119.忍者とは、似て非なるもの
俺直属の部下となった『御庭番衆』の頭のハトリーさんと、秘密の特殊部隊『白影の軍団』の団長ハンゾさんに、俺は、思わず英雄譚に出てくる『忍者』なのかと尋ねてしまった。
個人的な興味を、抑えられなかったのだ。
答えは、“似て非なるもの”ということだった。
『忍者』のような存在を目指して、日々訓練をしているが、『忍者』と言えるかどうかは、疑問だとのことである。
なぜならば、英雄譚に出てくる『忍者』は、『称号』に『忍者』とあったり、『通常スキル』で『忍術』スキルを持っていたりするが、そのような『称号』やスキルを持っていないかららしい。
かなり古い時代の『御庭番衆』には、『忍術』スキルを取得した者がいたらしいが、ここ二、三百年はいないのだそうだ。
“失われたスキル”と言って良いのではないかとのことだ。
“失われたスキル”というのは、文献等では確認されているが、現代では発現しないスキルのことだそうだ。
当然、レアスキルもしくはスーパーレアスキルという言い方もできるだろうが、何かの事情で、現代人には発現しない、失われたスキルと分類する学者もいるらしいのだ。
と言うわけで、俺が期待していたような『忍者』ではなかったが、それでも彼らの能力は、ずば抜けていて、現代の忍者と言って良いのではないだろうか。
そんな人たちが仲間になってくれたのだから、非常に心強い。
俺は、早速ハトリーさんに一つの依頼をかけた。
それは、悪魔契約者ユーリシアのことだ。
彼女は、もうこの世を去っているが、最後に彼女の魂の欠片から伝え聞いた、彼女が闇落ちした理由が少し気になっていたのだ。
王族によって、母親が辱められ父親が殺され、家門は潰されたということだった。
その王族が、ある意味元凶とも言えるので、確実に罰したいと思っている。
その為に、何者か特定したいのである。
そんな話をしたら、調べるまでもなくハトリーさんは、答えを持っていた。
勇者ジャスティスが『魔王』の『称号』を得て、その時に聖女と謳われていたユーリシアが悪魔契約者だと発覚したわけだが、その情報を得て『御庭番衆』が密かに調査を行ったのだそうだ。
もっともこれはヒトツバ公爵からの指示ではなく、ハトリーさんが独自に行った調査とのことだ。
『御庭番衆』は、国王及び国家に必要になると思われる情報について、指示がなくても独自に調査をするのが、習慣となっているのだそうだ。
そして、それにより判明したのは、ユーリシアの家は騎士爵位を持つ下級貴族だったということらしい。
そして母親を辱め、父親を殺害し、家門を断絶させたのは、国王の弟だったとのことだ。
約十年前の事らしい。
そしてその当時、事件を揉み消したのは、国王とヒトツバ公爵家だったようだ。
ヒトツバ公爵も、国王の弟なわけだが、そのさらに下の弟が犯人だったらしい。
その弟は、数年前に謎の死を遂げているそうだ。
おそらく、ユーリシアが密かに復讐したのではないだろうか。
直接の犯人には自ら手を下し、国王たちへの復讐は、国を滅ぼす事で成し遂げることにしたのかもしれない。
改めて考えると、一人の少女を悪魔契約者に落とし、悪魔の介入を許したその元凶は王族であり、本当に罪は重い。
この件も改めて調査し、関わった者たちは、すべて厳罰に処すつもりだ。
王族の非道な行いが、悪魔契約者を生み出し、国に災厄をもたらしたことを、国民に対しても知らしめるべきだと思う。
ユーリシアのやったことは正当化できないが、その哀れな魂へのせめてもの慰めとなるだろう。
今度こそ、一息つけそうなので、俺は仲間たちと共に、『天船』の中にあるラウンジで、お茶を飲むことにした。
シーア族長が、誘ってくれたのだ。
『天船』は、なかなかに設備が充実しているようだ。
まだしっかりと案内してもらっていないのだが、落ち着いたらじっくり見させてもらいたいと思っている。
船の大きさは、一応中型船の部類だろうが、大型船に近いくらい大きい。
見た目は、ガレオン船タイプの帆船なのだが、船の中央の辺りに艦橋ユニットというものが付いている。
三階建ての建物のようなものが、載っているのだ。
一番上が、第一艦橋で別名『航行ブリッジ』と言われているそうだ。
その下には、第二艦橋があって、搭載している魔法道具などの遠隔操作をする場所になっている。『操作ブリッジ』とも言われているらしい。
今回映像を映し出すために使った『ボローン』などの操縦を行っている場所が、ここなのだ。
一番下にあるのが、第三艦橋で『戦闘ブリッジ』とも言われているそうだ。
通常の航行ではなく、戦闘モードになった時には、このブリッジがメインになるのだそうだ。
ラウンジは、この『戦闘ブリッジ』の後方にある。
三階建ての箱型ユニットに、一階部分だけ増設したような形で設置されているのだ。
お茶を用意してくれたのは、ミーアさんに助けられてついて来た元サポート部隊の人たちだ。
この人たちは、『ボローン』の操縦もしていたわけだが、なんとなく、既にこの船に馴染んでいる感じだ。
この人たちの家族は、王都に住んでいるわけだが、全員無事が確認できているそうだ。
まだゆっくり話せていないようだが、家族揃って『ヤマダイ国』に移住したいという希望を言ってきたので、もちろん了承した。
今後も、命の恩人であるミーアさんを助けるサポート部隊として働きたいと思っているようだが、そのミーアさんは俺と行動を共にしてくれるという意向なので、『ヤマダイ国』への移住を決めたようだ。
ミーアさんを助けるサポート部隊として働くという事は、すなわち合流する俺たちのサポート部隊になってくれるということではある。
もちろんそれも助かるのだが、俺としては、この船のクルーになってもらったほうが良いのではないかと思った。
船を使わない時は、サポート部隊として活動して、船を使うときにはクルーも兼ねてくれると助かるのである。
『天船』は、今後俺たちで自由に使ってもらって構わないとシーア族長が言ってくれている。
そこで、族長に、この十人をクルーにしたらどうかと提案したら、族長も同じことを考えていたようで、二つ返事で了承された。
当面落ち着くまでは、シーア族長が船長として船の操艦を指揮し、この十人がクルーとして、いろんな機能を使えるように訓練するということになった。
今後が楽しみである。
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