121.『献身』スキルの凄技と魔剣に秘められた機能
俺の固有スキル『献身』によって、対象物を増やすという実験は、実は少しだけ行っていた。
『北端魔境』を探索してレベル上げをしているときに、少しだけ試したことがある。
それは死んだ魔物の遺体を切り刻んで、それを『献身』スキルで修復して増やせるかという実験である。
前にふと、そんなことを思いついてから、一度試そうと思っていたのだ。
その結果は、予想通りと言えた。
パーツから本体を修復し、増やすことができたのだ。
腕や足といったある程度おおまかなパーツからは、体全体を修復できることが確認できたのだ。
ただ、肉片とか爪などの微細なパーツから、体全体を修復できるかどうかは試していない。
理論上はできると思うが、実際やるのは、かなり大変かもしれない。
まぁあえてそんなことを試す必要がないから、やらなかったのだ。
今後も必要はないと思う。
ただ、もし超貴重なドラゴンの鱗など特別な素材が手に入ったら、試してみるのもいいかもしれない。
ドラゴン本体の遺体まで修復できたら、儲け物である。
それから、この実験によってわかったのは、特定の素材だけを量産することも可能だと言うことだ。
例えば、熊魔物の牙が欲しいという場合に、その牙を取って、その死体に『献身』スキルをかければ、その牙が修復されるので、事実上取り放題になるのだ。
これにより、高価な値がつく素材を持った魔物を倒すことができたら、俺は確実に、大金持ちになれることが確定した。
レア素材が、取り放題になるのだから。
まぁやりすぎると、値が崩れてしまうとは思うが。
もし仮に何らかの事情で、食糧難になったとしても、魔物の死体が一つあれば、俺たちは飢えずに済むのである。
肉を削ぎ落とした後に『献身』スキルをかければ、元の状態に戻るので、肉が食べ放題になるのだ。
この理屈から考えると、もしかしたら植物にも使えるかもしれない。
食べ終わった後のみかんの皮や、りんごの芯などに『献身』スキルを発動したら、元の実の状態に戻る可能性がある。
さすがに木の状態までは戻らないと思うが、今度一度試してみよう。
思考が横道にそれてしまったが、みんなは、俺が魔剣の修復するのを待っているので、そっちに取り掛かる。
俺は、折れた『魔剣 時置』に対して、『献身』スキルを発動する。
二つのパーツになっているが、離して置いて、二つ同時にスキルを発動する。
HP1になってしまうので、一緒にやってしまった方が効率がいいし、回復する手間も少なくて済む。
俺は、自分で回復しながら、五回ほど繰り返した。
そして、見事に修復できた。
二つとも上手くいったようだ。
『アナライズ』で調べると両方とも『魔剣 時置』と表示されるし、『階級』も『究極級』と表示される。
詳細表示の内容も同じなので、完全に複製してしまったようだ。
『献身』スキル……改めて思うが、すごいスキルだ。
修復できた魔剣を、早速使ってみることにする。
まず一本を握って、魔力を流してみる。
なかなかいい感じだ。
「時を置け!」
頭の中に流れてきた発動真言を唱え、技を発動してみる。
…………。
多分、一秒ほどだ。時が止まった。
一秒ぐらいなので、あまり時が止まっているという実感は強くないが、止まっていたようだ。
そしてやはり止められる時間は、一秒程度のようだ。
でも、この一秒は、使いようによっては、決定的な一秒になる。
そして、なんとなくの直感として、練習を積めばもう一、二秒ぐらいは、止める時間を伸ばせるような気がする。
今後、練習を重ねてみよう。
みんなは、不思議そうに見ている。
まぁ一秒を止めたと言っても、俺ですら、あまり実感がないのだから、みんなには何も起きてないのと同じ感じだろう。
一秒ほど時間が止まったと、改めて教えてあげた。
教えられても、みんなキョトンとしている。
剣を握り続けているからか、新たなイメージと発動真言が頭の中に流れてきた。
他にも、機能があったようだ。
「鉄腕!」
浮かんだ発動真言を発すると、一瞬、剣が光った。
そして、力が湧いてくる感覚がする。
ステータスを確認すると、『サブステータス』の攻撃力の数値が、規定値を超えて三割位増えている。
俺は、改めてこの魔剣を『アナライズ』してみた。
詳細表示を確認すると、『時置き』『鉄腕』『ダッシュ』という三つの技コマンドが、表示されるようになっていた。
今の技は『鉄腕』だ。
『サブステータス』の攻撃力を三割上昇させ、それに伴って筋力も上昇させると説明されている。
筋力というのは、重い物を持ち上げたりする力のことだが、それ自体は『基本ステータス』にも『サブステータス』にも表示されない。
だが筋肉量や筋肉の力という意味で、筋力という言葉は一般的に使われているのだ。
この技コマンドを使えば、物理攻撃力が三割位上がるし、力も三割上がるということだろう。
……やばい。
また別の使い方が、思い浮かんでしまった。
これは、作業するときに使えるのではないだろうか。
木を切り倒して運ぶときとか、大工仕事する時とか、重い物を運んだり組んだりするときに、この技コマンドを使えば、かなり楽にできるに違いない。
技の効果時間は、一時間程度と書いてあるが、効果がきれたら、また発動すれば良い。
今後、『ヤマダイ国』で家を建てるときに、作業者たちにこの剣を握らせて、『鉄腕』コマンドを発動すれば、みんなが強化されて凄く仕事がはかどりそうだ。
俺は、そんなアイディアも披露しつつ、隠された技コマンドがあったことを、みんなに伝えた。
ここでもラッシュが、「さすが先輩です! 今度は、魔剣を大工仕事に役立てるなんて!」とめっちゃ嬉しそうに、微笑んでいた。
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