122.留守番組からの救援要請
それから魔剣には、もう一つ機能があった。
『ダッシュ』という技コマンドだ。
これも魔剣を握り、『ダッシュ』という発動真言』を唱えると、自分の動きが速くなるのだ。
『サブステータス』の『速度』が、三割アップするというもので、俺が持っている『通常スキル』の『ダッシュ』と同じようなものだと思う。
ただ『通常スキル』の『ダッシュ』は、一瞬の加速をするという感じだし、『サブステータス』の『速度』が規定値より三割アップするという事も無い。
技コマンドの『ダッシュ』は、『速度』が三割アップして早く動ける状態が、一時間程度続くという感じだ。
だから、実際にはかなり違う能力と言えるだろう。
この技コマンドの方が、優秀な感じがする。
この技コマンドも、やはり大工仕事などをするときに、使えば、仕事の効率アップは間違いない。
『鉄腕』コマンドと『ダッシュ』コマンドを使って、自分を強化して仕事をすれば、かなりはかどるだろう。
まぁこれは大工仕事に限らず、土木作業とか農作業でも使える。
もちろん本来の使い方は、戦闘の場面なわけだが。
二本に増やせたことだし、一本は作業をする人たちが自由に使えるようにしてもいいかもしれない。
信用できるリーダーに預けて、そのチームでみんなで使えばいいだろう。
この機能についても皆に説明をして、戦闘以外の場面でも使えるという話も改めて伝えた。
もちろんここでも、ラッシュが喜んでくれていた。
ちなみにクラウディアさんを始めとした他のメンバーは、多少呆れたような視線を俺に向けていた気がしないでもないが……気のせいだろうか?
そんな感じで魔剣の修復と、機能の説明が終わったところで、仲間たちの活躍について改めて確認しようと思ったのだが、突然に通信が入った。
それは『小剣者』を通じての通信で、『ヤマダイ国』の留守を任せた守備隊のラッカラン隊長からだった。
「ヤマト様、大変です!」
「どうしました?」
「はい、周辺を偵察していた者からの報告で、『魔境台地』に向けて、魔物の群れが押し寄せて来ていることがわかりました。数が多く、我々だけでは守れそうにありません」
おっと、それはまずいな。
「分りました。すぐに戻ります。何とか時間を稼いでください。
みんな『魔境台地』に魔物の群れが押し寄せているみたいだ。
すぐに戻ろう!」
俺は、ラッカラン隊長に返事をしつつ、仲間たちに声をかけた。
王都の今後の対応は、モーリス侯爵たちに任せ、すぐに戻ることにした。
といっても、転移門を破壊してしまったので、まずは転移門の修復からだ。
俺たちは、転移門に急いだ。
◇
「みんな、もうすぐ魔物たちが到達する。
戦えない者は、一旦戦車の中に避難してくれ!
それからカルチ、ヤマト様から指示されている通り、例の物を使うんだ!」
『魔境台地』では、留守を任されている守備隊隊長のラッカランが、目まぐるしく指示を飛ばしていた。
ラッカランに重要任務を託された農業隊隊長のカルチは、ある魔法道具のところに急いだ。
それは、大きなドア型の魔法道具である。
『ノッカー』の秘宝『ノッキングドア』だ。
この魔法道具は、一回しか使えないが、転移門なのである。
ヤマトが、『ノッカー』族の少女キュキュを助けた謝礼として、与えられたものである。
ヤマトたちに助けが必要な時にドアをノックすれば、駆け付けると約束されているのである。
カルチは、迷わずドアをノックする。
——トントン
…………。
——トントン
…………。
——トントン
——バタンッ
ドアが開き、中から『ノッカー』族の族長ガガンが現れた。
「なんじゃ、どうしたのじゃ?」
「私は『ヤマダイ国』のカルチと申します。
魔物の群れが接近しています。
ヤマト様より、もしものときには、このドアをノックして助けを求めるようにと言われておりました」
「あいわかった。すぐに助太刀しようぞ!
すまんが、お主はこのドアを見とってくれ。
開けたままにしておくのじゃ。一度閉じると、もう使えんでのう」
族長はそう言うと、一旦ドアを離れた。
少しして、里の戦士たちを連れた族長が、ドアをくぐる。
「戦えぬ者たちは、避難させた方が良いだろう。
我らの里で預かろう。連れて来て、このドアをくぐらせるのじゃ!」
「はい、分りました。ありがとうございます」
族長の申し出を受けて、カルチは戦車に避難している人たちを呼びに走った。
「『ノッカー』族の戦士を連れてきた。ヤマト殿への義によって、助太刀するのじゃ!」
迎撃準備中の前線に駆けつけた族長が、守備隊のラッカラン隊長に声をかけた。
百名ほどの戦士たちも一緒である。
「私は、ここの守備を任されていますラッカランです。
助太刀に感謝いたします。
ヤマト様にも連絡しましたので、すぐに来てくれると思います」
「わかった。魔物の群れが、どのぐらいの規模かわからんが、まぁヤマト殿たちが戻るまでの時間稼ぎはできるじゃろう。
数が少ないようなら、駆逐してしまうがな、ふっはっは」
現れた『ノッカー』族の戦士たちは、小柄ながらも皆筋肉質で、ツルハシ型の武器を構える姿は、屈強な戦士そのものだった。
その姿を見てるだけで、安心感が湧くとラッカランは感じていた。
それは他の兵士たちも一緒で、今までの不安な気持ちから、皆落ち着きを取り戻していた。
「魔物が来るのは、東からで間違いないのじゃな?」
「はい。東に向けて防衛線を作ろうと思っていたところです」
「そうか。では防衛線作りも手伝おう。
盾持ちで防衛線を作ったら、弓が使える者は全員攻撃の準備じゃ」
「はい、わかりました」
魔物の対処になれた族長の指示に、ラッカランは素直に従った。
そして族長は、『ノッカー』族の戦士たちのうち約三分の一に盾を持たせて、防衛線の構築に参加させた。
残りの者たちは、弓を持って魔物を待ち構える。
ほどなくして、魔物たちが現れた。
それは、ネズミ魔物、ウサギ魔物、猪魔物などを中心とした様々な魔物の混成軍団だった。
荒れ狂うように、突進してくる——
「これはまずいのう……。
『連鎖暴走』かも知れん。
弓攻撃での初動の後は、混戦にならざるを得ないじゃろう。
これは、なかなかに厄介じゃぞ」
族長の言葉に、ラッカランは冷や汗を流す。
ただ彼には希望があった。
そうヤマトたちが戻って来てくれれば、大丈夫なのだ。
それまでの時間さえ稼げれば、それでいい。
「お前たち、ヤマト様が戻ってくるまで、死ぬんじゃねーぞ!」
自分と兵士たちに、渾身の檄を飛ばした。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。
評価していただいた方、ありがとうございます。
次話の投稿は、明日の予定です。
もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。
励みになります。
ブックマークも、よろしくお願いします。




