第7話 雑談
襲撃事件の犯人視点です。結構うつな話なので、嫌いな方は避けてください。また、本編には直接関係ありません。
襲撃犯たちの独白及び陰謀者たち
俺たち3人は町のごろつきだった。働きもせず、適当に街を流しながら、日々をだらだら過ごしていた。
この国は本当に何もない。遊ぶ場所もない。仕事も畑を耕すか、スークで商売するかだ。
俺たちはそんな現実に嫌気がさし、いつかは外国に行き一旗揚げてやると思いつつ、無駄に日々を過ごしていた。
ある時、一人のおっさんから声をかけられた。酒をおごってくれるというので、付いて行った。
そのおっさんはシャオイエ解放戦線草原の狼派のオルグと名乗った。
そのおっさんが言うには、「この国はソ連から独立したものの、反動分子の策略で王家が国を乗っ取った。これを断固として取り戻さなくてはならない。そのためにも王家に対するテロをもって大衆に訴えかけ、大衆を覚醒させることでその協力のもと、我々が主導して革命を起こし、ここを人民の国に生まれ変わらせなくてはならない」とのこと。
よく意味が解らないが、おっさん曰く、俺たちがその先兵として働いてほしいとのことだ。
働いてくれたら、報奨金として一人当たり100万米ドルと外国への逃亡に必要な書類やチケット、外国での潜伏先などすべてを用意するとのことだった。
すごい好条件にびっくりした。何をやらされるのか聞いたところ、暗殺だそうだ。
誰を暗殺するのか聞いたが、具体的なことはこの依頼を受けなくては教えられないと言われた。
俺たち3人は迷った。1日考えていいかどうかおっさんに聞いた。おっさんは了承したが、この件をもし警察に報告したらお前たち3人が暗殺の標的になるぞと脅された。
俺たちは話し合った。人殺しはしたくないが、おっさんの話だと正義はこっちにあるようだし、莫大な報奨金と海外に行けるという言葉にひかれ受けることにした。
翌日、働くことを了承すると俺たちは車に乗せられ、秘密の場所に連れていかれた。
そこで、軍服のようなものを支給され、銃の撃ち方の訓練を始めた。
初めての銃は、かなり重く、撃ったら反動でひっくり返ってしまった。
そんなわけで最初はへっぴり腰で銃を撃っていたが、何日か訓練を重ねていくうちに何とか普通に撃てるようになった。
訓練は何日も続けられた。続けられたといっても、5日に1日はお休みで、外には出れなかったが、うまい飯と酒があり、娯楽もいろいろ取り揃えてあったので、不満はなかった。
1か月ぐらいが経ったころ、任務が下された。任務の内容は第2王女の暗殺だ。
いよいよ暗殺かと思うと、気がめいった。一瞬このまま逃げようかという気持ちが浮かんだ。
その夜、壮行会が開かれた。一人につき1人の女の子が付いた。俺についたのはロシア人らしい、スタイルのいい、かなりの美女だった。
その夜、その子と深い関係になった。その子は言った。あなたが気に入った、任務成功したら外国で一緒に暮らしましょう。
俺は舞い上がった。多額の報酬、外国での美女との生活、男としてこんなチャンス一生ない。俺はやる気に満ち溢れていた。他の2人も同様にやる気に満ちていた。3人とも女の子に同じようなことを言われたらしい。俺たちみんな急にモテ始めたな、と笑いあった。
俺たちは指令を受け、郊外にある古城に向かった。足が付きにくいようバイクを借りていくことになったのだが、仲間の一人が「おれバイクほとんど乗ったことない」と言い出した。
俺はそいつに後からでいいからゆっくりこいと言って、俺ともう一人で先に行った。
古城の中は迷路のようになっていた。俺たちは迷いながら王女を探した。
女の声がしたので、その方向へ行ってみると、男女が何か話している。渡された写真で確認すると、女の方は王女で間違いなかった。
俺たちは王女を狙って、渡されていたライフル銃を撃とうとした。ところが、いきなり銃声がした。後から来たのが、慌てて撃ったのだろう。当たったかと思ったのだが、ちょうどその時二人がもつれて倒れこみ、外れてしまった。
俺たちは慌てて何発か打ち込んだが、王女たちは物陰に隠れてしまった。
俺たち3人は焦って王女を探したが、城が迷路のようになっていることもあり、見つけることができなかった。
どうしようと考えていると、バイクの発進音が聞こえた。やばいと思い、バイクのところに戻ると、俺のバイクは盗まれ、一緒に来た仲間のバイクはタイヤに穴があけられていた。
逃げられた、悔しい、そうだ王女たちが乗ってきたバイクがある。それに後から来た仲間のバイクもある。それで追いかけようと思いつき、急いで王女たちのバイクを探した。
ところが王女たちのバイクは鍵が抜かれており、動かすことができなかった。
非常識な奴らだ。なんで鍵を抜くんだよ。動かせないだろ、と俺は頭にきた。
やむなく、最後の一人が乗ってきたバイクに俺ともう一人が乗り、追いかけることにした。
俺は頭のいいことを思いついた。3丁の銃を次々と打つことで、弾を込める時間を節約することだ。それで3人のライフル銃は俺が回収し、後部座席に乗った。
俺たちは後を追いかけた。しばらく走ったら何とか後ろ姿をとらえることができた。
でもあたり一面ライ麦畑だ。王女たちのバイクはライ麦に隠れてしまい、狙いが定まらない。ダメもとで撃ってみたが、全然当たらない。ほんと踏んだり蹴ったりだ。
ライフル銃に弾を込めようとしたが、なかなかうまくいかない。1丁は落としてしまった。
それでもなんとか2丁に弾を込めた。
そんなことをしていると草原に出た。やった、これで狙える。
王女たちのバイクはちょうどそこを走っていた列車に飛び移ろうとしていた。俺はライフル銃を撃った。バイクの上から撃つのは難しい。弾は外れてしまった。
銃を変えて、もう一度撃った。ちょうどその時、王女たちは列車に飛び移っていた。俺の弾はバイクにうまく命中した。くそ、もう少しだったのに。
そうしたらそのバイクは回転しながらこっちに向かってきた。危ないと運転していた仲間がよけようとしたが、よけきれず吹っ飛ばされてしまった。俺は気絶した。
気が付くと、俺たちは車に乗せられていた。運転しているのはオルグのおっちゃんだった。
おっちゃんは無表情で言った。「お前たちに最後のチャンスをやる。王女たちはルーシャンの町に向かっている。そこまで送って行ってやるから、そこで仕留めるのだ」そう言って黙った。
俺の体はあちこち擦り傷だらけで、右手の人差し指と中指には包帯がまかれ曲げると激痛が走った。運転していたもう一人も指を何本か折ったようだ。
「指を痛めて銃が打てない」そう俺は泣き言を言った。おっちゃんは顎をしゃくって箱を示し、「そこにナイフを3本用意してある。あと、拳銃を1丁貸してやる」と言った。
中には軍用のでかいナイフが3本、拳銃が1丁入っていた。
拳銃はけがのない仲間に渡し、ナイフは3人で分けた。
俺たちはほとんどやる気を失っていた。このまま帰りたいと思った。
でもそんな気持ちを察したのかおっちゃんは言った。
「もう、お前たちは暗殺未遂犯なんだ。お前らが生き残るには、任務を達成し、海外に逃げることだ。さもなければ、王家に対する反逆罪で良くて一生監獄、まあ普通なら死刑だ」
そしておっちゃんは続けた。「それにお前たち任務失敗で組織からも狙われるぞ。まあ、任務に成功したら、今回のけがの分を報奨金に上乗せするよう、幹部に進言してやるよ。それにシャオイエ解放のあかつきには、お前たちを解放の英雄として幹部に取り立ててやる。どうだ」
しぶしぶ俺たちはうなずいた。どうしてもやるしかないようだ。よし、何としても成功させて、明るい未来をつかまなくては、と俺たちは思った。
ルーシャンについたときには、すでに夜になっていた。俺たちは王女の行方を捜した。
どうも丘の上にケーブルカーで上ったらしい。そこで俺たちは作戦を立てた。
さっきは行き当たりばったりだったから失敗したのだ、今回は俺が丘に上がり王女を狙う。うまく仕留められればよし、ダメならケーブルカーの方へ追いやる。すると奴らはケーブルカーに乗って逃げようとするだろう。俺も必死で追いかければ、その手を使う可能性が高くなるはずだ。下に降りたところで、待ち伏せしている二人が攻撃する。とりあえず俺もすぐにケーブルカーでおりて、二人が仕留めそこなっていたら、三人で囲んでやっつけよう。
我ながらすごい作戦を立てたと自画自賛した。
計画はほぼ成功した。王女と一緒にいた男には重傷を負わせ、王女と一緒に三人で取り囲んでいた。
そのとき、男は何かを王女に言ったと思うとナイフを取り出し、にやりと笑うと何かを叫んで突っ込んできた。その様子は狂気にかられたけだもののようで、俺たちは恐怖で思わず逃げ出しそうになった。
そのとき、俺の体に焼けた鉄の棒のようなものが差し込まれる感じがした。
気が付くと仲間二人も倒れていて、兵士に取り囲まれていた。
俺たちは連行され、簡単な治療を受けると厳しい尋問を受けた。俺たちはすべてしゃべった。そのあと、皆バラバラに収監され、さらに厳しい尋問を受けた。
そこでは、いろいろな証言を取られた。尋問官の言うままに、何でもかんでも認めた。
「俺はどうなるのでしょうか」と尋問官に聞いた。「本来ならすぐに死刑だが、よくしゃべってくれたからな。しばらくは生きられるように取り図ろう」と言われた。
つまり死刑は確定なわけだ。俺は泣き叫んだ。助けてくれ、お願いだ、助けてくれたら何でもする、死にたくない、そう言って、尋問官に取りすがった。
俺はすぐに警備官に取り押さえられ、懲罰房行となった。
なんでこんなことになってしまっんだ、俺は後悔でいっぱいになっていた。
薄暗い照明の中、何人かの男たちが円形の机を取り囲むように座っていた。
おもむろに一人が口を開いた。「計画は成功したか」
別の一人が口を開いた。「成功した。町のチンピラを使って、九頭英雄とマーシャ姫を結びつけることができた」
更に別の一人が口を開いた。「我々の情報は漏れていないか」
先に答えた男がそれに答えた。「組織の中でも忠誠心の高いものを使っている。臨時に雇った売春婦などはすべて始末した。さらに政府内部の協力者にも働きかけ、わずかでも証拠が出てくれば、もみ消しに動くよう手配している」
一番上座の男が言った。「宜しい。すべて手はず通りだ。鈴木少尉も喜ぶだろう」
先ほどから質問に答えている男が言った。「しかし、大変だった。九頭英雄とマーシャ姫とを偶然を装って出合わせるのは。いくらお忍びの常習犯だからといって、九頭英雄が到着する日にお忍びの日をうまく誘導し、2人の行先を監視し、外れれば誘導する手配をして、うまく会わせたがかなり不確定要素が強かった」
別の一人が口を開いた。「かなりの費用をかけて、王女様を危険にさらし、この計画はいったい何の目的で実施されたのだ?」
「鈴木少尉からの指示に基づいた計画だ。詳細は知らない。ただ、この計画がうまくいけば、過去にあったイエ帝国の再建し、日本兵を父祖に持つ我々がこの国を牛耳ることができるようになるのだ」一番上座の男が答えた。
「日本兵だった父祖がこの地に抑留され、そして故郷日本に帰らずこの地に残留して、この国に多大なる貢献をした。しかし、ソ連のくびきから解放後、この地ではユエ民族中心主義な政治がなされるようになり、我々の権利が脅かされるようになった。我々の権利を守り、さらに確固たるものにするために鈴木少尉の指導下のもと、我々は活動している。おそらく九頭英雄という日本人がキーパーソンになっていると思われる」と言って言葉を切った。
「とりあえず、鈴木少尉の計画を信じて動いてみよう。今のところそれが最善のようだ」
「そうだ」「そうだな」と男たちは口々に言いあった。
陰謀は踊る。踊らされていることを知らずに踊るもの、踊らせているつもりで踊っているもの、踊っていることすら気づかぬもの、さて、この陰謀の振付師は何をめざしているのだろうか。
前作より読んでいただいている方が増えてとてもありがたいです。これからもよろしくお願いいたします。




