閑話:ベネフィアット・ゾールディー
儂の名は、ベネフィアット・ゾールディー。
キーリス魔王国の元宰相である。
王国広しと言えど、我が名を知らぬ者などおらぬ。
魔族は長命だ。
保有する魔力によって、その年齢は決まる。
何と、儂は8200才だ!はっはっは!
「代替わり、ですか」
「うむ…王国の新たな時代を、新たな世代で作りたいのだ」
今代の魔王様から、直々に隠居するよう打診を受けた。
要するに、肩叩き。厄介払いである。
若き王にとって、儂のような古株は目障りなのだろう。
王がまだ幼い頃より、教育係としてお支えしてきたのだが……
ふん!!!
そっちがその気なら、もう知らん。
勝手にするがいい、薄情者めが!
数十年前に妻を亡くして以来、儂は独り身。子もおらん。
幸い身軽であるから、好きにさせてもらおう。
行き先に選んだのは、人間や亜人の暮らす大陸。
魔族だと受け入れてはもらえんだろうと、人族に偽装。
名も、ベン・ゾールディーに変更。
ゾールディーという名は、さほど珍しいものではない。
目立つことはないだろう。
見た目は…年寄り過ぎても何なので、壮年くらいにしておく。
いや、年寄りの方が警戒されにくいか?
じゃあ、八十くらいにしておこう。
儂は戦闘より、知識で身を立ててきた。
魔王国の賢者と呼ばれた儂の知識は、きっと役に立つだろう。
◇◇◇◇
居着いたのは、ラフマー温泉郷。
小さな一軒家を借りて、従魔のトッケイと住んでおる。
毎日のんびりと湯に浸かり、仕事に追われることもない。
ああ、極楽だわい。
(主、だらけすぎじゃねぇのか?)
ふん、口喧しい従魔め。
人族の姿でいる時は、使えるスキルなどにも制限がかかっている。
魔族の姿でなければ使えないスキルがあるためだ。
人族の姿で使えるのは、錬金術と透視。
錬金術は、道具を揃えるのが面倒で使っとらん。
だが、透視スキルは良い!
「あら、ベンさんこんにちは」
「やあレーヌさん、後で風呂に入りに行きますよ」
「お待ちしております」
むほ〜〜〜!
爽やかな若草色のワンピースの下には、ナイスバデーな裸体が!!
お、あちらのご婦人はスレンダーで違った美しさがあるわい。
美しいものを愛でるのは堪らんわのう。
この温泉郷に来てから覚えた、密かな楽しみ。
(主、それって犯罪じゃねぇの?)
何を言うか、美しいものは皆で愛でるもの!
美しいご婦人は、存在そのものが芸術なのだ!
(またおかしな理屈を…主ってこういう性格だったっけ…)
日々のささやかな楽しみなのだ、ほっといてくれ。
「さ〜て、今日も芸術鑑賞するかな」
お、あちらからレーヌさんが!
どれどれ……
「ウギャアアア!!……ウォエェェェ………」
な、何だ今のおぞましい幻影は…
ミラージュの魔法か?
こしゃくな…ふむ、この魔力だな……
よし、トッケイよ!この魔力を辿っていくんじゃ!
そして、どんな奴か調べてこい!
誰か知らんが、この借りは返させてもらうぞ。
うっ、思い出したらまた吐き気が……オォエェェ〜……
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