキアだ。
遅れてすまない。
我らが倒すから、今のうちに態勢を立て直してくれ!」
「来てくれたのか、ドキアよ」
素早く寄って来た『ノッカー族』の族長ガガンが声をかける。
「ああ、当然だ。
我ら『河童族』は、ヤマト様に忠誠を誓ったからな。
それにしても、まさかお前たちが救援に来ているとはな」
「ああ、ワシらもヤマト殿に恩があってな。それを返しているところだ」
『河童族』と『ノッカー族』は、もともと交流があり、二人の族長は親交が深かったのである。
二人はお互いに頷き合うと、迫りくる魔物に武器を向けた。
『河童族』の族長は槍で、『ノッカー族』の族長はツルハシで魔物を貫いた。
戦場での態勢が、ある程度持ち直したと思われた時、新たな脅威が迫って来た。
——バゴォーン
——バゴォーン
轟音とともに、地面に大穴が空いた。
上空から、巨大な岩が落とされたのだ。
「あれは!? 皆の者、気を付けるのじゃ! 上からの攻撃に気をつけるのじゃ!」
『河童族』の族長が、大声を張り上げる。
その声を耳にした者たちが、空を見上げると、そこには巨大な鳥の群れが迫っていた。
だが実際は、鳥ではなく人型の魔物であった。
——バゴォーン
——バゴォーン
人型の体に鳥の翼の腕を持つ魔物は、鳥の足で掴んだ岩石を、次々に戦場に投下していった。
魔物も人も関係なしの無差別攻撃である。
「ハーピーめ、なんでこんなことを? 空からの無差別攻撃などされたら分が悪い……」
『河童族』の族長が吐き捨てると、
「まったくじゃ! それにしても、なぜあやつら襲ってくるのじゃ?」
『ノッカー族』の族長も追随する。
「ハーピーどもは、自分たちの領域から出る事は無いはずだが……。
まぁ今考えても、仕方ない。
ガガンよ、お主たちは上空の敵を攻撃するのも得意じゃろう?
地上の魔物は我らが担当する。
上のハーピーどもを頼む!」
「ああ、わかった。我ら『ノッカー』の『種族固有スキル』をお見舞いしてやるとするわい」
二人の族長は、息の合った連携で、役割分担をし、部族の戦士たちに伝達した。
『河童族』の戦士たちは、そのまま地上の魔物の対処をし、『ノッカー族』の戦士たちは、少し後方に下がって上空のハーピーを攻撃するのである。
「ではいくぞ、皆の者!」
「「「はは」」」
『ノッカー族』のガガン族長の指示に、戦士たちが応える。
「ツルハシ変形! バットモード!」
「「「ラジャー」」」
族長の指示に従い、ツルハシのブレードを内側に折り畳んで、棍棒状に変形させた。
「一斉打撃、ハードノック!」
「「「ハードノック!」」」
『ノッカー族』の戦士たちは、発動真言と共に、『種族固有スキル』の『ハードノック』を発動した。
棍棒状に変形したツルハシを、横薙ぎに振る。
そのスイングとともに、魔力弾が打ち出されるのである。
その魔力を圧縮した弾丸は、威力とスピードを増しながら、上空の敵に襲いかかる。
一斉に打ち出された魔力弾は、上空を旋回しているハーピーたちに次々に命中し、何体ものハーピーを打ち落とした。
この攻撃に、ハーピーたちはたまらず攻撃を中断し、一旦後方に距離をとったのだった。
迎撃成功である。
ただ油断はできなかった。
なぜならば、一度途切れた魔物の群れが更に追加で押し寄せて来ていたからである。
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