1A4 おれたちの夏(たたかい)はこれからだ 5
ともあれ「算遊記」は手に入った。小鴎祝子のところで二八兵衛の日記を読んでいたのが役に立つな。
中を読んで見ると「算遊記」には最初に丁稚奉公の手習いのための算盤の九九や算盤の例題が載っている。遊歴算家は商家や寺子屋を回る「教師」でもあった。そして植木算や鶴亀算といった和算の定番。辻説法で路銀を稼ぎ算術の本を売って歩いたのだろう。
和算が橘高三十六の視点で解説されている。代数だけでなく絵を使って幾何の面から語っているのが当時としては新しい。ちなみに言うとxyを求めるのに連立方程式を解くのが代数、グラフを描いて交点を求めるのが幾何だ。
そして最後に少しひねった応用問題の「遺題」がある。橘高三十六からの挑戦状というわけだ。
問、豆腐を八等分するのに四回包丁を入れるのは縁起が悪いという。どう切れば数が少なくて済むか。
問、酒樽から五合の升と三合の升で四合の酒を量り取るには最小で何手必要か。ただし酒樽に戻す回数は数えない。
当然これに答えは載っていない。隼は答えの中の「数」だけ知らされているという。面白い。やってやろうじゃねぇか!
遅い昼飯が終わるころ、私が導き出した解答を隼に言う。
「さすがだね! バッチリ正解だよ」
そう言って隼は封筒に入れた別の「挑戦状」を取り出して渡してきた。
「じゃーん! こっちが本物でしたー。解けたら渡してくれって言われて、て……怒ってる? で、でもあたしも特等席で真剣な顔見れてうれしかったし……本当にごめん!」
はっはっは、そんなことで隼に怒るわけないじゃないか。ああ、それでずっと見てたのかよ? まあ安いご褒美だが満足してくれれば何よりだ。
だがこれで『E∴D∴N』を出し抜けるはずだ。なんとか先に手に入れて、二人を救い出す時間稼ぎをしたい。
ん? どうせならこれを夏休みのイベントにしてしまうか? 賞品を出せば肝試しなんかより盛り上がるんじゃないか? それに大っぴらにやれば『E∴D∴N』も暗躍しづらいだろうしな。




