09
「魔族だ!魔族が現れたぞ!!」
怒号が飛び交い、逃げ惑う人々。
原因は、宙に浮かんでいる魔族の女性だ。
鑑定!
名前:アイーシャ・ノーラント
年齢:1560歳
称号:キーリス魔王国元宰相の部下
おおい!爺さんの部下かよ!!
爺さんを追ってきたのか?
「一瞬だが、この地より宰相様の魔力反応があった…」
あ、元の姿に戻ってもらった時か?
「宰相様をどこに捕らえておるのだ!答えねば皆殺しぞ…!!」
察するに、この人は居なくなった爺さんを探し続けていたんだろう。
で、まさか爺さんが自分の意志でこの地にいるとは夢にも思ってないわけだ。
「急げ、急いで避難しろ!」
長閑な土地柄か、衛兵も戦闘能力はさほどない。
皆を避難させるのが精一杯だろう。
何より、俺が元の姿を見たいって言ったせいだしね…
(ますた)
「ハクとランは、ちょっと離れててな」
大丈夫、すぐ終わるから。
とりあえず、会話を試みるためにフライで元部下さんの元へひとっ飛び。
「あのう」
「何者だ!何故人族が浮遊魔法を使える!?」
炎みたいに真っ赤な髪が印象的なお姉さん。
「宰相様なら元気ですよ、お会いに…」
「貴様が宰相様を!許せん、くらえ…!」
空にかざした掌に、巨大な炎の塊。
こら、街中で 物騒な魔法は使うな!
クリエイト・バリアーで結界を張りながら、背後に回りこむ。
「ホーリー・バインド!!」
紐状にした魔力で、身動きできないくらいグルグル巻きに。
炎の塊は、魔力をぶつけて相殺しとこう。
ギャーギャー煩いので、とりあえず眠ってもらうね。
「スリープ」
物語なら派手に戦って盛り上げるところなんだろうが、生憎これは現実。
無駄な戦いを避けられるなら、それに越した事はないよね。
「もう大丈夫ですよ〜……あれ、誰もいない」
サッちゃん、皆は?
(衛兵が、地下にある避難施設へと誘導していきました)
そっか、カリナたちは…ちょうどこっち向かってるみたいだな。
悪いけど説明面倒なんで、今のうちに……
ハク、ラン、おいで。
(は〜い!)
「その魔族はどうするのじゃ?」
そりゃあもちろん、元上司にお任せするのが一番だろう。
「爺さんの家にワープ」
◇◇◇◇
「おいトッケイ、爺さん叩き起こせ!」
ホーリー・バインドはそのままで、とりあえず元部下さんは床に転がす。
トッケイはこの魔族に見覚えがあるらしい。
(アイーシャさん、主を追っかけて来たのか…)
慌てて爺さんを起こしに行くトッケイ。
すぐに、バタバタと爺さんの足音が聞こえてきた。
「アイーシャ!!」
「街中で暴走してたんで、連れてきた」
「迷惑をかけたな、起こしてくれるか?」
「その前に、魔族の姿に戻っておいてくれ」
「そうだな」
拘束はそのままで、とりあえずスリープの魔法を強制解除。
「う、ん…」
「アイーシャ、アイーシャ分かるか?」
「え…宰相様……?」
「よくここが分かったな」
「宰相様!ご無事だったのですね…!!」
暴れない事を約束させて、ホーリー・バインドを解除。
爺さんが、これまでの経緯を元部下さんに説明する。
「何という恩知らずな…!魔王国の賢者と讃えられたお方を…」
「今はこの地でのんびり暮らしておるよ」
「宰相様…」
「儂の知識はこの地でも役に立つと思わんか?」
あれ?この2人、ちょっといいムードかも。
「宰相様…いいえ、ベネフィアット様」
「ここではベンと名乗っておる」
「ベン様…どうぞ、私をお側に置いて下さい!」
「王国を捨てると…?」
「はい、貴方様のいない国に未練はありません」
「アイーシャ…」
うん、俺お邪魔だわ。
トッケイを手招きして伝言。
「俺帰るから、後はよろしく」
(世話かけて悪かったな)
「じゃあな」
やれやれ。
飯食って風呂入ろう。
カリナたちには何て説明しようかな〜…
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