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クソゲーの悪役令嬢に転生してデッドエンド寸前なので、ヤンデレ悪魔を召喚しました  作者: 志喜屋弥勒
アスモデウスと9人の王(学園入学前編)
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悪魔と作戦会議をしました

「見て見て、どうだい?ノートルダム公爵家の執事服も中々似合っているとは思わないかい?」


「とっても似合っていますよ~」


「ふふっ、棒読みでも褒められると嬉しいものだね」


美しい悪魔が、その指通りの良い滑らかな銀糸を乱しながら、くるりとその場で回る。彼が今羽織っているのは、我が家の使用人が代々着用している燕尾服だ。上質な絹で出来た黒いジャケットが彼が動くたびに、美しくはためいている。長い足を覆っているスラックスも、彼のスタイルの良さを強調していた。


「やだ~、アシュレイさんって本当に何でも似合うのねぇ。ぴったりの制服作らなくちゃ。これとこれも着て下さる?」


ニコニコ顔のお母さまが指を鳴らせば、お母さま付きの侍女が服を大量に運んでくる。黒い皮のジャケットに、絹のモーニングスーツ、分厚い黒のロングコート、そして結婚式でしか着ないような白のタキシード、半ばコスプレのような服まで何でもござれだ。


またそれを全て着こなすアスモデウスの素材の良さに、心から感服する。そしてお母さまをここまで懐柔している器量の良さは、流石人間を甘言で誑し込む悪魔といったところだろうか。


「どれも似合うわねぇ。うーん、でも今日はオリヴィエちゃんがこのお洋服を着て、アシュレイさんがこのお洋服がいいかしら」


お母さまが差し出した服は、前世で見たことがあるものだった。私の服は、青いフリルをあしらったドレスの上に白のエプロンを重ねている。白いタイツと、黒のパンプス、そしてカチューシャを付ければ完璧だ。


一方アスモデウスに差し出された服は、白いタキシードのようだが、中にグレーのチェック柄のベストを着ており、黒いスラックスにブーツを合わせている。そして首には銀時計のようなアクセサリーをつけており、目を見張るのは頭につけるウサミミカチューシャだ。


これは、どう見ても不思議の国のアリスコーデである。そもそもこの世界に不思議の国のアリスは存在するのか?


「あらあら、二人ともとっても似合うわ。赤い髪のオリヴィエちゃんと、白い髪のアシュレイさんが並ぶと映えるわねぇ」


お母さまは満足げに頷くと、使用人には余るほど大きな部屋(しかも私の部屋と同じくらい広いし、私の部屋の隣)のクローゼットに持ってきた大量の服を収納し始めた。


「アシュレイさん、このお部屋の物は好きに使ってくださいな。」


「お部屋を用意して下さってありがとうございます、こんな素敵なお洋服やお部屋を頂けるなんて使用人冥利につきます」


「あら、そう言って頂けると嬉しいわ。必要なものや困ったことがあったら、私やオリヴィエちゃんに何でも言ってくださいね」


お母さまは部屋の物の説明を一通りアスモデウスに行い、三時のお茶会でまた会いましょうと言って、にこやかに部屋から出ていった。


「賑やかなお母さまだね、チャーミングな方だ」


「お母さまが色々ごめんなさい。子供を着せ替えるのが趣味な人なのよ」


「いやいや、僕も新鮮で楽しいから大丈夫だよ。僕ら悪魔は着替えるという概念がないからね」


三月ウサギのモチーフの服すらも着こなした悪魔の、頭から垂れたウサミミがあまりにもふもふで堪らない。そのあまりの柔らかな手触りに感動していれば、アスモデウスが頭をぐりぐりと押し付けてくる。なんだこの可愛い生き物は、いや生き物じゃない悪魔だ。


押し付けられた頭を撫でていれば、アスモデウスはしばらく大人しくしていたが、あたまを私の肩ぐちに乗せてじっと私を見つめてくる。


「そういえば、僕はいいんだけど、オリヴィエはどういう風に願いを叶えるか考えなくてもいいのかい?」


「願いを叶えるって?」


「だって、オリヴィエは何もしなかったら7年後に死ぬんだろう?」


そ、そうでした~~~~~。色々あって完全に忘れてました。

悪魔に人生心配されるって何事だ、息をするように人が死ぬこのクソゲー世界でなにをこんなにゆるゆると生きているんだ私。


「作戦会議しませんか、アスモデウスさん」


「勿論、僕はそのために呼ばれたんだしね」


「ちょっと厨房から紅茶とお菓子持ってくる、アスモデウスは紙とペン用意して」


「分かった、ちなみに今日のお菓子はスコーンだから、たっぷりのジャムとクロケットクリームも忘れずにね」


厨房からの料理長さんにお願いして作って貰ったお菓子はアスモデウスが言っていた通りスコーンで、言われた通りに木苺のジャムとマーマレードジャムとクロケットクリームを盆の上に乗せて運んでくる。紅茶は年配のメイドさんが入れてくれたものを、近くにいた侍女さんがアスモデウスの部屋まで運んでくれた。


準備が整った所で、チキチキ第一回オリヴィエの死亡フラグをボキボキに折っていこう会議の始まりだ。


「まずはなんだけど、分かる範囲で私がどういう風に死ぬかを情報共有しておくね」


まず第一にオリヴィエ・ノートルダムは17歳のクリスマスダンスパーティーの夜に、召喚した悪魔との契約違反を犯し地獄に落とされる。これが私のDEADENDだ。


このDEADENDが発生する要因になるのは、ヒロインが固定キャラのルートに入っている事がある。固定キャラの好感度を一定以上上げていた場合、ヒロインと攻略キャラがクリスマスパーティーに参加することになるのだが、そのイベントに入った場合間違いなくオリヴィエは死ぬ。


ちなみにこのイベントは、本当にそこまで高くない一定以上の好感度を上げていると入れる所謂共通イベントなので、ヒロイン(プレイヤー)がよほど馬鹿でない限り入ることが出来る。そのため、悪役令嬢であるオリヴィエはごく普通にプレイしていれば確実に死ぬのである。


「だから、一番良いのは魔法学校を飛び級で卒業して17歳のクリスマスパーティーを回避することなんだけど、一つ問題があって」


「どんな問題があるんだい?」


「そうすると、私以外の人が死ぬ可能性があるのよね」


私が原作時点でいなくなっていれば解決できる問題であれば、悪魔を召喚せずともとっくに解決している。しかし、残念ながらそう簡単な問題ではない。


このゲームはクソゲーなのである、そのクソゲーたる由縁はあまりに難易度が高く全てのキャラに死亡フラグが立っていることであるのだ。

そもそも攻略キャラ全員が悪魔の呪いにかかっており、酷ければその呪いによって死ぬし、そうでもなくとも呪いにかかった自分を儚み突然失踪することなどざらだ。

このような背景から、ヒロインである主人公の選択肢ミスによるヒロイン自身のDEADENDから始まり、固定キャラルートにも攻略対象のDEADENDが山ほど待ち構えている。


「オリヴィエが助かるんなら別にいいじゃないか、何が問題なんだい?」


「そんな当然でしょみたいな顔で物騒なこと言わないで…。分かっているのに助けられないの後味悪いじゃない」


「えー、僕からすれば、オリヴィエ以外の人間の命なんて皆吹けば飛ぶ塵のようなものさ」


はははと爽やかに笑いながら恐ろしいことを言い放つ悪魔に、何度目か分からないが頭を抱えた。攻略キャラの命を吹けば飛ぶ塵なんて、そんなゲームの製作スタッフがオトメイトの冊子のコラムに書いてそうなことを言うんじゃありません。

「ラブ&ピースの精神で行こう、アスモデウス」


「分かったよ、仕方ないなぁ。では君の本当の望みは、7年後の魔法学校の中で起こりうる全ての死を回避するということで良いかい?」


端的に言うとそうなる。だが、言葉にしてみるとそのあまりの難しさに、思わず冷や汗が出てきた。


私がこのゲームのフルコンプにかかった時間は約半年だ。通常の乙女ゲームというのは1カ月もあればフルコンプは可能だ。そういった場合、普通は分岐も少なく、せいぜいエンド数も一キャラあたり4-5ルート位のものだろう。


しかしながら、このクソゲー「恋と魔法と召喚陣」は大量のBADEND、DEADENDがあるため、攻略キャラが5人しかいないにも関わらず、50以上のルートが存在する。つまりはとてつもなく攻略が難しいため、半年という通常の6倍の時間がかかってしまうのだ。


私が何十回と試行錯誤し、何十回と誰かが死んだゲームを、一発で死者を出さずクリアしないといけない。これはゲームでなく、どうしようもなく現実でしかないのだから、死んだらニューゲームなんてことはできない。


「そうしたい…、だけど本当にそんなこと可能なのかな」


「できるさ、だから今こうして僕が此処にいるんだろう」


アスモデウスが氷のように冷たい掌で私の頭をくしゃくしゃとかき混ぜるように撫でた。


「そうね、前向きに今できることを考えないと」


ゲーム開始までのあと7年間で出来ることは何だ、私が事前に折っておける死亡フラグは。そもそも私以外のキャラはどうやって死んだんだっけ。


「そういえば、悪魔との契約違反で私死ぬ予定なんだけど、悪魔との契約を外部の人間から一方的に破棄させることってできるの?」


「ああ、二通りあるよ。一つは、悪魔と契約した逆を願うんだ。この場合二人の召喚者の内、魔力が強いものか、単純に悪魔の好みの召喚者が優先されて、契約が上書きされることで破棄させることが出来る。一番オーソドックスなものはこれだね」


「なるほど、元の願いを打ち消す願いを悪魔と契約するのね」


「だけど、この方法で元の召喚者が死ぬことはないんだ。ということは、オリヴィエが死んだのは後者の可能性高いね」


アスモデウスは私の長い赤毛をいじりながら、そう説明してくれる。


「そのもう一つの方法って?」


「もう一つの方法は光魔法によって、悪魔の契約における代償、つまり一般的に呪いと言われているものを消すものだ。これは、召喚者と代償を払った人が違う場合に限るんだけど、悪魔の契約における代償を被った人間の呪いを消してくれる代わりに、召喚者は悪魔との契約破棄となり地獄に落ちることになる」


光魔法、そうか、そもそも平民であるヒロインが突然魔法学校に入った理由が、光魔法に覚醒するからだ。そうして、オリヴィエが「攻略キャラが自分を好きになること」を願い、願いを叶える代償をヒロインに被せようとした、と考えれば全て辻褄が合う。


なるほど、この情報はゲーム内で出てこなかったから、恐らくオリヴィエもヒロインも知らなかったんだろうけど、それにしても自力で光魔法によって代償を消すことができるヒロインに代償を押し付けようとして、契約破棄で死ぬオリヴィエ頭悪すぎないか。


「つまり、悪魔を召喚して願いを叶える時に、代償を自分で払う必要ってないのね。それ、嫌な奴に押し付けることできるじゃない」


「そうだよ、だから呪いというものが存在するのさ。あれは、誰かの願いの反動なんだよ」


「じゃあ、私アスモデウスに自分の魂差し出す必要無かったの?適当な誰かの魂でもよかったわけ?」


「それは無理だよ。その代償で願いを叶えるかどうかを決めるのは悪魔だからね。僕は代償が君の魂以外なら、その場で君を殺していたよ」


にっこりとカレンダーを読み上げるかのようにアスモデウスはそう告げた。あの時の私グッジョブとしか言えない。私の人生、死と隣り合わせすぎないか。


「あははは、そうですか」


「まあ、僕みたいな王の位を持っている悪魔でなければ、比較的代償は何でも許してくれるけどね」


つまり呪いと言われているものの多くは、誰かの悪魔召喚の代償というわけだ。それもそれで代償を吹っ掛けられる方は難儀としか言いようがないが。


待てよ、まさかだが、攻略対象にかけられている悪魔の呪いは、悪魔召喚の代償なんじゃないか。突破口が見つかったかもしれない。


「アスモデウス、さっき言ってた契約破棄の一つ目の方法、逆の願いを悪魔に願うことって私にも出来る?」


「ああ、出来るよ。おまけに僕がいるから、余程のことがない限り成功するはずさ」

これだ、これが今私にできる一番の答えだ。

アスモデウスから悪魔召喚について学び、攻略キャラにかけられている悪魔召喚の代償を原作ゲームが始める7年後までに全て解ききる。

そうすれば、ヒロインが攻略キャラのルートに入ることもなく、攻略キャラ自身もヒロインも呪いによって死ぬことはなくなるだろう。

その上で、攻略キャラとヒロインの安全を確保したら、私は魔法学校を飛び級で卒業し、クリスマスダンスパーティーイベントを回避する。


「完璧だわ、全員の呪いを解いて死亡フラグ完全回避してやる」


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