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通販スキルで、楽しい異世界生活  作者: 黒蜜きなこ
第4章 温泉郷の賢者様
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閑話:アイーシャ・ノーラント


私は、いわゆる戦災孤児だ。

当時、王国ではあちこちで小競り合いが起きていた。

原因は、先代の魔王様へ反旗を翻した、一部の貴族たちによるものだ。

私が住んでいた小さな村は、その犠牲となった。



─ アイーシャ、逃げなさい!!



それが、母の最後の言葉。

父は、私と母を守ろうとして切り捨てられた。

怒号と悲鳴、むせ返るような血の匂い。

今でも夢に見る。


木のウロに身を隠し、ひたすらジッと隠れていた。

やがて辺りが静まりかえって、そうっと這い出てみると…

そこには、私の知ってる村はなかった。

壊された家屋と、燃え盛る炎。


お父さんも、お母さんも、隣のおばあちゃんも。

皆、殺されて、燃えてしまった。

あまりにも現実離れした光景は、悪い夢でも見ているようだった。


「遅かったか……」

「……だぁれ?」

「お前は…そうか、生き残りがいたか」


炎に包まれた村を眺めていると、見知らぬ大人が近づいてきた。

藍色のローブ姿の、魔術師。

不思議と、怖いとは思わなかったのを覚えている。


「娘、名は ?」

「アイーシャ」

「年はいくつだ」

「10歳」


ぎこちないながら、そっと頭を撫でてくれた手は、酷く優しかった。

それが、私とベネフィアット様の出会い。

その日から、ベネフィアット様こそが私の全て。


ベネフィアット様は、私にあらゆる教育を受けさせてくれた。

幸いにも魔術や剣の腕には、そこそこ才能があったらしい。

部下としてベネフィアット様の手助けが出来るようになった。


賢者という二つ名を持つ程の知識。

魔王様すら頭が上がらぬ、鋼鉄の宰相。

知れば知るほど、ベネフィアット様への忠誠心は増すばかり。

この御方の一番の部下である事は、我が誇り。


なのに。

なのに、これは何の冗談だ?

ベネフィアット様が隠居した??


「うむ、新たな世代で新たな国を作っていくのだ!」

「素晴らしいご判断です、魔王様!」

「うむ、これから忙しくなるぞ!」


どうせ、バードメラ家の仕組んだ事だろう!

頭の上がらぬ存在が疎ましかったのか、何が魔王だ!!

ベネフィアット様宅はすでにもぬけの殻。

私宛に、手紙が残されていた。

書かれていたのは、自由に生きろというメッセージ。


(宰相様を、ベネフィアット様を探さなくては!)


ベネフィアット様のいない魔王国なんて、未練はない。

今頃、おひとりで不自由してはいないだろうか。

待ってて下さい、必ず見つけて見せます…!




◇◇◇◇




いや、まさか別の大陸にいらっしゃるとは思いもしませんでした。

てっきり人族に囚われているのかと…

でも、こうして無事に再会出来て感無量です。


「アイーシャよ、こんな年寄りで良いのか?」

「ベン様、お慕いしております」

「あの日、幼きお前と出会ったのは運命だったのやも知れん」

「運命…ええ、きっと」

「我が妻に、なってくれるか?」


あの人族の少年には感謝しなくては。

何となく、対立してはいけない気がする。

腕にはそこそこ覚えのある私が、手も足も出なかった。

え、ベン様も?……本当に何者なんでしょうね。


さあ、そんな事よりベン様!

今日は私たちの初夜ですよね?

私、赤ちゃん欲しいです!頑張りましょう!!

1550年前からずっと、愛してます…旦那様。


読んでくださって、ありがとうございます。

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