閑話:魔王の後悔
私の名はフリードリッヒ・キーリス。
ここ、キーリス魔王国の王である。
王としてはまだ若輩なのだが、今の所問題はない。
我が国は豊かで、歴代国王の悲願である全土統一も夢ではないだろう。
側近の中には、先代の頃より仕えてくれている者もいる。
「魔王様、私に何かご用でしょうか?」
宰相のベネフィアット・ゾールディー。
中でも、この男は別格。
先代が魔王になる前からの忠臣で、私が幼い頃は教育係だった。
『良き王となるには、あらゆる知識が必要です』
『はい、ゾールディー先生!』
『まずはキーリス魔王国の歴史を学びましょう』
『はい!』
『政治にマナー、勉強以外にも学ぶことはたくさんありますからね』
そのせいか、今でも目の前にいると緊張する。
……おかしい、私は王のはずだが。
「そなた我が国が誇る賢者であり、忠臣だ」
「恐れ入ります」
「だが、いつまでもそなたに甘えていてはいかんと思うのだ」
近衛騎士団長のバードメラが素晴らしい提言をしてくれた。
要するに、主要な役職の代替わり。
「代替わり、ですか」
「うむ…王国の新たな時代を新たな世代で作りたいのだ」
無論、相応の報酬は用意している。
もう8000歳を超えているのだから、ゆっくり隠居するがいい。
幸いにも快く申し出に同意してくれて、これで一件落着。
新たな宰相職には、バードメラの縁者を起用。
さあ、新たな王国の時代を築くのだ!!
◇◇◇◇
おかしい、こんなはずではなかった。
何故、こんなにも書類が増えたのだ?
それだけではない、色々な報告が滞って情報が入ってこない。
え? 前宰相がいなくなったから?
私に渡すべき書類と不要な書類の振り分け、前宰相がやってたのか。
知らなかった…ちなみに、それ代わりにやってくれる人は……無理?
ベネフィアット・ゾールディーの抜けた穴は、予想以上に大きかったらしい。
それだけではない。
人望も厚く、後を追って退職した者たちも少なくないらしい。
各部署から、増員願いが出ているとの事。
宰相、すぐに手配を。
え、無理?もう辞めたい?
1周間不眠不休で働いてるって…ほら、泣くな。
おい、誰か宰相を医務室へ。
こうなったら、最後の手段。
誰か、急いでゾールディー家に使いを出すのだ!
王が急用で呼んでいると伝えてくれ、頼んだぞ。
目の前には、高く積み上げられた書類の山。
こんなはずじゃなかったのに。
いつも支えてくれていた宰相を追い出した罰なんだろうか。
新しい宰相は病気療養で長期休暇願いを出してるし。
何もかもが、メチャクチャだ。
「大変です!ゾールディー家は空っぽで、何処かへ引っ越したと…!!」
ゾールディー先生ごめんなさい。
土下座でなんでもしますから、助けて下さい。
お願い、帰ってきて。
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