114.今後の統治体制
ミトノ公爵と志を同じくしているであろう貴族の皆さんが、改めて俺に忠誠を誓うと言って、跪いた。
俺に忠誠を誓うよりも、本来の貴族としての責務、人々に尽くす責務を果たしてほしいという俺の言葉に、皆頷いてくれた。
だが俺に仕えるという気持ちは変わらないようで、王に接するような態度である。
「ではヤマト様、改めまして、今後の統治体制を議論してはどうでしょう?
私の方で、今後の体制に参加する資格ありと思われる貴族や役人を、追加で召集しました。
もう集まったようで、控えております」
ミトノ公爵が、そんな提案をしてくれた。
俺としては、もうすっかり打ち合わせが終わったつもりでいたが、まだだった。
まぁ確かに、今後の体制の具体的な事は、まだ決めていない。
大枠を決めただけで、誰がどんな仕事をするかという事は、しっかりとは決めていないのだ。
もう少し落ち着いてからじゃないと、決められないと考えていたが、今後の主要な人材を集めてくれたなら、このまま決めてしまうこともできるだろう。
早い方が良いので、提案に乗ることにした。
追加で集まった期待できる人材という人たちに挨拶をし、参加してもらった。
少しして、一旦の打ち合わせを終えた。
まだ混乱の最中なので、あまり時間をかけずに、一番大事な今後の中心となる役職の人事をメインに決めてしまった。
取り決めた内容は……
最初の予定通りに、『カントール王国』は残し、『ヤマダイ国』の属国として庇護する。
それにあたり総督府を作り、総督が国の運営を取り仕切るというかたちにした。
問題は、その総督を誰にするかということだが、当然、今の『ヤマダイ国』のメンバーには、そんな大役ができる者はいない。
そこで、ここにいる王国の人から選出することになった。
モーリス侯爵をはじめ多くの貴族から、ミトノ公爵を押す声が上がったが、公爵は強く固辞した。
王家の血筋の者が、その役職を担ったのでは、国民に示しがつかないというのだ。
そこでモーリス侯爵が総督に就任し、デワサザーン伯爵が副総督として補佐することになった。
モーリス侯爵は、元大将軍で兵士たちの人望が厚いのはもちろんだが、貴族家、特に地方の領主たちにも影響力がある。
ミトノ公爵以外では、最適だということで、満場一致だった。
本人は既に引退した身であり、思うところはあるようだが、国の危機に際して、そんなことも言ってられられないと少々ぼやき気味に言っていた。
ミトノ公爵を少し恨めしそうに見ていたが、ミトノ公爵は完璧にスルーしていて、その二人の構図が少し笑えてしまった。
デワサザーン伯爵は、領地を持つ貴族であるが、領地は次期領主の長男に任せて、しばらく王都に居住してもらうことになった。
王国軍も再編して建て直さなければならず、モーリス侯爵が大将軍に復帰することになった。
総督と兼務で大変であるが、それが一番早く機能させる方法だろうということで、了承してもらった。
実際は、第二大隊のエドガー将軍を中心に、再編させるので、実務は彼がやることになる。
エドガー将軍は、面倒くさいみたいなことをぼやいていたが、やる気にはなってくれたようだった。
王家とその血筋である二つの公爵家は、廃することになった。
これを一番強く主張したのは、ミトノ公爵だった。
建国の理念を忘れ、先王たちの思いを裏切った、そして多くの国民の命を失わせた、そんな王家は滅ぶべきだと言うのだ。
実は、初代王の遺言があり、それを果たしているのだと、ミトノ公爵が打ち明けてくれた。
『時を経て、もしも王家が建国の理念を忘れ、果たすべき役割を果たせなかった場合、民にとって害悪になった場合は、英断を持って、王家を滅ぼすべし』という遺言らしい。
二つの公爵家を作ったのも、初代王とのことだ。
王族を二つに集約し、王族の権威を悪用することがないように、それぞれの当主が厳しく管理するという趣旨らしい。
またその力を、王を補佐するためにまとめるという意味もあるのだそうだ。
これに伴い、それぞれの公爵家には、役割が与えられているそうだ。
ミトノ公爵家は、国中を回り、各領で領民が安寧に暮らしているのか、領主、貴族、役人の不正がないかを確認し、それを王に知らせる役割を担っているのだそうだ。
『公爵家隠密』とか『隠密道士』とか言われる者たちが密かに全国を回っていて、恐れられているのだとモーリス侯爵が補足してくれた。
過去には、当主自らが“世直し旅”と称して、身分を隠して全国を回り、虐げられた人々を助けたということもあったようだ。
一部、英雄譚のようにもなっているらしい。
その時に、当主自らが編纂した各領の名産品を紹介した書物は、『ミトノ公爵漫遊記——門外不出の名品紹介』として、今でも人気があるとのことだ。
各領の特徴を知る教科書的な意味もあって、『ミト公門』という愛称で呼ばれる本らしい。
全十巻にも及ぶそうだ。
文官を目指す者などは、みんな知っている本とのことだ。
そしてヒトツバ公爵家は、国王の側にあって、国王自身も含めた国の中枢、宰相、大臣、上級役人などが不正を犯さないか、間違った判断をしないかを確認し、助言をする役割なのだそうだ。
ヒトツバ公爵家も、『御庭番衆』という独自の情報収集組織を持っているらしい。
ミトノ公爵家が地方を監察し、ヒトツバ公爵家が中央を監察する役割なのだそうだ。
だが、ミトノ公爵曰く、王家とヒトツバ家は、本来の役割を忘れて、害悪になり果てているとのことだ。
相当思うところが、あるようだ。
というか、公爵の性格からして、今まで何度も衝突しているのだろう。
今日会ったばかりだが、なんとなく公爵の性格はわかる。
不正を許せるような性格では無いだろう。
ただ正面突破しかできないような融通のなさではなく、いろんな搦め手もできそうな人だ。
それでも、国王に対しては、いかんともしがたかったのだろう。
今度一度、詳しく聞いてみたい気もするが、今はそんな状況でもないので控えた。
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