195 Fight Day and Fright Night 15
まだ自分の投球に自信が無かった頃、柳田武見は相手を威嚇して萎縮させ有利な展開に持ち込もうとするのが常だった。その分打たれたときに崩れるのも早かったようだが。
それをここまでに育てたのも近藤さんなのだが、自信がつくのと同時に今度は天狗になってしまったようだ。感情のコントロールにはまだ課題が残っているということか。
ならばそこに付け入らせてもらおう。私は挑発するように体を低くして顔を突き出す。
三球目。柳田は真っ向勝負でクロスファイヤーを私の顔に向かって投げ込んできた。それに思わず新倉も腰を浮かす。いいんだよ、私の注文どおりだ。その危険球を私は木刀を逆袈裟に抜き打って外野に運んだ。「まじかよ……」という呟きが新倉の口から漏れる。
どこに来るかが分かるならあとは簡単だ。ただし角度のついた球には一工夫必要だ。そこで私は点で打ち返すのではなく、木刀という軌条を使って線で捕え、回転を加速させて撃ち出した。バットを木刀に持ち替えたのは軌条の役割と同時に斬撃のスピードが欲しかったからだ。
「ふざけんな! こんなのおかしいだろ。俺の……これまでの努力は……くそっ!」
柳田がマウンドで膝をついて土を握りしめる。
まあ私は別枠扱いだから気にするな。プライドは折っても命までは取らないから安心して泣け。……さて、あと一勝か。




