1BB さらば甘くやさしき日々よ 2
私の血が猿吠に吸い取られていく。そしてナノマシンも。私は無理にでも引き抜こうともがくが隼の腕が私の首に巻き付いてそれを阻む。
「くふふふ、やはり自分の手を汚してこそ得られる満足もあるというものだ。確かに今それを感じるよ」
余裕ぶった言い回しが癇に障る。ゼロワンの記憶が隼の中にいるのがギルバート=メイザースなのだと教えてくれる。薫子と瑠璃はフェイクで隼とギルバートが本物の【ライブラ】だったということか。今はその応用で入れ替わっているのだろう。
というか実際に手を汚しているのは隼だろう、クズ野郎が! 隼は無事なんだろうな? 今はオッサンの体だとしても。
「研究室で大事に預かっているよ。体もオリジナルは保管してあるから安心して死んでくれたまえ」
はいそうですかと死ねるかよ。だったらここにいるのは何だ? ゴーレムかあるいはホムンクルスか。
「【ライブラ】から進化した人造人間だよ。今はそこにコピーした魂だけ憑依している状態だ。【キャンサー】と呼んでいるんだがね? くふふふ、それにしても彼女は素晴らしい「花嫁」だ。【キャンサー】を産んでくれる貴重な母体として重宝しているよ」
おいおい花嫁って何だ? 白衣を着た教師が実験室で女子高生に結婚を迫る変態プレイがあんたの好みなのか? とんだマッドサイエンティストだな。
「それは君の嗜好だろう? 一緒にしないでくれたまえよ。花嫁はものの例えだよ。そもそも数を増やすのに非効率な方法に頼る必要はないだろう?
そして【キャンサー】の軍団が完成した暁こそ吾が覇道のはじまり。この世界を終わらせ今度こそ新たな楽園を作り上げるのだよ。くふふふふ」
世界からはじき出された男が今度は誇大妄想にとりつかれたのかよ。末期症状だな。




