閑話:娘が心配なパパたち
〈獣王国レンブラント〉
「まだカリーナは見つからんのか!」
執務室に響き渡る怒声。
獅子の獣人である国王は、なかなか見つからない娘にイライラが募っていた。
「マリーレインとはまだ連絡が取れぬのか!?」
「はい、ギルドマスターの職を辞した後は行方が掴めません」
「フラウベルはどうなのだ!」
「同じく、連絡が取れません」
報告をする騎士団長は、生きた心地がしない。
「とにかく、マリーレインかフラウベルのどちらかと行動しているはずだ」
ドラゴンを従魔にするという偉業を成し遂げた姫。
国王は、その姫に相応しい相手を選んだつもりだったのだ。
まさか、家出の原因になるとも知らず。
「何かあってからでは遅い、一刻も早く探し出すのだ!」
「はっ!」
(悪い虫がつく前に、一刻も早く捜しださねば)
ちなみに、国王は大変な子煩悩である。
(サマンサがいれば大丈夫だとは思うが…)
何せ、王族なのだ。
基本、身の回りのことは自分ではしない。
今頃、不自由な思いをしているのではないだろうか?
そう思うと気が気ではない。
(そもそも、何故ナルジアは心配せんのだ!)
実母であるはずの王妃は取り乱すこともなく。
そのうち帰ってきますわ、と泰然としている。
(カリーナは世界一可愛いのだ、変な輩が寄ってきたら…!)
「これは王命である!姫の保護を最優先とせよ!」
「御意!」
その様子を国王の背後で見つめながら、宰相は思う。
(だったら、婚約撤回してやればいいのに)
真理である。
◇◇◇◇
〈クルーディア帝国〉
颯爽と王城内を歩く、この世の者とは思えぬ美形の男性。
すれ違う者は等しく、頭を下げて敬意を示す。
この帝国において、彼は皇帝に次ぐ地位にいるからだ。
「ゲオルグ!ゲオルグいるか!」
「あのな、仮にも皇帝の名前を呼び捨てにするなと…」
「おお、すまんな!」
ため息をつきながら、皇帝はそれ以上の言葉を飲み込んだ。
黙ってさえいれば、神々しいまでの美しさを誇るこの男。
中身は実に残念なタイプなのである。
言うだけ無駄だと経験から学んだのだ。
「すまんが、数日暇をくれ!」
「何事だ?」
「うむ、娘に会いに行こうかと思ってな!」
「ああ、ロザリアだっけ」
「無事でいるか、父として様子を見てこなければ!」
一度だけ、皇帝はロザリアに会ったことがある。
父に似て大変美しい少女で、残念なことに中身もよく似ていた。
「何か土産を持って行ったらどうだ?」
「そうだな、ちょっと見繕ってこよう!」
「ちゃんと宰相に聞くんだぞ!」
「分かった!」
暗黒邪竜の王種、という存在帝国にもたらしてくれた恩恵は大きい。
その娘であれば、ぜひとも帝国に居住してもらいたいとの声もあるのだが…
(騒々しすぎるのが目に見えてるからな、絶対ゴメンだ)
皇帝は、平穏を選んだようだ。
読んでくださって、ありがとうございます。
ブクマや評価を頂けると励みになります!




