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118.影vs影

「ハトリー、黒装束の一団が、王都各所で『小悪魔』やゾンビ魔物を倒していたという目撃情報がある。

 一部の者を公爵たちの護衛に残して、お前の子飼いの連中を放ったのだろう? 人々を守る為に。

 もう隠す必要は無い。

 この国は危機に瀕している。

 お前たちの力を正しく使うのだ!」


 ミトノ公爵が、再び御庭番衆の頭に語りかけた。

 渾身の説得だ。


「えーい、何をしておる!? もういい、ジンパ、お前を頭にする! やってしまえ!」


 業を煮やしたヒトツバ公爵の言葉を受け、二十人の黒装束の者の内、五人が動き出した。

 と同時に、残りの黒装束の者たちが動き、先に動いた五人をあっという間に、斬り捨ててしまった。

 だが、そのうちの一人は、何かの術を使ったらしく生きている。

 斬り付けた者は、幻を斬ったような感じになっていた。


 その間一髪逃げ延びた者が、指笛を吹いた。


 すると、新たに茶色ずくめの者たちが、十人現れた!


「ふふ、やっと現れたか。いでよ白影の軍団!」


 今度は、お頭ハトリーと思われる人が、声を上げた。


 するとまた、新たな一団が現れた。

 白ずくめの一団だ。


「白影の軍団、推参!」


 白装束の一団十人のリーダーと思われる者が、そんな言葉を発し、刀を構えた。

 他の者たちも攻撃態勢だ。


「天魔覆滅」


 お頭ハトリーさんが、そう言った途端、白影の軍団が一斉に茶色ずくめの者たちに襲いかかった。


 一瞬で、激しい斬り合いが始まった。


 両者とも、すごい手練(てだれ)なのはわかる。


 レベルが高くない一般の兵士には、斬り合い自体がしっかり見えないのではないだろうか。


「マスター、あとから現れ戦っている二つのグループの者たちは、いずれもレベル50を超えている者達です。

 警戒が必要です」


 『大剣者』が、『アナライズ』した情報を伝えてくれた。


 やはり、すごい者たち同士の戦いだった。


 そして、茶色ずくめの一団を呼び寄せた者、おそらくヒトツバ公爵が指示を出したジンパに対して、お頭のハトリーさんが攻撃を加えている。

 こちらも、激しい斬り合いになっている。


 皆、一対一の様相で、激しい斬り合いをしているが、勝負はすぐについた。


『茶色装束』対『白装束』では、『白装束』の全勝、ジンパ対ハトリーでは、ハトリーさんの勝利である。


 ジンパ含めた黒装束五人と茶色装束十人は、斬り捨てられ死亡している。


 『白装束』の者たちの中には、かなり深傷を負った者もいるようだが、回復薬をかけ、命に別状はなさそうだ。


「ハトリー、貴様、よくも裏切ったな」


 ヒトツバ公爵が、縛られたままの激昂している。


「いくら御庭番衆があなたの命で動くとは言え、これ以上は従えません。

 我ら影の、さらに影とも言うべき秘密の軍団を駆逐することができた今、あなたの下にいる理由もなくなりました」


「おのれ、ハトリー、密かに作った“影の影”を察知していたか。

 そして、それに対抗するために、お前もまた、別の影を作っていたとはな……。

 食えぬ奴め……」


「『御庭番衆』が設立された理念は、国王を補佐するヒトツバ公爵家の目となり耳となり、情報を集めること。

 そしてその力で、国の安寧、人々の安寧を図ること。

 我ら『御庭番衆』は、決して私利私欲の為の道具ではありません。暗殺の為の道具でもありません。

 今のヒトツバ公爵家には、『御庭番衆』を使う大義は無いのでです」


 ハトリーさんが、ヒトツバ公爵に吐き捨てるように言うと、俺のほうにゆっくり歩いて来た。


 ラッシュや仲間たちが警戒態勢を取るが、俺は手を出してそれを解かせる。


 敵意を感じないからだ。


「ヤマト様、我ら『御庭番衆』は、国民の安寧の為に、国家運営を健全にする為に、各種の情報収集、諜報活動を任務として参りました。

 今後は、あなた様に忠誠を誓います。

 我らの力を、どうぞ人々のためにお使いください」


 ハトリーさんは、そう言って跪いた。


「ハトリー、お前ならそう判断してくれると思ったよ。焦らせおって」


 ミトノ公爵が、近づいてきながら満足そうな笑みを浮かべて声をかけた。


「ヤマト様、この者は信用して構いません。きっとヤマト様のお力になることでしょう。どうぞ仕えることを許してやってください」


 ミトノ公爵がそう言うので、オレも信じることにする。


「わかりました。私はヤマトです。

 あなた達の実力は、今見させてもらいました。

 その力を、人々を守るために使ってください。

 よろしくお願いします」


 俺がそう言うと、ハトリーさんと、一緒に跪いていた者たちが、一斉に「はは」と応えた。


 こうして、伝説の忍者のような集団『御庭番衆』十五人と、その影の部隊『白影の軍団』十人が俺に仕えることになった。

 俺直属の諜報部隊として活動してもらう予定だ。


 改めて挨拶を交わしたが、『御庭番衆』の頭のハトリーさんは、なんと女性だった。


 覆面をしていたせいもあって、声の感じだけでは女性と気付けなかった。

 密かに覆面をとって、挨拶をしてくれたのでわかったのである。


 黒に近い濃い紫色の髪を、頭頂部でお団子のようにまとめているが、下ろせばきっとかなり長いと思う。

 切れ長の目の、不思議な雰囲気の女性だった。

 見た目は、三十代くらいだと思う。

 濃艶な感じもあるが、武人のような感じもある、不思議な雰囲気なのである。


 『御庭番衆』は、ハトリーさんを含め十五人が残った。

 女性九人、男性六人という内訳だった。

 斬り捨てたのは、ヒトツバ公爵の息のかかった者たちとのことだ。


 それから、『御庭番衆』の中の特殊部隊とも言える『白影の軍団』十人のリーダーは、ハンゾさんという五十代ぐらいの白髪の男性だった。

 少しだけ話を聞いたが、先々代の『御庭番衆』の頭で、公式には死んだと思われているとの事だった。

 引退した後に、病気で死んだことになっているが、密かにハトリーさんに協力して、秘密の軍団を組織していたということのようだ。

 ちなみに、ハンゾさんは、ハトリーさんの師匠でもあるらしい。




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― 新着の感想 ―
[一言] > お頭ハトリーさんが、そう言った途端、白影の軍団が一斉に茶色ずくめの者たちに襲いかかった。  急に服部……じゃなくてハトリーをさん付けし出した、ヤマトさんの中で味方判定に入ったな。
[良い点] この世界の御庭番は伊賀者だったと・・・φ(・ω・`)メモメモ
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