閑話:密かに動き出す人々
「サマンサ、逃げるわよ」
「はぁ…そうなると思ったのです」
ロザリアと帰国したのは、ほんの数日前。
お父様も大喜びで、家出についても不問にしてくれたわ。
めでたしめでたし…とはならなかったのよねぇ…
『縁談?!』
『うむ、近衛騎士団のグラントは知っておるな?』
知ってますとも。
頭空っぽの筋肉バカでしょ。
剣の腕は超一流、それ以外はポンコツって有名ですもの。
『剣の腕も一流、家柄も申し分ない。そなたの王配として迎えようと思う』
『い、嫌です!』
『強き男こそ時期王配に相応しい、これは決定事項だ!』
あんな筋肉バカと生涯を共に過ごすなんて絶対イヤ。
第一、強さで言えばヨシトの方が…
いや、別にヨシトと結婚したいとか言ってないから!
「サマンサ、急いで荷物をまとめて」
「了解なのです」
夜になったら、ロザリアとサマンサと3人で城を脱出よ!
ヨシトに追いつけるかしら?
ほ、ほら、ハク様に会いたいし…
サマンサだって、あの豪華なテントとベッドが恋しいでしょう?
そうと決まれば、急いで準備しないと!
◇◇◇◇
「やれやれ、これで片付いたかな」
空っぽになったギルドマスター部屋。
いや〜、我ながらよくもあんなに本ばかり集めてたものだ。
おかげで片付けが大変だったよ。
数冊だけ手元に残して、残りは売り払った。
これで、私も晴れて冒険者に逆戻りってわけだ。
こんな決断をしたのも、彼…ヨシトと出会ったから。
自分でも信じられないけど、本気で彼に興味が湧いたのさ。
「先輩〜、本当に辞めちゃうんですかぁ〜〜」
「後の事は頼んだよ、エレン」
新しいギルドマスターは、近日中に王都から派遣されてくるそうだ。
エレンがいればきっと大丈夫。
副ギルドマスターとして、私も支えてもらったしね。
本当にエレンには感謝してもしきれない。
「私も、もう一度冒険してみたくなったんだよ」
ヨシトと一緒にね。
どんな事が待ち受けてようと、楽しめそうじゃないか。
ベイラーシュのギルドマスターには、手紙で数日引き留めておいてくれるよう頼んである。
「…逃がさないよ?」
この『炎舞のマリーレイン』 の名にかけて。
読んでくださって、ありがとうございます。
次話から新章始まります。




