1C0 さらば甘くやさしき日々よ 7
「だったら……あたしも連れてけよ。いいだろう?」
祝子に支えられて上半身を起こした隼がおれに言う。何を言ってるんだお前は? そんな体で無理させられるわけがないだろう。それにこれからの戦いに隼がいなくてどうする? おれはいつでもお前を頼りにしてきただろう?
「そう言って置いてけぼりにすんなよ。もう、淋しいのは嫌なんだよ……」
乙女モードだな、急に泣くなよ。ほら、おれのこのシンナーのように澄んだ目を信じて待って「そんなの信じられっかよ!」「何でそこでボケるのよ!」……いや少し場を和ませようかと。
「ははっ……でもやっぱり零一を独りで行かせるなんてできないよ。だから……」
「それなら儂が着いてってやろう。それでどうじゃ?」
双十師匠? 何で来てるんですか! 偉いさんから「待て」がかかっていたはずでしょう? それを破ったらどうなるか……
「なぁに、今の儂は端っこに間借りしているだけの客分じゃ。錬金術師の破門など何の意味もありゃせんわい。それにこんなときに動けん師匠など、火事の野次馬にも更れ劣るというものよ」
今回の一件は偉いさんたちの「政治的判断」が働いて、最終的には「性急で過激な一派が起こした『B∴D∴N』の内輪もめ」というのが落としどころになる。それに伴って影響力の大きい名持ちクラスの錬金術師らには、静観して決して動かないようにとの厳命が出ていたのだ。おれとしては露骨に梯子を外され腐った気分になったが、まあその分好きにやらせて貰ったということもあるだろう。
「分かりました。でも本当に大丈夫ですよね? いえ、疑うわけじゃないんですけど……何だかもう会えなくなるみたいで……」
ソンナコトナイヨ~? ボクノコノ覚醒剤ノヨウナ純粋ナ心ガ「「「それはもういい!」」」
「ではそろそろ行くとするかのう。ちゃんと連れて帰ってくるわい。首に縄をくくりつけても、何に替えてものう」
お節介な爺さんだ。かえって年寄りの冷や水に「馬鹿者、ちゃんと聞こえとるぞ? (小声)ほれ、あともう少しじゃ。ここで倒れたら格好がつかんぞ」
……やっぱり師匠にはお見通しか。隼も気が付いていたみたいだがな。




