1A2 おれたちの夏(たたかい)はこれからだ 3
そしていま隼の手に「算遊記」がある。望みは薄いと思っていたがよく手に入ったな。
「ああ、向こうからあたしに会いに来てくれたんだ」
会いに来た? 一体誰が?
「30代くらいの女の人で寒月水那由多と名乗ったよ。たしか橘高三十六の旅に一緒だった人もそんな名前だったよね?」
寒月水那由多は二八兵衛の日記にもその名前が出てくる女武芸者だ。名を継いだ一門の跡取りか? いやまさか本人だとでも?
「たぶん本人じゃないかな。そうでなくても寒月水さんはあたしと同類……断片だったっけ? うん、最初からそんな気がしてた。火龍馬と初めて会った時のような……」
なるほどな。それは私も予想外だったが、それなら隼が「そうなった」のも合点がいく。
「ああ、これのこと? うん、あたしが一晩寒月水さんのホテルに世話になってそこで……まあ……そういうこと。い、言わせんなよ、あたしも恥ずかしいんだから!」
寒月水那由多は朝日奈隼と同衾することで知識や能力をコピーしたのだろう。【享受】とでも呼ぼうか。そして隼の中にも彼女の一部が残ったということか。
「今なら零一のことも少し分かる気がするよ。独り言が多かったり、虚空にツッコんだりしてるのもさ。ああ、今は時彦クン(笑)だっけ?」
まあそれはどっちでもいい。晴子たちとこうしている時点で有名無実だしな。まったく何のための潜入だか……。
しかし今もっと気になることを言われたぞ? 一人ノリツッコミ? 端で見ると私はそんなふうに見えてるのか? メチャクチャ恥ずかしいんだけど!
「そんなの個性でしょう? ああ、ジェラート全種類と上海焼きそば大盛り4つね」
そんな個性は要らねーんだよォォ! いやそれは鍾子もそうだってことだよな? っていうか4つ? 2つで十分ですよ!




