05
翌日。
各自部屋で朝食を食べた後、合流して冒険者ギルドへ。
ハクはまだ眠いらしく、俺の頭上でウトウトしてる。
そういえば、今日はユウノさんと試合する日か。
どうしようかな、勝つと面倒くさいことになりそうだけど…
マリーレインさんに勝った手前、負けるのもどうかと思うし。
ユウノさん、試合のこと忘れててくれないかな…ありえないだろうけど。
「カリナ、飴食べたい!」
「朝ご飯食べたばかりでしょ?」
「あ、ずるいのです!私も飴!」
「もう、サマンサ!」
カリナは朝から大変そうだ。
助けを求めるような視線には気づかないふり。ごめんカリナ。
後でハクの肉球プニっていいから、頑張れ。
「まずはユウノさんに面会だな」
「それは私に任せてくれ」
ギルドの中に入ると、周囲の視線が集まるのが分かった。
そりゃあね、これだけ美人揃いなんだから目立つのは当たり前。
サマンサやロザリアも、黙ってれば美少女だし。
そして、一部の男性冒険者たちから俺に向けられる怨みがましい視線。
でしょうね!
「ねぇ君、ユウノはいるかい?」
「ギルドマスターですか?はい、おりますが…」
「フリントのマリーレインが来たと伝えてきてくれるかな?」
しばらくすると、バターン!とドアを開ける音が建物中に響いた。
そして…
「マリーレイン!来やがったな!」
「ユウノ、元気そうだね!」
2人が並ぶと、オーラが半端ない。
ギルドの職員さんたちも気になるらしく、チラチラと様子を伺ってる。
「この子、ロザリアの冒険者登録を頼むよ」
「ん?訳ありか?」
「まあね、あとパーティ登録もしたいんだけど…」
ん?何だかものすごい形相の男が駆け込んできたぞ?
「クラーケンだ!ポイズン・クラーケンが港に出たぞ!!」
「何だと?!」
確か、クラーケンってイカの化け物だったような…
サッちゃん、ポイズン・クラーケンって何?
(通称海の悪魔、大きい個体は全長10メートルを超える魔物です)
食える?
(ポイズン・クラーケンは、毒袋にさえ気をつければ大変美味だそうですよ)
大変美味…なるほど。
「マリーレイン、手を貸してくれ!」
「勿論だ!ヨシト、皆もいいね?」
おかしいな、俺はドラマチックな事とか望んでないんだけど?
平々凡々、のんびり過ごしたいだけなのに…
こうなったら、ポイズン・クラーケンを巨大イカ焼きにしてやる!
◇◇◇◇
でかい。まさに巨大イカ。
ただし、全身紫で毒々しい。
これ、本当に食える?
(…私をお疑いでしょうか?)
サッちゃんを疑うなんて、とんでもない!
「現状の報告!被害は!?」
「停泊してた船が3隻やられました!」
混乱する港で、場を仕切るのはギルドマスターであるユウノさんだ。
外洋から迷い込んだのか、港は完全にポイズン・クラーケンに占拠されていた。
その触腕の一部は陸に乗り上げ、餌である人間を捕らえようと蠢いている。
パニック・モンスター映画さながらだよな、これ。
サッちゃん、倒すのにオススメの魔法ある?
(ここは雷なんていかがでしょう?)
雷か、火魔法だと船の残骸に引火したら困るもんね。
ちなみに、雷は火・風・光・水の複合魔法。
う〜ん、あんまり目立ちたくないんだけど…
(マスターの力をある程度示しておく事で、けん制の意味もあります)
なるほど、一理ある。
それに、皆とパーティを組む以上、俺の力について完全に隠し通すのは無理だろう。
ここは腹を括りますか!
「ちくしょう、アタシの縄張りで好き勝手しやがって…!」
「まずはポイズン・クラーケンの動きを封じないと…ヨシト、何か…」
お話中失礼します。
ハク、お耳塞いでるんだぞ~
(うん!)
「ホーリー・プリズン」
ロザリアを閉じ込めた、光魔法の檻。
これでポイズン・クラーケンの動きを封じ込める。
後は、強さを調整して…
「サンダー・アロー」
ズドドドドォォォーーーーン!!!
ポイズン・クラーケンの脳天に、一撃。
即死するように、威力はちょっと強めにしといた。
「え…?」
「何だ、今の…」
マリーレインさん、口開いてますよ?
派手な水飛沫を上げながら、倒れる巨体。
プカプカと海に浮かぶポイズン・クラーケンの死体に、ホッとひと安心。
あ、そうだ。アイテムボックスに収納しとこう。
「フライ」
こうやって上空から見るとつくづく大きなイカだ。
イカ焼きにしたら、何千人分になるんだろう。
よいしょ、収納っと。
「終わりましたよ、浮かんでた積荷も拾えるものは拾っておきました」
「お、お、おう……お前、今…飛んでた、か?あの雷も…」
あ、そういえばフライって遺失魔法だとか言ってたな。
サッちゃん、遺失魔法って何?
(年月とともに使い手がいなくなり、この世界から失われてしまった魔法の事です)
……あ〜、まぁいいや。
所詮は風魔法の応用なんだし。
それよりこのポイズン・クラーケン、誰か捌いてくれないかな?
気持ち悪いから自分ではやりたくない。
読んでくださって、ありがとうございます。




