113.ミトノの公爵の決意
今後どうするかを話し合う場で、いきなり、最高位の貴族であり元王族でもあるミトノ公爵が、この国を破壊して、俺のものにしてほしいという話をした。
これを受けるかたちで、クラウディアさんから、『カントール王国』の形だけは残し、『ヤマダイ国』の庇護下におく、平たく言えば属国にするのが良いと提案がなされた。
これを聞いていたモーリス侯爵は、大きく頷き話し始めた。
「確かに、クラウディア嬢の言う通り、その形が一番収まりが良いかもしれませぬ。
本来であれば、ヤマト様に全てを差し出し、『カントール王国』を廃し、『ヤマダイ国』の一部にしてもらうべきでしょう。
ミトノ公爵閣下のおっしゃる通り、ヤマト様の存在なくしては、国自体が滅んでいたかもしれないのですから。
ですが、その実感を持てるのは、実際に王都にいた人々のみでしょう。
地方領主の中には、愚かな者もおりますから、反乱を企てる者も出るやもしれません。
もちろん、そんな者は討伐すればいいわけですが、またいつ悪魔が襲ってくるかわからない以上、内輪で争うのは避けたいところです。
国王自身が、ヤマト様に恭順の意を示す、もしくは国及び王族を罪に問い、最高位貴族のミトノ公爵閣下が、恭順の意を示せば、納得する貴族も多くいるでしょう」
「ふむ……まぁそれが、現実的なところであろうか。
私としては、本当に『カントール王国』を廃してもいいと思ってる。
元王族で公爵としては、無責任かもしれないが、壊すのが一番だからのう。
だが、それもまた私のわがままか。
民の安寧を最優先に考えれば、クラウディア嬢の提案で行くのが良いでしょう」
ミトノ公爵は、そう言った。
「王族の反対は出ないのでしょうか? もう一つの公爵家ヒトツバ家は大丈夫なのでしょうか?」
「それは、ヤマト様が気になさる必要はありません。
無能な国王のせいで、多くの民が命を落としました。
国王及び王族は、断罪されてしかるべきです。
そしてヒトツバ家は、王国の腐敗の中枢にいたと言ってもいい者たちです。
国の腐敗や不正を一掃するために、王都の門閥貴族や上級文官を調査し、粛清せねばならぬでしょう。
ヒトツバ家は、その粛清対象とすら言える家門です。
この非常時だと言うのに、誰一人王城に現れないのが、何よりの証拠と言えるでしょう。
ヒトツバ家のシェルターに避難しているのですよ」
また過激なことを言っている。
まぁ当然のことを言っているだけなのかもしれないが。
「粛正という事は、それらの者たちを全て殺すということでしょうか?」
少し気になった。
まぁそれでも別に構わないんだが。
「罪を問うということです。当然、命を奪わねばならぬ者もいるでしょう。
我らとモーリス侯爵で、十分な不正の証拠を掴んでおります。
今までは、国王の庇護下にあったので、手出しできませんでしたが、この機会に全て正すべきです。
もちろん、我らミトノ家についても、調査いただいて構いません。
不正があれば、甘んじて罰を受けます。
ただそれ以前に、この国をダメにした責任を取って、王族に連なる貴族家は、全て廃したほうがいいと思っています。
それは、我がミトノ公爵家も例外ではありません」
なるほど、以前から問題だったわけだ。
そしてまともな人たちというか、ミトノ公爵とモーリス侯爵は、様々な不正の実態を調べていたという事のようだ。
だがあの国王の下では、それを突きつけても無駄ということだったのだろう。
訪れるかどうかもわからない機会を、狙っていたということなのかもしれない。
ミトノ公爵家と同じく最上位貴族で大きな力を持っているヒトツバ公爵家が、不正の中核にいたなら、どれほどの国民が迷惑を受けたことか。
確かに、そんな奴らは、一掃しないといけない。
そしてミトノ公爵家も、王家の血筋である以上、廃した方が良いと、自ら考えているということか。
仮にミトノ公爵家に不正や腐敗がなかったとしても、血筋だけを理由に連座制を適用されても構わないということなのだろう。
まぁミトノ公爵家をどうするかは、今すぐは判断できないが、少なくとも王家と、その威光を借りて酷い行いをしていたというヒトツバ公爵家は、粛清した方がいいだろう。
そしてどうやら、それをやるのが、俺の最初の仕事になりそうだ。
国王、王族、上級貴族を罰するなんて、俺の立場でしかできないだろう。
一応この『カントール王国』を俺の庇護下に置くのだから、俺の方が立場が上なのだ。
そして俺が頼むまでもなく、モーリス侯爵が、腐敗貴族を摘発し拘束しても良いかと許可を求めてきたので、了承した。
既に集めていた証拠を元に、主要な貴族を拘束し尋問をして、それに連なる者たちも根こそぎ拘束する予定だそうだ。
抵抗もある程度予想されるが、残った王国軍の指揮をモーリス侯爵に任せたので、武力で制圧することも可能だろう。
そんな打ち合わせが終わったところで、ミトノ公爵が改めて、俺に向かって膝をついた。
「ヤマト様、改めてこのミトノ公爵家当主ミツリーン・ミトノ、あなた様に忠誠を誓います」
そんなミトノ公爵に続くように、他の貴族たちも一緒に頭を下げた。
「ありがとうございます。ただ私に忠誠を誓うというよりは、国民に誓ってもらったほうがいいと思います。
国王に逆らうことはできなかったので、やむを得ないと思いますが、今後は貴族としての責務、人々に尽くすという責務を果たしていただければ、良いのではないでしょうか」
俺の言葉に、皆「はは」と言って、大きく頷いてくれた。
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