117.御庭番衆、登場
激昂したヒトツバ公爵が指示を出し、私兵たちが一斉に武器を構えた。
「ここは私に任せてほしいです! 魔盾の技が出しやすい状況ですから」
突然そう言って、前に出たのは、勇者ミーアさんのサポート部隊のメンバーだった獅子亜人のレオナさんだ。
彼女は、勇者候補パーティーのサポート部隊のメンバーであって、戦う能力はないと思うのだが……大きなゴツゴツとした突起のある盾を構えている。
「ヤマト様、大丈夫ですじゃ。
あの子は、我が一族に伝わる魔盾に適性があったのです。
中々いない逸材ですじゃ。思わぬ拾い物ですな。
魔盾の技を使うには、敵がまとまってくれている今が好機。
信じて任せて下さい」
『トブシマー』一族のシーア族長がそんな説明をしてくれたので、そのまま任せることにした。
確かに、今はまだヒトツバ公爵たちは、一まとまりになっている。
武器を構えたと言っても、ここまで進んで来た状態のまま、ほぼ列で並んでいるのだ。
それに向け、レオナさんが盾を構える。
盾は、大盾と言っていい大きさで、その表面には尖った岩のようなものがいくつも付いている。
「リアス開眼!」
レオナさんが発動真言』を唱えると、盾の上部の左右に、大きな目が現れた。
もともと目があったようで、まぶたを開く感じで目が現れたのだ。
そして、なんとその目の部分から、大量の水を放出した!
それはすぐさま激流となって、前方にいるヒトツバ公爵たちを押し流した。
「あの魔盾は、我が一族に伝わっている伝説の武具の一つで、『魔盾 リアスシールド』といいます。
『リアス四器』と言われている、四つの魔法の武具の一つですじゃ。
使用者を選ぶと言うほどでは無いのですが、使用者との相性があって、扱うのが難しい武具なのです。
『天船』に搭載してあったのですが、たまたま手にしたレオナに適性があったので、使わせることにしました」
シーア族長が、追加説明をしてくれた。
流された私兵たちは、体勢を立て直す間もなく、『河童族』の兵士たちによって拘束された。
『巻きひげ縄』で、拘束してくれたのだ。
俺が指示を出すまでもなく、サクラさんが一族の戦士たちに指示を出し、瞬く間に拘束してしまったのだ。
なかなかに優秀である。
私兵たちは、攻撃を一度もできずに無力化された。
お粗末という感じだが、俺の仲間たちが優秀すぎたと言ったほうがいいだろう。
もちろん、その先頭にいたヒトツバ公爵も拘束済みだ。
ちなみに、『河童族』の戦士たちは、ゾンビ魔物と『小悪魔』の討伐、人々の避難誘導でも大活躍をしてくれていた。
人数的にも、俺たちの主力メンバーと言っていい。
五十人だけ連れて来たので、十分な人数とは言えなかったが、それでも目覚ましい活躍で、本当に頼もしい仲間なのだ。
仲間になってくれて、大助かりである。
拘束されたヒトツバ公爵が、喚き散らしている。
だが、静かになった。
観念したと思ったが、突然、全力で「御庭番衆!」と叫んだ。
「皆の者、警戒を! 御庭番衆は手練れ揃い、暗殺も得意としている。飛び道具に警戒せよ!」
ミトノ公爵が、咄嗟に叫んだ。
——ガンッ
——ガンッ
俺に飛んできた投擲剣を、ラッシュが素早い動きで叩き落とした。
俺を狙ってきたようだ。
「御庭番衆よ、よく聞け! もう終わりだ、投降しなさい!
御庭番衆頭ハトリー、いるのだろう?
お前も今の御庭番衆のあり方をいいと思ってるわけでは無いのだろう!?
堂々と出てきなさい!」
ミトノ公爵が叫んだ。
どうやら、御庭番衆の頭と知り合いのようだ。
…………。
しばし場が静まり帰った後に、どこからともなく、黒ずくめの一団が現れた。
まるで、転移して来たかのようだ。
おそらく、ジェイスーンが持っていた『縮地』や俺の持っている『ダッシュ』と同じような素早く動けるスキルを使っているのだろう。
ただ現れた二十人ほどが、皆同じように突然現れたから、もしかしたらスキルではなく、訓練でそんな動きができるようになっているのかもしれない。
全員が同じスキルを持っているというのは、普通はありえないと思う。
もしほんとにスキルなしで、この動きができているのだとしたら、恐ろしい集団と言える。
全員、全身黒ずくめで、顔も隠し、目の所だけが出ている。
そして、全員刀を構えている。
まるで英雄譚に出てくる『忍者』みたいだ。
「ハトリー、もういいだろう。……充分だ。
ヒトツバ公爵家や国王の行いが間違っているのは、わかっているのだろう?
お前ほどの者が、『御庭番衆』となり頭となっている理由はただ一つ、『御庭番衆』の力を可能な限り悪用させないためだろう?
お前が頭になってから、ほとんど暗殺は行われていない。
暗殺したことになっている者も、密かに逃している。
保護しているのは、わかっているのだ」
ミトノ公爵は、お頭と因縁があるのか、よく知っているようで、そんな話を暴露した。
その発言に一番驚いているのは、ヒトツバ公爵だ。
「な、何を馬鹿なことを言っている!? ハトリー、さっさと此奴らを始末しろ! そして我らの縄を解くのだ!」
叫ぶヒトツバ公爵の言葉にも、その前のミトノ公爵の言葉にも、黒ずくめの一団は微動だにしない。
おそらく先頭にいる者が、ミトノ公爵が語りかけているハトリーという頭だと思うが、全く反応しない。
何を考えているのか、何をしようとしてるのか、全く読めない状況で、少し不気味だ。
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