第6話 余話の2 ミーシャの独白
あけましておめでとうございます。お読みいただいている皆様、ありがとうございます。昨日投稿する予定だったのですが、いろいろ忙しく気が付いたらかなり遅い時間になっていたので、本日投稿にいたしました。
今年一年良い年であることをお祈りいたします。
私は絶望していた。私はこの国の王家の長女だった。男の子がいないので、このまま男の子が生まれなければ私がこの国の王となると言われた。
最初は特に感慨は浮かばなかった。私にとって王は単なる人生の選択肢の一つに過ぎないと思っていたからだ。
ところが男の子が生まれず、後継ぎとなることがはっきりとしてきて、さらにこの国の現状を知っていくにつれ、絶望した。立憲君主制の王様なんて単なる飾りに過ぎない。私は権限も持たず、ただ象徴として席に座っているだけの人形だった。100歩譲っても外国で媚びを振りまいて金をもらう道化のような存在だと思った。
これが、ある程度の大国なら話は少し変わってきただろう。でもシャオイエは国名すら知られていないような小国だ。何の力もない、単なる道化として一生を終えなくてはならない。
これで私が馬鹿だったらまだいい。しかし、私は優秀だった。かなりのことが分かってしまう。だから、もう、私の人生はすでに終わってしまった、と考えていた。
暇つぶしに情報網を構築してみた。商人などの民間人が持つネットワークを利用し、この国に多数いて各分野でかなりの力を持つ残留日本兵の子孫たちとも交流を持ちながら情報を集めるシステムを作っていった。まあ、私の頭脳を使えばそんな大変なことじゃなかった。
特に理由はなかった。情報は私の絶望を慰める道具の一つだった。
ある時、隣国のターイエでクーデターが起きた。ターイエはもともとシャオイエと一つの国だった歴史があり、100年前に王位継承問題の関係で分裂した。
まあ、今のターイエは部族国家で、軍のみならずすべての近代化が遅れており、ティガル将軍がターイエの将来に危機感を持ってクーデターを起こしたのも理解できた。いささか不安なのは彼の背後にC国が付いていることだ。この地域の政治状況はとても繊細だ。
ロシアはこの地域での指導権を持っていると思っている。
C国はこの地域での指導権はもともと我々にあったと思っている。
アメリカはアフガニスタン撤退により、この地域での影響力を落としており、挽回を考えている。
ティガル将軍のクーデターが成功したらC国の影響力が拡大する。するとロシアはどう出るか。私はかなり興味を持って事態を観察した。
すると、まったく予想しないことが発生した。日本軍の残党が動き出し、王女を助け、ヘイス族を動かし、国王一家を救い出し、反クーデターを引き起こした。
そして国政は元の王家に戻った。ただ、その実権はヘイス族とそれを操る日本軍の残党に牛耳られることとなった。
とても面白かった。いい劇だった、と言っていられたのもこの間までだった。
妹のミーシャが何者かに襲われ、それを助けたのがターイエで活躍した日本軍の残党の一員だった。何のためこの国にあらわれ、何の目的でミーシャに接近したのか。私は彼を詰問した。
そして彼は言った。「この国ってもともとターイエと一つの国だったのですよね」
二つの国が分かれて100年、すでに政治体制も経済レベルも全く違う、二つに分かれた王家を取り巻く状況も異なる、そして両者が和解する可能性がまったくない、この二つの国を統一するつもりなのか。
そうか、今の王家を廃して、新しい統一王家をつくればいい。そしてその王家はもとの王家の血を引き、かつ中立的な存在でなくてはならない。さらに国民を納得させられるカリスマも必要だ。
それが目の前にいた。ターイエの第一王女を妻にし、シャオイエの第二王女を手に入れ、有力な部族を影響下に入れ、英雄としての名声が高い。
古代に存在したユエ帝国を再建し、そして日本軍の協力の下、中央アジアの主導権を手に入れることを夢見ているのではないか。
そして彼は匂わしている。「お前はどうするか?」と。
この構想が実現すれば、私は自由だ。いや、彼のことだ、私の能力を理解して、この国のために働くことを願っている。
帝国初の女性宰相、うふふ、悪くないかも。実権をふるい、統一された国家を指導する立場、私の能力をフルに活用できる最高の立場だ。
日本人に王家を渡すことについて抵抗感はなかった。だって、日本はこの地で別れて東に向かった同族が作った国だ。
王家に伝わる伝承ではそうなっている。
いま、2千7百年の時を超えて、我らはまじりあい、再び一つとなる。
私は笑った。こんなに笑ったのは生れてはじめてだろう。そして生れてはじめて、人生に希望が生まれた。
あと、雑談一話で終わりになります。次の話は書き始めているのですが、1月から3月までは大変忙しい時期でして、1か月以上空く可能性があります。
必ず投稿しますので、読んでいる皆様、見捨てずにいてくださると嬉しいです。




